らくらくISO9001講座



ISO成功のための10の視点(1)

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  1.目的は会社の事業の発展だ


◆何のためにISOを導入するのか
◆「ISO=正しいこと」とは限らない
◆例え審査員が推奨した方法であっても、業務を妨げるやり方は「悪いこと」だ



 ISOで管理を強化することは良いことですか? そんなことは、一律には言えませんよね。
それでメリットがあれば良い事だし、メリットがなければやらない方がいいし。
 ところが、多くの会社が、ISOのためと称してメリットのないことをやっています。管理責任者
やISO事務局になると、「ISO=正しいこと」という意識から抜け出せなくなるのです。「本来
良いことをしているのだから、多少の手間は増えても仕方ない」と考えるようになります。
これは、経営的な判断とは対極にある考え方です。ISO推進者が、この発想を止めない
限り、ISOは真の経営手法にはなりません。
 システム作りの目的は、あくまで事業の発展です。利益の向上や、コストダウンや、
モチベーションのアップや、リスクの低下など、事業上のプラスに繋がるように管理方法を
決めましょう。業務を停滞させ、余分なコストがかかる方法は、例えそれがISOの標準的
な方法であっても、あるいは審査員が推奨した方法であっても、それは会社に取って
「悪いこと」です。
 当たり前ですよね。でも、この当たり前がどっかに行ってしまった会社が多いのです。
当たり前を強く認識することが、ISOを経営に役立てるための第一歩です






  2.「経営の方向付け」と「実務上の効果」で判断する


◆会社にとっての損得で考えれば良い
◆事業上のメリットと、それに掛ける手間が見合うかどうかで判断する
◆審査に安全に通ることが目的ではない



 マネジメントシステムを整備してゆく際には、一つ一つの管理項目について、どのレベルで
管理するかを決めます。ISO規格という枠組みがありますから、最低限は規格に合わせま
すが、けっして「審査にいかに安全に通るか」を優先してはいけません。

 判断基準は、事業上のメリットと、それに掛けるコスト(時間)が見合うかで決めます。まず
は「実務上の効果」があるかです。
  @ 不良の防止、生産性の向上、業務の効率化、リスク回避などの直接の利益がある
    か。
  A 再発防止、人材育成、技術の蓄積 など将来の利益に繋がるか。
  B 顧客に対して、当社が信頼できることをアピールすることになるか。
  C 不良の原因調査、自社の正当性の証拠、緊急事態への対応など、トラブルに対す
    る備えになるか。

 加えて、「経営の方向づけ」が重要です。
  @ 経営者の考え方や会社の方針目標を実現するために、効果的なやり方か。
  A 正しい経営判断のための情報を、経営層に上げるために必要な管理か。

 こういうことを、しっかり意識した上で、何をどこまでやるかを決めて下さい。ISOはこれら
を実施するためのキッカケであり、審査はこれを確実に行うための外圧に過ぎません。






  3.ISOは経営者が会社を管理するための仕組みだ


◆ISOよりも社長の意向が優先する
◆事務局は、社長の考えを実現するためのスタッフだ
◆社長の考えを審査員に認めさせろ



 社長や部長から、「そんな記録に時間を掛けるのはおかしい」と指摘され、「それでは審査
に通りません」と頑張ったことはありませんか?こういう場合は、だいたい8割ぐらいは、
経営層のバランス感覚の方が正しいです。

 管理責任者やISO事務局は、経営者や会社の考え方を、審査機関に認めさせるのが仕事
です。審査員の代弁者のような気になって、会社が納得できない仕組みを押し付けるの
では本末転倒です。しかも、それは思い込みであって、審査員も、会社に合わない仕組み
など求めません。

 管理責任者やISO事務局の皆さんは、何かの判断をする時に、「うちの社長だったらどう
言うだろう」って考えているでしょうか。常に、「会社が何を実現しようとしているか」を意識
して、システム作りをしているでしょうか。
 ISOは経営者の想いを実現する仕組みであり、管理責任者や事務局はそれを実行する
ためのスタッフです(ただのISO係じゃありません)。時には、社長が無理なことを言うかも
しれませんが、原則はISOより社長の判断が優先です。審査を受けるために、どうしても
都合の悪い時は、経営者の意図を生かす形で、落としどころを工夫してください。社長を
説得して、ISOに従ってもらうんじゃありませんよ。




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