2月25日

『古代から日本の政治経済学は、儒教の経世論であった。日本人は、宇宙論や修身論よりも、経世論として儒教を受容し、培養してきた。

これを国家理性として強固に保持していれば日本は急激な変化にも耐えられるが、これから逸脱すると国家は迷走を開始するのではないか。

本書はこれを証明したわけではないが、明治維新を欧米文明の受容としてだけ書くことには強く反発してきた。

維新は日本の伝統的思想を基礎として、その上に欧米文明を受容したのであり、その基礎は日本版の儒学経世論ではなかったか。

(略)

現代もなお、欧米文明をより多く受容すればするほど日本はより良い国になるという安直な文明論は跡を絶たない。

その受容は、基礎が強固である限りにおいて有効であるにすぎない。』 (「渋沢栄一の経世済民思想」 坂本慎一 1970〜 : 著)