4月24日

養老孟司氏によれば、「バカの壁」とは

壁の内側だけが世界で、壁の向こう側が

見えないことを言うのだそうです。

かつて東西ドイツを分けたベルリンの壁、

ナチスがユダヤ人を隔離するために作った壁、

イスラエルがガザ地区に建設中の壁、

アメリカ政府が計画しているミサイル防壁など、

目に見えない人の心の壁の表面化したもの

(イノセンス風にいうなら“表現形”)でしょうか。

確かに人間には自己を保護する壁が適度に

必要だ思います。しかし私には壁から向こう側へ

まったく手を伸ばすことなく生きることが可能だとも、

(可能であったとしても)豊かな人生とも思えません。

壁の向こう側を理解しようとする気持ちのないまま

相手を“悪”と決めつけ、「力で排除すればいい」という

発想がまかり通る今の世界の奇怪な人間模様が、

たとえ人の本能だとしても、その壁を克服しようとする

意思こそがよき文化創造の原点だと、私は思います。