養老孟司氏によれば、「バカの壁」とは 壁の内側だけが世界で、壁の向こう側が 見えないことを言うのだそうです。 かつて東西ドイツを分けたベルリンの壁、 ナチスがユダヤ人を隔離するために作った壁、 イスラエルがガザ地区に建設中の壁、 アメリカ政府が計画しているミサイル防壁など、 目に見えない人の心の壁の表面化したもの (イノセンス風にいうなら“表現形”)でしょうか。 確かに人間には自己を保護する壁が適度に 必要だ思います。しかし私には壁から向こう側へ まったく手を伸ばすことなく生きることが可能だとも、 (可能であったとしても)豊かな人生とも思えません。 壁の向こう側を理解しようとする気持ちのないまま 相手を“悪”と決めつけ、「力で排除すればいい」という 発想がまかり通る今の世界の奇怪な人間模様が、 たとえ人の本能だとしても、その壁を克服しようとする 意思こそがよき文化創造の原点だと、私は思います。 |
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