らくらくISO9001講座


”お荷物”IS0を押し付けられないために
コンサルタントの裏事情

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 中小企業にとっては、社内改革の切り札となり、大きなメリットをもたらすISOですが、
うまく行く会社は一部です。特に、近年レベルの低下が著しいように思えます。
 企業がISO導入に失敗する(認証は取れるが負担ばかりで役に立たない)原因の、かなり
の部分が、ミスリードするコンサルタントにあります。企業の問題点の改善には手を着け
ず、ただ証書を取らせるだけのコンサルタントや、それに迎合する審査機関がまかり通っ
ています。
 企業の立場から言えば、よほど慎重にコンサルタントを選ばない限り、ただ文書を作る
だけの、お荷物ISOを押し付けられてしまいます。決して「コンサルタントはどれも専門家
なんだから、誰に頼んでも中身は一緒だろう」などと考えてはいけません(ISOのコンサル
など、誰でも名乗れる職業です)。


 
 1.コンサルタントを使ったほうが良いか?

 結論から言えば、どちらかといえば、(それでも)コンサルタントを使った方が良
いでしょう。
 自力で、ISOの内容を正しく理解し、導入の効果を上げるのは、かなり難しいです。
なにしろ、参考書は実態に合わないし、他社のシステムを丸写ししても失敗する(役
に立たない)から、自社独自のシステムを作り上げなくてはいけません。
 一方、ISOの導入がうまく行けば、そのことで得られるメリットは大きいので、コン
サルタントに費用を出しても、十分に見合います。
 ただ問題なのは、良いコンサルタントが少ないことです(5人に1人ぐらいか)。
ISOを取らせるだけのコンサルタントはたくさんいるのですが、ISOを利用した業務改
善を指導するコンサルタントは限られます。誤ったコンサルティングを受けると、改
善は進まず、逆にムダな仕事ばかり増えて、経営の足を引っ張ることになります。
 したがって、コンサルタント選びは、慎重に進める必要があります。


 2.コンサルタントの選択で80%が決まる

 ISOの導入が成功するかどうかの80%ぐらいは、コンサルタント選定の段階で決まり
ます。しかし、業務改善を指導するコンサルタントは5人に1人ぐらいですから、よ
ほど企業が腰を据えて探さない限り、良いコンサルタントには出会えません。
 実態は、これからISOを勉強しようという企業にとって、コンサルタントの良し悪し
を判断するのは難しいことです。多くの企業が、十分な審議もせずに、あるいは的外
れな点にこだわって、安易にコンサルタントを決めて失敗しています。


 3.審査の話ばかりするコンサルタントは論外

 「速く取れる」「楽に取れる」「安く取れる」「確実に取れる」といった話しかし
ないコンサルタントは避けましょう。ISO認証を取るだけなら、それなりに簡単な方法
があり、取れて当たり前です。しかし、安易に取ったISOは、取ってからの維持がたい
へんで、しかも何の改善にもなりません。そんなものを売りにするよなコンサルタン
トは、要するに、経営や改善について語る自信がないのです。
 「必ず取れると保証してほしい」なんて言ったら、もうコンサル会社の思うツボ。
業務改善はたいへんだけれども、ISOを取らせるだけなら簡単です。コンサル会社は、
改善の指導などしなくても(できなくても)、後から「御社が必ず取らせて欲しいと
いうから、一番確実に取れる方法を教えたんです。今さら、業務効率が落ちたなんて
いわれても知りません」と居直ることができます。


 4.実績を強調するコンサルタントのワナ

 コンサルタントから「何100社もの指導実績がある」と聞くと、何か頼れる気がしま
す。しかし、待ってください。
 企業の問題点に取り組むコンサルは、一度にたくさんはできません。どうやって、
そんなにたくさんコンサルをしたのでしょうか(多くのコンサルタントが、時間をか
けてやったのならば、良いのですが)。
 そのような会社の中には、ISO取得キットの販売をしている会社があるので、注意を
要します。個別の企業の社内問題になど関わらずに、コンサル会社が用意した出来合
いの文書集をあてがうのです。これなら、新米コンサルでも務まり、顧客数を増やせ
ます。やっているのは、企業の問題点には一切手をつけず、ただ看板を取らせるだけ
ISOです。


 5.同じ業種の経験にこだわると失敗する

 コンサルタント選定の時に、気になるのが自社と同じ業種のシステム構築の経験が
あるかどうかです。確かにその業界に通じていると、会社の事情をより深く理解して
もらえ有効なのですが、これにこだわることは危険です。
 力のあるコンサルタントは、応用力があって、どのような業界に行っても、その会
社に合った仕組みを作ることができます。これに対し、下手なコンサルタントは、良
く知っている業界でも、その会社に合った仕組みが作れません。そこで、他社の仕組
みをそのまま当てはめます。業種が一致することよりも、応用力があるコンサルタン
トを選ぶことの方が重要です。
 特に、特定の業種の実績を強調したり、特定業種に特化して営業するコンサルタン
トは要注意です。特定業種向けのISO取得キットを持っているとだけ、という可能性が
高いからです。


 6.たくさん見積もりを取る会社は失敗する

 たくさんのコンサルタント会社から見積りを取るのは、一見慎重そうですが、多く
の場合は失敗します。たたでさえ難しいコンサル選びに、価格という分かり安い物差
しがあると、それに頼ってしまうからです。特に、たくさんの見積りを取らせる経営
者は、価格に厳しいですから、選定に当たる従業員も、コンサル内容の良さを説明す
るよりも、価格で説明する方が楽だと考えます(そもそも、従業員にコンサルを選ば
せてはいけない)。
 しかし、良いコンサルタントは、もともと少ないのですから、価格で選んだコンサ
ルタントが良いコンサルタントである可能性は、非常に低いのです。ただし、高けれ
ば良いとは限らないし、良いコンサルタントが、安くでやってくれることもあります
から、よく見極めなければいけません。


 7.コンサルタント会社の内情

 良いコンサルタントが少ない(5人に1人)という話をしていますが、それはコン
サルタント会社の所属コンサルタントについても同じです。やはり、良い人は5人に
1人ぐらいしかいません。大手に頼んだから安心というよりも、担当コンサルタント
の選定を向こうに任せることになりますから、その点で危険度が高いといえます。コ
ンサル会社としては、できない4人にも仕事をさせなければならず、良い人だけとい
うわけにはゆきません。これをフォローするために、キット販売や、モデルの押し付
けを行うところもありますから、注意を要します。
 一方で、コンサルタント会社の中には、優れたコンサルタントでネットワークを作
っていて、その中からコンサルタントを選ぶ会社もあります。このような会社のコン
サルタントは、正社員でなく案件ごとの契約(要するに下請け)ですが、心配ありま
せん。むしろ、個別契約の方が、良い人だけを選べるからです。このようなコンサル
タント会社は、レベルの高いコンサルタントが集まっており、良い仕事をします。
 このように、コンサルタント会社を使うのであれば、話しをよく聞いて、その性格
を見極める必要があります。


 8.個人でやっているコンサルタント

 コンサルタント個人(個人事務所)に直接依頼するケースでは、コンサルタント本
人に会って考え方を聞き、人柄を見て選べる点でメリットがあります。価格もコンサ
ル会社を通すよりも安くなります。したがって、良いコンサルタントに出会えれば、
メリットは大きいでしょう。コンサルタント会社に頼んでも、多くの場合は契約をし
ている個人コンサルタントが担当することになりますから、個人でも会社でも、コン
サルタントがやることには違いはありません。
 ただし、コンサルタントは玉石混交ですから、選ぶのは自分の責任です。また、個
人のコンサルタントは、やってみて相性が合わなかった時や、コンサルタントが健康
を壊した時など、トラブルのフォローには弱点があります。


 9.コンサルタントを選ぶ際に心がけること

 1.ISO導入の目的をはっきりする
 自社がISO導入によって何をやりたいのか、どのような改革をしたいのかを明らかに
して下さい。その上でコンサルタントの話を聞き、目的に合った指導をしてくれる人
を選んで下さい。ISOは申請手続きではなく、経営手段であることを忘れないようにし
ましょう。

 2.コンサルタントの決定は経営層が行う
 コンサルタントの選定は経営層が行ってください。ISOは経営者の想いを実現する道
具ですので、コンサルタントの方針が会社の目的と合っているかはどうかは、担当者
では判断できません。経営層がじっくり話を聞いて、経営戦略としてふさわしいかど
うかを確かめて下さい。

 3.業務改善について具体的な考え方を聞く
 どのような考え方で業務改善を進めるかについて、明確に話ができるコンサルタン
トに頼んで下さい。さらに、会社をどのように変えてゆくか、会社の問題点にどのよ
うに取り組んでゆくかについて、具体的で、納得のゆく方法を提示できるかどうかを
確かめて下さい。
 現場の業務改革は地道な作業です。格好の良い言葉だけだけでは役に立ちません。

 4.複数のコンサルタントの話を聞く
 ほとんど全てのコンサルタントが、「会社にあったスリムなシステムを構築しま
す」「仕事が整理でき、会社が良くなります」と言います。しかし、現実にはそうな
っていない会社も多いようです。
 口先だけで言っているのか、本当にその方法を知っているかについて、1人のコン
サルタントの話だけを聞いて判断するのは難しいことです。何人かに話を聞き、その
中身をよく比較してください。

  5.コンサルタント費用よりもトータルコストを考える
 コンサルタント費用はかなり高額で、形のない物にお金を払うわけですから、少し
でも安く上げたいと思うのは、止む得ないかもしれません。しかし、目先のコンサル
タント費用にこだわると、方向を誤ることになります。
 ISOは良い指導を受ければ、通常業務の中で実施でき、業務改善により大きなメリッ
トがあります。一方、負担の大きいシステムを作ると、高額な年間維持費がかかり
(専任者の人件費、追加コンサルタント費用など)、しかもメリットもなく、ただた
だ仕事の効率を落とすことになります。
 少しの費用を惜しんで、大きな損をすることがないよう、目先の金額よりも、コン
サルティングの内容で選びましょう 


 ISOをうまく導入できれば業務改革で会社が伸びます。失敗すれば無駄な仕事と維持費用
が経営を圧迫します。残念なことですが、紹介したように、ISOの周囲にはワナがいっぱ
い。少しの勘違いが、会社の運命を狂わせます。偏った情報に踊らされることなく、本来
の目的を見失わないように、正しい判断をして下さい。


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