11月12日

NHKの特集番組「サイボーグ技術が人類を変える」の内容は、私にとって衝撃的でした。

脳の回路や手足などとの連絡で自然につかわれている電気信号を解析し、(少なくともある部分は)機械と共有することが可能になるというのです。

 

番組では、人間の脳が神経を通して出す電気信号の解析がすすみ、神経と義手を直接つないで、人の意思で義手を動かすことが実用化されつつありました。

また、アルツハイマー病の患者の脳の海馬にワイヤーで電極をとりつけ、常態の信号を人工的に発信させることで、体のコントロールを回復できていました。

身体障害を持つ人々にとって、今までの医療では諦めるしかなかった運動能力の回復に、可能性が開けてくる素晴らしい技術であることは間違いありません。

しかし番組の後半で、この技術を転用し、動物の脳に直接電気信号を送るチップを埋め込み、思い通りに行動させる実験に成功していました。

すでにアメリカ軍ではこの技術の軍事利用を研究し始めているそうです。すでに今の技術でネズミの偵察スパイ化が可能になるようです。

 

近年開発が始まったばかりのこの分野の研究は、あと5年で飛躍的に開発が進むといわれているそうです。

番組内でも立花隆氏が警鐘を訴えていましたが、氏はゼミのサイト「SCI(サイ)」に特集ページを設け、この問題についての認知を広めるようにされています。

私も現在まったく未消化な状態ですが、今後非常に大きな問題になることは間違いありません。ぜひご覧ください。

「SCI」の掲示板では、番組を見て私の感じたことと同じように感じた人々の感想・意見を読むことができます。)

 

正直、私にはリアリティが不足しているのですが、もし今後人間の指令信号のパターンが解析されたなら、脳の人工的な開発やその応用としての超人化、

日常的に(機能補助・拡大のため)脳に補助チップを埋め込んでコンピュータと脳を直接常時接続できるようする可能性も冗談ではなく、

そうなった時には、それこそ漫画「攻殻機動隊」のように人間がハッキングされる可能性すら出てくるでしょう。

少なくとも、今の「人間」の定義は大きく揺らいでいくでしょう。運命的に決められた肉体条件下で生を営んでいく、という現在の基本条件がなくなると

その人の個性というものはいったい何によって規定されていくのでしょうか?すべてがオプションで変更・強化可能な人間。今の私には想像できません。

例えば、いまは非可視光線である赤外線や紫外線を知覚する人類が出現するなら、視覚芸術における今の色彩学は根底から崩れるでしょうね。

 

「SCI」のリンク先で見つけたロボット工学のブルック氏の言葉はさらに衝撃的でした。

「ロボットがわれわれに取って代わることをおそれる必要はない。なぜならそのとき、とって変わられる『われわれ』というものが存在しないからだ

……われわれは、機械と一体になっているだろう」

私は今回初めて、電気や自動車などの文明を拒絶して生活することを選んだアーミッシュの人々の気持ちが、少し分かる気がしました。

なんだかあまり長生きしたくない気分です。