らくらくISO9001講座



<解説>ISO13485の読み方

(1) ISO13485はこんな規格
(2) ISO13485との付き合い方

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宇野 通編  

   口語訳ISO13485を作成する過程で気がついた、ISO13485の特徴です。
   他の解説とは言っていることが少々違うと思いますが、ISOを使用する
   現場の感覚から見れば、こうかなと感じた内容です。

口語訳 ISO13485 はこちら→


 (1) ISO13485はこんな規格


  医療機器の品質マネジメントシステム

ISO13485は、医療機器に関する品質マネジメントシステムの規格です。ISO9001を医療機器分野
で役に立つように書き換えたものです。



  医療機器とは

ここで言う医療機器には、注射器・カテーテルのような治療用具、画像診断装置などの検査機器、
歯の充填剤のような材料、妊娠検査薬などの体外診断薬、医療で使われるソフトウェアなど、
幅広い分野の製品が含まれます。
医療機器というのはあくまで用途であって、中身は金属加工であったり、機械であったり、化学で
あったり、ソフトウェアであったりと、さまざまな産業分野にまたがっています。



  法律で使う規格

ISO13485は、企業が自主的に取組むISO9001やISO14001と異なり、法律に組み込まれます。
ヨーロッパ、カナダ、オーストラリア、アジア各国の法律が、医療機器メーカーに対して、ISO13485
に従って管理することを求めています。
日本(薬機法)では、ISO13485ではなく、QMS省令(ISO13485:を元に作った法律)を義務づけて
いますが、ISO13485の認証があれば、QMS省令に適合していると見なされるので、実質的には ISO13485に従っています。
アメリカはISO13485に寄らず、独自のシステム(QSR)で規制しています(ただし、個々のプロセス
について求める内容は、ISO13485と共通します)。



  ISO13485の改訂版

ISO13485の初版は、1996年に発行されました(日本語版はJIS Q 13485)。これは、ISO9001の
1994年版に、追加の要求事項を加えたものでした。
ISO13485は2003年7月に改訂されました。、これはISO9001の2000年版を元に作成されたもの
です。JIS規格は2年遅れて、2005年発行されました(JIS Q 13485:2005)。
ISO13485の最新版は、2016年3月1日に発行されました。移行期間は、3年間で、認証組織は、
2019年2月までに、改訂版にi移行する必要があります。
そのJIS(公式日本語訳)は、2年遅れて、ようやく2018年3月に発行されました」(移行期間が
3年なのに、2年もかかるなんて)。しかし、移行期限はもうまじかです、まだ2016年版に移行して
いない会社は、急いでください。



  ISO13485 は標準フォーマット(Annex SL)に従わない

ISO9001は、2015年9月に大幅に改訂され、2015年版になりました。しかし、のISO13485の改訂
版は、ISO9001の旧版である2008年版を元に作られました。
ISO9001 2015年版は、マネジメントシステムの標準フォーマット(AnnexSL、共通テキストなど
と呼ばれる)に従って作られています。しかし、ISO13485は、この標準フォーマットには従っていま
せん (次期の改訂で、対応するとのことです)。
その結果、現状の最新版では、ISO9001(2015年版)とISO13485(2016年版)の内容(目次構成)
が異なっています。
大変使いにくいのですが、決まってしまったものは仕方ありません、我慢して使うしかありません。


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 (2) ISO13485との付き合い方(ISO9001との違い)


  文書要求が140項目もある、文書偏重の規格

ISO13485は、32項目の「文書化した手順」を求めており、その他の文書化も入れると80項目ほど
の文書化の要求があります。加えて、記録が約60項目。
一方、ISO9001では、文書化した手順の要求はなく、「何を文書化するか」は、自社の判断に任せ
ています(記録は約22項目)。
このように、ISO13485とISO9001は、まったく思想が異なります。
文書偏重なのは、ISO13485が法律に組み込まれる規格だからです。
一般に、行政機関が行う検査や調査は、文書・記録を中心に行うので、多くの作成すべき文書が
指定されます。また、法に基づく(処罰を伴う)厳密な適合/不適合の判断には、文書が必要です。

ただし、個々の文書の詳しさについては、自社の判断で決められます。 過剰な文書を抱え込む
ことが無いよう、簡素な対応に努めましょう。



  特定の医療機器にしか該当しない条項がいっぱいの、ワガママ規格
  
ISO9001は、様々な業種で使うことを考えて、特定の業種に偏った条項は含めないように配慮して
います(改訂ごとに、そのような条項を減らしています)。
一方のISO13485では、検査装置向け、手術用具向け、治験を伴う開発向けなど、特定分野に
偏った要求がいっぱいです。
ISO13485は、各分野のワガママな主張を、どんどん取り入れているからです。
自社に関係なさそうな条項は、早く見切って、切り捨ててゆきましょう。



  高度なことをやっていると主張する、自大主義の規格

ISO13485には、ハイリスクで、特別な管理が必要な医療機器を想定したルールが、多く見られ
ます(衛生管理、滅菌、バリデーション、治験、メンテナンスなど)。 ISO13485の委員会に入って
いる人は、ハイリスクの医療機器を扱っている人が多いので、その主張を取り入れた結果です。
しかし、そのようなハイリスクの医療機器は一部です。半分以上の医療機器はそれほどリスクが
高いものではありません。 当然、ハイリスクな医療機器のための大仰な要求に、付き合う必要は
ありません。
ISO13485は、リスクに応じて手加減しながら使いましょう。



  ダイエットに成功したISO9001とは異なる、てんこ盛り規格

ISO9001は、特定の業種に偏った条項や、細々とした条項を削って、改訂ごとにスリムになって
きました。その結果、あらゆる業種の会社に共通する、マネジメントの原則に絞り込んだシャープ
な規格になっています。
一方、ISO13485:は、各分野のワガママな主張を、どんどん取り入れて、やたら大仰な要求から、
チマチマした要求まで、てんこ盛りです。改訂のたびに、要求事項が上乗せされます。
全ての要求に杓子定規に取り組もうとすると、訳が分からなくなります。
上手に取捨選択して使いましょう。



  リスクに基づいて決める

マネジメントシステム規格が決めるのは、管理すべき項目のみで、管理の方法や管理レベルは、
組織の判断で決めます。それは、ISO13485でも一緒です。
管理レベルの判断の元になるのは、以下の点です
@ 品質保証のために、どこまで必要か
A 会社の目標を達成するために、どこまで必要か
B その医療機器が持つリスク

ISO13485には、過剰なことがいっぱい書かれています。
書いてあることを、全部やろうとは思ってはいけません。
自社の製品のリスクに合わせて、取捨選択して、バランスの取れたシステムとすることが肝心です。


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