らくらくISO9001講座


ISO9001:2000 建設編

7.設計・施工
 7.1 施工計画
 7.2 顧客への対応
 7.3 設計
 7.4 購買(資材の購買・外注)
 7.5 施工

改訂 2004.01.24

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7.設計・施工

7.1 施工計画

◆施工計画の作成
会社は、施工計画を作ること。
計画の内容は、工事の内容や規模に見合ったものであること。「施工計画書」(規定の様式でまとめたも
の)を作らない工事では、受注書、工程表、図面などを組み合わせて施工計画とみなしても良い。施工計画
は、他の会社の仕組みと矛盾がないこと。

◆施工計画の内容
施工計画の中で、次の事柄で必要なものを決めること。
a) 設計内容、その他の顧客との約束、目標とする品質レベル
   (これらは、設計図書、契約書、施工図などで明確にされていることで良い)
b) 工事の内容、含まれる工種、作成する文書、使用する設備、必要な技能者など
c) 検査、段階確認、日常管理の内容
d) 適正な施工を証明するために、どのような記録を残すか(4.2.4の対象)

参考1. このような計画書を、品質計画書と呼ぶことがある。
参考2. 大規模な工事では、施工計画を作る際に、7.3に沿って実施しても良い。



7.2 顧客への対応

7.2.1 施工内容を明確にする
会社は、施工内容について、次の事項がどのように決まっているかを示せること。
a) 顧客要求事項
   顧客(発注者や元請)との約束(施工内容、設計内容、作業内容)。これには引渡し後のサービス(品
   質の保証、メンテナンスなど)についての約束を含む。
b) 用途に応じた要求事項
   顧客との約束はないが、当然しなければならないこと。顧客との間では詳細を決めておらず、自社の
   判断で対応すること。
   建売住宅など、顧客が未定の場合には、自社で設定した設計や施工内容
c) 法令・規制要求事項
   法律上または公的な決まり。例えば、建築基準法、都市計画法、品確法など。共通仕様書なども含め
   ても良い。
d) 組織の追加要求事項
   会社が経営的に必要と判断すること(経営方針、営業戦略、リスク回避などを考慮して加えるもの)


7.2.2 顧客との約束(契約・受注)
◆約束の確認
会社は、顧客(発注者や元請)と約束する前に、その内容を確認すること(ルールを決めて内容を点検するこ
と)。ここで言う約束とは、見積書の提出、入札、契約、受注、それらの変更などを指す。

約束の内容の確認では、次の点を確かめること。
a) 施工内容(または、設計内容、作業内容)について、必要なことが決まっている。
b) 以前に交わした約束(以前に出した見積書や、以前にした同等の仕事)と内容が変わっている場合に、
  変わることについて合意されている。
c) 会社が、依頼を受けた施工や設計を実行する能力(技術、工期、金額)を持っている。

約束の記録
顧客と約束したら、その記録を残すこと。また、確認の結果、内容を変更した場合は、変更の記録も残すこ
(4.2.4の対象)
顧客が注文内容を口頭で伝えてきた場合にも、内容を確認し、何らかの形で記録を残すこと。

◆契約・注文の変更
契約や注文内容の変更があった場合には、会社は、設計図書、施工計画書、施工図などの関連する文書
を修正すること。また、変更の内容を関係者に理解させること。

参考  省略(建設業には該当しない)


7.2.3 顧客との情報交換
会社は、顧客と情報のやり取りをする手段や担当者を決めること。顧客と交わす情報には、次のようなもの
がある。
a) 工事情報(顧客への宣伝活動、工事実績の公開、顧客から得る工事情報や業界動向)
b) 引き合い、契約、注文、またはそれらの変更
c) 顧客からの反響(クレーム、意見、顧客満足調査など)

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7.3 設計

7.3.1 設計の計画
◆計画の内容
会社は、設計をどのように進めるかを計画すること。設計の計画には次の事項を含めること。
a) 設計の種別、スケジュール
b)  設計のレビュー、検証及び妥当性確認の実施予定
c) 設計の責任者と担当者

◆異なるチームとの連携
設計に複数のチームが参加する場合には(工種別の設計など)、会社は、責任の区分と、確実に情報交換
をするための方法【インタフェース】を決め、実行すること。

◆計画の変更
設計の計画を変更する必要が生じたら、適宜見直すこと。


7.3.2 設計の元になる情報(設計へのインプット)
設計に当たって考慮しなければならない情報【設計へのインプット】を整理して、記録すること(4.2.4の対象)
その中には、次の項目を入れること。
a) 施工物に関する顧客の要望、機能上や安全上で必要な事柄
b) 適用される法令・規制(建築基準法、都市計画法、共通仕様書など)
c) 可能な場合は,以前の類似した設計から得られた情報
d) 設計に不可欠なその他の情報

これらの情報の適切さを確認すること。考慮する内容に漏れがなく、曖昧でなく、かつ、矛盾がないこと。


7.3.3 設計図書(設計からのアウトプット)
設計図書は、設計へのインプット(7.3.2)で取り上げた事項をどのように処理したかが説明できること。設計
図書は、次の段階に進む前に、決められた責任者の承認を受けること。

設計図書は次の内容を含むこと。
a) 設計のインプット(7.3.2)で求められていた事項を満足している。
b) 施工方法、施工技術、資材の購入、専門業者の使用に対して適切な情報を含む。
c) 検査や段階確認の際の判定基準(寸法、材料の仕様、外観など)が決まっていること。
d) 施工物を使用する際に、安全上考慮しなければならない事柄が明確になっている。

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7.3.4 設計のレビュー(関係者による検討)
設計の適当な段階に、「設計のレビュー」(関係者による検討)を行うこと。「設計のレビュー」には、関連す
る全てのチーム(設計を分担する各チーム、施工者、専門技術者、営業担当など)が参加し、次の観点から
設計内容を確認すること。
a) 求められていた通りの設計ができているか(できそうか)。
b) 問題があれば指摘し、対策を提案する。

「設計のレビュー」は必要な確認が行えるように、体系的に行うこと(必要に応じて、テーマごとに分けたり、
設計の進捗に応じて繰り返して行うこと。これは、会議や打合せとして行っても、書面で行っても良い)。
「設計のレビュー」は設計の計画(7.3.1)に従って行うこと。
「設計のレビュー」の記録を残すこと。また、「設計のレビュー」の結果を受けて処置を行った場合はその記
録も残すこと(4.2.4の対象)。


7.3.5 設計の検証(設計図書の確認)
「設計の検証」(設計図書の確認)として、設計図書がインプット(7.3.2)で求められていた通りに作られてい
ることを確認すること。

「設計の検証」は設計の計画(7.3.1)に従って行うこと。
「設計の検証」の記録を残すこと。また、「設計の検証」の結果を受けて処置を行った場合はその記録も残す
こと(4.2.4の対象)。


7.3.6 設計の妥当性確認(実用性の確認)
「設計の妥当性確認」(実用性の確認)として、設計図書あるいは施工物が、当初の狙い通りに出来上がっ
ており、実用上問題がないことを確認すること(例:施工時に現物を確認する、設備の試運転、設計内容の
顧客確認、模型やコンピューターグラフィックによる確認、設計の技術的な検証など)。

「設計の妥当性確認」は、できる限り引渡しの前に行うこと。
「設計の妥当性確認」は設計の計画(7.3.1)に従って行うこと。
「設計の妥当性確認」の記録を残すこと。また、「設計の妥当性確認」の結果を受けて処置を行った場合は
その記録も残すこと(4.2.4の対象)。


7.3.7 設計の変更管理
設計の変更を行ったら、その記録を残すこと。変更の際には、必要に応じて「設計のレビュー」「設計の検
証」あるいは「設計の妥当性確認」を行うこと。この際、設計の変更が、施工物の他の部分に及ぼす影響を
確認すること。
これらの「設計のレビュー」「設計の検証」及び「設計の妥当性確認」の記録を残すこと。また、その結果を受
けて処置を行った場合はその記録も残すこと(4.2.4の対象)。

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7.4 購買(資材の購買・外注)

7.4.1 資材の購買・外注の管理
◆協力業者と購買品の管理
会社は、意図した通りの購買(資材の購買・外注)ができるように管理すること。
協力業者(資材納入業者、外注業者)の管理方法、及び購買品(資材や外注工事の品質)の管理方法は、
その重要さによって決めること。

◆協力業者の評価/選定
会社は、協力業者の実力を評価し、評価結果を元に使用する協力業者を選定すること。また必要に応じて
(定期的あるいはトラブル発生時に)、協力業者を再評価すること。
協力業者の選定/評価/再評価の、方法と基準を定めること。
評価の記録を残すこと。また、評価を受けて、協力業者の指導や変更を行った場合は、その記録も残すこと
(4.2.4の対象)。


7.4.2 注文内容の伝達
協力業者に、資材や外注工事を発注する時は、注文内容をきちんと伝えること。注文の際には、次の項目
で必要な事が、伝えられていること。
a) 資材の仕様や品質、外注工事の内容(設計、品質、工法、設備など)
b) 作業者の資格や個人の指定
c) ISO9001の取得の確認や、その他の業者の資格の確認

協力業者に伝える前に、注文内容が正しいことを確認すること。


7.4.3 受入検査
会社は、資材の受入検査や、外注作業の仕上がりの確認を行うこと。

会社やその顧客が、納入前に協力業者の工場へ出かけて検査する場合は、その検査の方法及び納入許
可の方法を協力業者に伝えること(7.4.2の一部となる)。

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7.5 施工

7.5.1 施工管理
会社は、施工を管理すること。
この際、下記で必要なことがあれば、実施すること。
a) 施工物に関わる情報(設計に関わる情報、施工物の用途に関わる情報など)を現場に提供する。
b) 必要に応じて、共通仕様書、標準書、社内で作成した作業手順などを利用する。
c) 適切な設備を使用する。
d) 適切な測量機器や測定機器を使用する。
e) 決められた段階確認や検査を実施する。
f) 顧客への引渡し及び引渡し後のサービスを決めた通りに行なう。


7.5.2 施工の適切さの確認
施工の良し悪しが検査や段階確認では分からない工種については、事前に施工条件が適切かどうかを確
認すること【プロセスの妥当性確認】。これには、長い期間を経た後に、施工不良が判明するような工種を含
む。
建設業では、一般に溶接や圧接(検査で保証できない場合)が該当する。また、コンクリートの打設、土盛
り、塗装工事なども、施工手順の影響が大きく、後の検査ではわからない部分があるため、この項を積極的
に適用することが望ましい

施工条件の管理の適切さを示すことで、その施工の品質の良さを証明すること。
会社は、適切な施工のために、次の事柄の内、当てはまるものについて決めておくこと。
a) 施工条件をどのようにして決めるか。その決定方法と承認者
b) 設備に求められる条件。要員に求められる条件(資格、経験)
c) 作業方法
d) 作成する記録(4.2.4の対象)
e) 適切さの再確認の方法(設備や要員の能力が低下していないか)
※ この項目は、特定の製造業で重視される事項である。建設業では常識的な対応で良い。


7.5.3 識別及びトレーサビリティ
◆資材の識別
資材の種類を誤って使用しないように、表示や置き場などで区別すること。
不良あるいは未検査の資材を誤って使わないように、表示や置き場などで区別すること。

◆工事現場の識別
会社は、業務の実施上で必要な場合には、工事番号、工区番号、部屋番号などで現場を区別すること。

◆施工不良箇所の識別
施工不良箇所を見失ったり、未処理のまま放置されることがないように、必要に応じて、現地表示や位置の
記録を行うこと。

◆トレーサビリティ
トラブルの際に、トレーサビリティ(追跡調査)を行なうために必要なデータを、記録に含めること。(4.2.4の対
象)。

参考  略(建設業には該当しない)
※ この項目は、製造業で重視される事項である。建設業では常識的な対応で良い。

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7.5.4 顧客からの預かり品
会社は、顧客からの預かり品(施工物に組み込む資材、貸与設備、書類など)について、それが自社の管
理下にある間、注意を払うこと。受け取りや使用時に、確認(検査・点検)を行うこと。また、紛失しないような
表示し、損傷を防ぐ保管や取り扱いを行うこと。
顧客からの預かり品を紛失・損傷したり、使えないことが分かった場合には、顧客に報告すること。この場合
には、記録を残すこと(4.2.4の対象)。

参考 顧客からの預かり品には、知的財産(漏らしてはいけない情報)も含まれる。


7.5.5 資材の保管、施工物の養生
会社は、資材や施工物が損傷しないように、適切な取扱い、保管及び養生を行うこと。
※ この項目は、製造業で重視される事項である。建設業では常識的な対応で良い。



7.6 測量機器および測定機器の管埋

◆適切な測定の実施
会社は、品質を確保するために必要な測量や測定を決め(7.2.1を考慮すること)、これに使用する測量機器
や測定機器を決めること。会社は、適切な精度を持った方法で、測量や測定を行うこと。

◆測量機器および測定機器の管埋
顧客に品質を保証するために必要な測量機器や測定機器は、次のように管理する。
a) 定期的(または使用ごと)に校正あるいは精度の確認を行う。国際又は国家標準のあるものについて
  は、これにつながる方法で校正する。自社で基準を設定した場合は、どのような基準を用いたかを記録
  する。(4.2.4の対象)
b) 必要に応じて機器の調整をする
c) 校正や精度確認の有効期限を表示する
d) 校正や調整を狂わされないように管理する
e) 損傷しないように取扱い、保守し、保管する。
校正及び精度の確認の結果は記録に残すこと(4.2.4の対象)。

◆異常時の処置
測量機器や測定機器が狂っていることが判明したら、それを用いて行われた工事に問題がないか調査する
こと。調査結果は記録すること(4.2.4の対象)。会社は、狂っていた機器の調整や修理を行うこと。また、工
事に問題があった場合には、適切な対策を行うこと。

◆ソフトウェアの確認
コンピュータソフトウェアを組み込んだ測定機器を使う場合には、最初に使用する時に、そのコンピュータソフ
トウェアが正しく機能することを確認すること。また、必要に応じて、定期的または使用時にも確認すること。

参考  測定機器の管理に関わるISO規格 ISO 10012−1 ISO 10012−2

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