らくらくISO9001講座


月刊アイソス ブログ座談会 ボツ部分こっそり公開


 月刊アイソス 2005年10月に掲載された、いそいそフォーラムのメンバー8名によるブログ座
談会の中で、UNO@元化学屋とGAIさんによる応酬があり、いそいそフォーラムらしい闘論だな
と思っていたのですが、雑誌に載せるには生々しいと判断されたのか、編集で、全面的にカッ
トされてしまいました (T_T)  闘論としてはこの程度は序の口だったのに・・・・。
そこで、GAIさんの了解を得て、2人の闘論部分を、こっそり公開します。

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◆◆ 管理・監督者の育て方 ◆◆
フェーズ3が一段落した感じなので、使える管理・監督者の育て方について会話してみません
か?
そのココロは、トップの思いがクリアになっても、「ISOの仕事」を撲滅できたとしても、「仕事」が
機能するかどうかは、上司の影響力が大きいと思うからであります。
「上司が率先垂範すれば、仕事は形骸化しない!」という論題でもあります。



Commented by UNO@元化学屋

私は、コンサルティングを始める前に
「ISOは、社長が逐一指示しなくても、会社が社長の思う方向に進めるためのシステムです。
管理責任者が、社長の代行として組織を管理します。社長に代わって判断する人ですから、
様々な局面において、社長と同じ結論を出す見識のある人を当てないとISOは機能しません」
といった話をして、人選してもらいます。
この話しを聞いて、予定していた管理責任者を、変えられる社長もおられます

管理責任者の教育というのは、管理責任者に経営者としての見識を持たせることですから、事
務局ができる話ではないですね。
事務局が管理責任者を教育するという発想自体が、マネジメントシステムを会社全体の経営
システムではなく、部分的な管理手段と考えていることの現われかな。

事務局ができることは、
まず自らが経営的な視点を持つこと。そして、経営者にISOを積極的に利用してもらえるよう、
経営者の問題意識に沿った情報や成果を出してアピールすることですね。
そうすれば、経営者が適切な管理責任者の人選を行ってくれます。



Commented by GAI

UNOさんカキコ;
>> 管理責任者の教育というのは・・・事務局ができる話ではないですね。

何かISO(ISO9001:2000)に過大な期待を足しこんでませんか?
(もっとも、コンサルタントの立場でISOを遣うとなれば、それがふつうのことかもしれませんが)

私は事務局員ですが、(地区)管理責任者の教育ならしましたよ。
その結果、始めのうちは自部門の監査指摘事項に対し、何でもかんでも私に「是正処置を書
いてきれ」と持ってきてましたが、その後は職制を通じて実務者に、仕事の仕組みの面からの
見直しを命じて処置するようになりました、放っておいても。
さて、では私はどんなことをしたのでしょうか(^_^;)
そこには特別な***や、あるいは突拍子も無い***や・・・
実はどんなことをしたというと、何も特別なことをしたわけじゃありません。
その管理責任者には、ISOは特別なものではないこと、実は通常の業務の当たり前のことしか
言っていないこと、それをさもそれらしい言葉で記述しているだけのことというのを示しただけで
した。だから監査や審査の指摘事項も、実はふつうの業務に対する指摘であり、それをその業
務をしていない人物が是正処置めいたことをやって、本当にこの先うまく動いてくれるのだろう
か? 本当に分かって是正しなければならないのは、実は誰なんだろうか? ということに気づ
いてもらうようにしただけです。
ただそれだけでも、見違えるように変わっていきました。
最近では社内でも数少ない闘論相手であるばかりか、私の暴走に対する制御弁も果たしま
す。



 Commented by UNO@元化学屋 

GAIさんへの反論だあ

UNO曰く
>> 管理責任者の教育というのは・・・事務局ができる話ではないですね。
GAIさん曰く
> 何かISO(ISO9001:2000)に過大な期待を足しこんでませんか?

期待はしていますが、過大ではありません
中小企業にとって、現実に、ISOは企業の体質改善を実現するツールであり、成功すれば経営
上の大きなインパクトを与えます。
近年新たにISOに取組む企業のほとんどは中小企業ですので、心ある会社は、本気でISOの
枠組みを利用した会社の大改革を考えています。そのような企業にとって、管理責任者が経
営幹部として一部の経営判断を行なうのは、当然のことです。

> 私は事務局員ですが、(地区)管理責任者の教育ならしましたよ。

ISOが部分管理システムで留まっている大企業であれば、管理責任者は中間管理職で務まる
し、優秀な事務局であれば、教育ぐらいできます。
でも、ISOが会社全体に影響を与える中小企業では、事務局が教育できるレベルの管理責任
者なんて、まさに形骸化した管理責任者。それでは、困るんです。

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Commented by GAI

UNOさんへ

まずはお詫びです。
"ISO"を論じる/使う場合、組織の立場、コンサルの立場、審査員の立場で結論が異なるとい
うことは理解しています。そこをうまく表現できていなかったことで誤解を与えたかもしれませ
ん。
私はあくまで組織の立場での意見であり、組織での経験から来るものです。コンサルの立場か
らの異見という、コンサル経験から来る異なる切り口を否定はしませんし、場数で言えばコン
サルの方がはるかに多いのでしょうね。

ちなみに私は転職経験者です。以前は中小企業経験でした。でも、もしいま、事務局としてISO
を形骸化させることなくやっていこうとするなら、その中小企業のほうがはるかに簡単であると
思います、トップのポリシーにミートしたMSということで。
このあたり、組織が大きいほど事務局では難しく、管理責任者がしっかりしていないと形骸化し
やすいのだと思いますよ。

というのも、大企業であれば体力がありますから、形骸化どころか「ISOの仕事」として特化した
ものを「本業」とは別に作って維持?することが可能な分だけ、トップから末端まで分かってもら
うというのは困難であり、しかも実際の利益の中で「ISOの仕事」に費やすコストなど、ほとんど
誤差の中に入ってしまいます。問題視されるのは、「ISOの仕事」のおかげでこんなにも効率が
落ち、結果として足を引っ張ったというような目に見えるものが出てきてからでしょうね(事務局
側からダメ出ししない限り)。しかしそれが分かった時点、あるいは事務局がダメ出しした時点
で何が起こるかというと、「事務局が悪い」と左遷されてしまうようなリスクを伴うということでしょ
う。そういう意味では、立場的にはつらいです。

一方、中小企業では「ISOの仕事」に費やすコストが無視できません。だから無駄は許されませ
んね。下手をするとやり直しも許されませんし、期限だって簡単には変えられませんから、最初
からうまくことを運ぶようにする必要がよりあるわけです。この場合、コンサルの立場なら・・・は
理解しているつもりです。

ここからは異見です。

UNOさんカキコ;
>>中小企業にとって、現実に、ISOは企業の体質改善を実現するツールであり、
>>成功すれば経営上の大きなインパクトを与えます。

中小企業に限った話ではありません。
もし、今回は体質改善にISOを使おうということで活動し、成功すれば中小のみならず、大企業
だってあらゆる組織にだって経営上の大きなインパクトを与えます。

>>管理責任者が経営幹部として一部の経営判断を行なうのは、当然のことです。

これも中小企業に限った話ではありません。
特に大企業になると分業/分担それに責任と権限が多岐に渡りますから、それぞれの立場で
の経営判断を行う必要があります。だからそれぞれがいわゆる「管理責任者」という機能をも
ちます。それぞれの立場の管理責任者がそれぞれの立場で何をするかというとき、ISOを特別
なものと思っていては形骸化するだけです。だからISOは特別なものでないことを分かってもら
う必要があります。そして分かれば、後は勝手に進みます。しかしそれは、その立場の中で「で
きること」留まりです。だから大変。

>>ISOが部分管理システムで留まっている大企業であれば、
>>管理責任者は中間管理職で務まるし、
>>優秀な事務局であれば、教育ぐらいできます。

これは、きわめて限定された事例紹介ということですね。
(でなければ、大企業に対する過大な偏見に見えてしまいます(^^ゞ)

ちなみに我が家には、複数の管理責任者が存在します。その昔、ISO9001:1994で形骸化して
しまった多くは、QAに特化したがためにQMの部分とリンクしないものになった部分がありまし
た。しかしISO9001:1994は「まだ早すぎる」QAとして出したのは事実でも、TC176ではQMを見
据えた開発のワンステップとしており、QM要素が少なからず入っていたことは事実です。そこ
をISO9001:1994時代は説得できなかったため、ISO9001:2000のときに「QMSになったのだか
ら」と持って行きました。そして下位の管理責任者に対しては納得してもらえたのですが、上位
の管理責任者に対してはうまくいきませんでした。

正確には「うまく行かなかった」というよりも、企みを見抜かれたというところです。
「お前の言うことは理解できる。べき論ならそれが正しいことも分かる。
 しかしISO9001:2000のどこにQMSでなければ運用できない要素がある?
 規格の言葉を使って説明してみろ」
で脱帽でした(なにせ規格を原文だけで読む方でしたから)。
そして言われたことは、
「QAでもいいじゃないか、トップが出したリソースがそれだけなら、
 その中でできることをまずは示すことだ。そのうえで"与えられた
 リソースでできることは全てやりました。次はどうしますか"と
 持っていくことができるようにしなさい」
これが私の悩みの始まりであり、下位管理責任者に対する新たな教育の始まりなのかもしれ
ません。

これが大きな組織ゆえの悩みで、「前の会社なら簡単なんだけどなぁ」と思わせる部分です。

>>でも、ISOが会社全体に影響を与える中小企業では、事務局が教育できる
>>レベルの管理責任者なんて、まさに形骸化した管理責任者。
>>それでは、困るんです。

それは中小企業だからということでなく、そのような管理責任者や事務局を人選したトップに原
因があるわけですね。もし、きっちりと人選したのであれば、今度はそれだけの力量のある管
理責任者であり事務局ということですから、教育ができるのがあたりまえとなるでしょう。
そして、そのように持っていくことこそがコンサルの腕の見せ所でもあるわけですよね。
世の中にはUNOさんのようなコンサルばかりじゃないのも事実ですから、この一連のカキコが
雑誌記事になることを考え、あえて出してみました。

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 Commented by UNO@元化学屋

GAIさん曰く
> UNOさんへ まずはお詫びです。
> うまく表現できていなかったことで誤解を与えたかもしれません。

お気遣いありがとうございます。まあまあ、互いに手の内をわかった上で、確信犯で(わからな
い振りして)やっているということで、こちらの暴言も見逃してください。

> もし今、事務局としてISOを形骸化させることなくやっていこうとするなら、
> その中小企業のほうがはるかに簡単であると思います、トップのポリシーに
> ミートしたMSということで。
> このあたり、組織が大きいほど事務局では難しく、管理責任者がしっかりして
> いないと形骸化しやすいのだと思いますよ。

でも、中小企業は、経営者のトップダウンはあるが、展開する力がない
そして、大企業は、力のあるスタッフはいるが、組織が改革を阻む

形骸化したシステムがISOだと思い込んでいる大企業、
その形骸化したシステムを真似るのがISOと思い込んでいる中小企業、
それを勧めるコンサルタント
そのような現状に対する問題提起ということで、ご容赦下さい

GAIさん曰く
> 中小企業に限った話ではありません。

GAIさんさらに曰く
> これも中小企業に限った話ではありません。

まあ、わかった上で言ってるんですけどね (^_^)

以前、小企業の現実問題を議論した生々しいマネジメントレビュー(月例会議)の議事録を見
て、「これではわかりにくいですね。規格のa)〜g)まで欄を作って書き込むようにすれば、分か
りやすいですよ」などという審査員がいました。
おもわず、「中小企業は経営のためにISOをやってるんだ。大企業のセレモニーMRとは違うん
だ」と、(心の中で)叫んでいました(もちろん、大企業なら良いということではありませんが)。

現実には、半ば形骸化した大企業のやり方が、MSのモデルとして出回っています。中小企業
の指導をしていると、「大企業の真似をせず、自社の経営を考えてシステムを作って下さい」と
いう言い回しを使うことが多くなります。
これは、システムの形骸化と戦う大企業の事務局さんには、たいへん失礼な言い方ですが、立
場違えば言い方も違う、ということでご理解下さい。



【【【 鍵となる要求事項は何か? 】】】
マネジメントシステムの形骸化を防止するための鍵となる要求事項を考えてみよう、という趣向
です。
もとよりケース・バイ・ケースの話であろうとは思いますが、今回の議論を通じて、傾向とか仮説
とかを見出すことができれば面白いと考えています。
(例:責任・権限の決定、手順の確立・維持、プロセスの監視、データの分析・・・)



Commented by UNO@元化学屋 

QMSもEMSも、継続的改善を行うための仕掛けなんですから、ちゃんと運用すれば形骸化は
防止できます。そのための要求事項は、規格全体に散りばめられています。
しかし、規格は、改善せよと言うだけでその具体的な方法は決めてくれません。表面的に要求
事項をこなしても、形骸化は防げません。

あえて言うならば、形骸化を防ぐための基本は、ISO9001の序文にあります。
「品質マネジメントシステムを採用することは、組織による戦略上の決定とすべきである。」
ここですね。

経営者が会社をコントロールするための手段としてISOを使おうとしているか、というのが決め
手になると思います。
現実の管理とISOの二重システムになっているのであれば、最初から形骸化です。
一方、マネジメントシステムが、経営手法ではなく生産部門の管理手法で留まっている場合に
は、時間を経るに従って、形骸化する危険があります。



Commented by GAI

家族サービスが終わり、少々疲れ気味です。
で、これまでのスタンスからすると、私は一言、

「形骸化を防止するための鍵となる要求事項など無い」

です(^^ゞ
そもそも「要求事項」なんていうからおかしな方向に進む、といってきたわけですから、あえてそ
ういわせていただきます。

その一方で、あえて何かということなら、

「品質マネジメントシステムを採用することは、組織による戦略上の決定とすべきである。」

という、スタンスの異なるUNOさんと同じ部分です。
お,奇遇ですねぇ〜(^^ゞ 



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