前日に演奏会場のHPを確認したところ、「演奏家の希望により、休憩なしで全曲演奏する」とか書いてあるじゃないですか。ウヘェまたか。
2014年の紀尾井ホールでのベートヴェンのラスト3曲は本当に休憩・拍手なしで3曲を1時間半近く通しで演奏して聴かせてくれましたが
聴く方も(緊張を長く強いられ)大変でした。
しかし当日会場に着くと、当初の予定通り休憩をいれるとのこと。お客さんは高齢の方も多いので、苦情も出たんじゃないかと思います。
〜当日の感想メモより〜
モーツアルトは手慣らしか。私自身がモーツアルトをあまり好まないためか魅力的に聴こえなかった。
何というか、モーツアルトを魅力的に演奏するためには、メロディアスに、ちょっとロマンチックに弾く必要があるような気がするが
シフの軽快な指さばきは聴けたが、ロマンチックではなく、少し退屈した。
シューベルトはさすが。長大な展開を的確に弾き分け、少しずつ変奏しながら繰り返すフレーズの変化が楽しめ、
シューベルトが何故に何度も(微妙に変形しながら)いくつかのフレーズを織り上げたのか、その意味が伝わってくるような演奏だった。
シフのタッチの引き出しの多さや、解釈の豊かさが、シューベルトの演奏では生きていて、独特の、そして質の高い魅力になっていた。
ただ、シューベルトの解釈や演奏の形は、まさに百人いれば百通り可能な性質のもののように思え、シフの演奏が最上とか正解とかいうことではない、
と感じた。
ハイドンは退屈なイメージが強いが、バロック時代の対位法主体の音楽ゆえ、シフの得意とするところ、と期待し、半分は当たっていたのだが、
反復の形などが(バッハに比べて)やはり単調で少し退屈してしまった。
ベートーヴェン。第1楽章はいつものシフの演奏、と思いきや、たたみかけるような速いパッセージが少し遅い。
ミスするよりも少しペースを落として弾いていたように思えた。
アリエッタ。前半変奏部もいつも通りかと思ったが、最後の変奏部を2度リピートした(つまり3回繰り返し演奏した)ようで、
シフ自身(その後30秒ほど)少し動揺した感じに聴こえた。
その後落ち着きを取り戻し、雄大な主題回帰のフィナーレを弾いてくれたので満足させてもらったが、
最良の状態ではなかったようだ。
いつもシフはアンコールでサービスしてくれますが、今回も6曲30分に及びました。
どれも素晴らしかったので、いつまでも席を立てず。しかし、円熟期の巨匠のピアノが聴ける機会はそうありはしません。
何を弾いても(遊びのようでも)深みがあっておいそれと聴ける演奏ではなく、コンサートに足を運んで大満足でした。