らくらくISO9001講座

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なぜISOがうまく行かなかったのか

 ISO9001の認証を取ったのだけど、書類が増えただけで、仕事は良くならないという会社がたくさんあ
ります。ISOの導入がうまくゆかないのには理由があります。成功するパターンは組織ごとに違います
が、失敗の理由はどの組織でも、だいたい一緒です。


 1 ISO9001に書いてあることだけやっても動かない
 ISO9001に書いてあることを全部やっているのに、ちっとも良くならない。そりゃそうです。ISO9001は、
会社に必要なこと全部が書いてあるわけじゃないんです。たとえば、営業の管理とか、生産計画とか、
苦情の管理なんかは出てきません。ISO9001の項目以外に、自社として必要なことを乗せないと、実
際に動く仕組みにはなりません。ISO9001も、4.1a)項で「管理が必要なプロセスを自分で選びなさい」
と言っています。


 2 目的のないISO9001はうまく行かない
 例えば、ISO9001には「設備を管理せよ」とは書いていますが、何をどうやって管理するかは書いて
ありません。ルールの内容は、自分で決めなければいけません。この際、どの程度厳しく管理するか
は、自社の製品の特性や、改善の必要と照らし合わせて判断します。
 しかし、自社として目指すイメージがないと、何をどのぐらいの厳しさで管理して良いか決められませ
ん。仕方がないので、教科書や他社のやり方をコピーします。でも、コピーしたシステムは、自社に合
わず、余分な書類が増えるだけです。
 このように、ISOを導入する目的や、改善のターゲットが決まっていない会社は、効果的な仕組みを
作ることができません。


 3 経営者が方向付けをしなければうまくゆかない
 経営者は、ISO9001で作ったルールが、事業を進める上で不合理なものにならないように、常に注意
を払い、指導しなければいけません。経営者が方向付けをしなければ、多くの場合、事務局は形式的
なISO対応に走ります。これでは、本業の役に立つ品質マネジメントシステムになりません。
 経営者が何も言わないのは、ISO9001と本業は別物だと思っているのか、あるいは役に立たないこと
をするのがISO9001だと思っているのでしょうか。 経営者がそのように考えていることは、すぐに社員
に伝わりますから、社員も真剣には取り組みません。
 ISOが無条件で役に立つことはありません。ISOは経営者が役に立てようと思わなければ、役に立
ちません。


 4 審査の通るためのISOと、改善のためのISOは全く違う
 ただ最初の審査に通るだけだったら、形式的な品質マニュアルを当てはめて、型通りの記録を作れ
ば何とかなります。これなら楽ちん? いいえ、余分な書類が増えるだけで、会社はぜんぜん楽にな
りません。じゃあなんで、そんなやり方をする会社が多いのか? それは、コンサルタントが楽だから
です。
 一方、ISO9001を会社の改善のために役立てるんだったら、ISO9001に合わせてルールを作るの
ではなくて、自社で決めたルールを管理する手段としてISO9001を使います。審査に通るためのやり
方とは、全く異なります。


 5 安物買いは失敗する
 料金の高いコンサルが良いとは限らないし、これと見込んだコンサルが、たまたま安くでやってくれ
るのならいいんです。決まってから値切るのもまあいい。
 とは言っても、ISOを取らせるだけのコンサルは多いけど、真のシステム作りを支援してくれるコンサ
ルを見つけるのは難しいです。費用を安くしようと考えて、良いコンサルに当たることはまずありませ
ん。これは、審査機関も同じです。
 たくさん見積りを取る会社は、だいたい失敗します。何を比較してよいのか分からなくなって、結局
は値段だけで決めるからです。コンサルタントを社員に選ばせる会社も失敗します。社員は、たいて
いは値段だけで決めます(それが社長に説明しやすいから)。
 ISOは、企業にとってハイリスクハイリターンの業務改革です。安物買いが成功することは、めった
にありません。



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