(2004.04.23/2004.05.13upd)

Canon AE-1の分解

症状:ファインダー系のカビ・汚れ
原因:アイピース、プリズム、スクリーンのカビとゴミ
対処:分解掃除
成果:アイピースとプリズムは成功、スクリーンは未着手

トップカバーを外し、プリズムとアイピースを取り出してクリーニング。ファインダー中央の目立つカビの除去は成功。しかし、スクリーン裏のゴミは当面手を付けないことにした。アイピースとプリズムの掃除だけでもかなりの効果があったし、スクリーンの掃除となると、さらにもう一段の分解が必要にるため、今回は深入りを避けた。この機体は他の機能が正常なので、まだ壊したくない。でも、AE連動糸を切ってしまい、えらいことになった。

  AE-1の典型的な故障としては、有名な「シャッター鳴き」があるが、これはマウント部のネジを外して、ネジ穴から注油することで修理可能。この点に関しては、雑誌などで紹介されているので、そちらを参照のこと。

ジャンクコレクターの経験から言うと、Canonの一眼レフはファインダー系にカビが発生する確率がかなり高い。FTbからEOS630まで、アイピースの内側とプリズムのスクリーン側にカビが発生している機体を非常によく見掛ける。Canonの製造工程か素材に何か問題があるのだろうか? 逆に、OLYMPUSの一眼レフはプリズム腐蝕はあるが、カビは滅多に見ない。Nikonはどちらもあまり見ない、Pentaxの古い機種はゴミの付着が目立ったな。

■注意事項

分解前に、シャッターダイヤルをBに、ASAダイヤル感度を400に設定しておくこと。高速に合わせたままで分解すると、AE連動糸を引っ張っているゼンマイが急速に戻って、その勢いでAE連動糸が切れてしまう。これはほとんど確実に起きるので、十分に注意すること。

この事故を防ぐには、速度B、ASA 3200にするのが最も安全。しかし、露出計の更正が必要な場合にはASA 400にしておくと便利。一般的な室内(30Wのサークルライト二本)では、ASA 400、1/60"-F2でだいたい適正露出になる。また、B-ASA 400で、巻き戻し軸側のプーリー上のネジが3時くらいの位置にあると、だいたい適正な設定。なお、B-ASA 400ならば、糸切れ事故が起きる可能性は低い。

■トップカバーの開け方

  1. まず、速度ダイヤルをBに、ASA感度を400に合わせる。高速に合わせたまま分解すると、AE連動糸が切れるので注意。

  2. シャッター軸を分解する。通常の順ネジで、カニ目レンチで開けられるが、かなり固いのでカニ目レンチがすべって傷を付ける可能性が高い。きちんとしたレンチを使い、ゆっくり慎重に力を入れること。なお、シャッター軸には内部にもう一つカニ目ネジがあるが、これも順ネジで固いので、同様に注意してはずすこと。

  3. 巻き戻し軸を分解する。通常どおり、裏蓋を開けてドライバを突っ込んで、巻き戻しレバーを回せば外れる。また、その下にCリングが入っているのでCリング外し(先端の尖ったラジペン)ではずす。

  4. ネジをはずす。まず、両側面と接眼レンズの左右のネジ計4箇所を外す。また、エプロン部の下にもネジがあるので、まずエプロン部を外す。エプロン部の両側面、正面、底面の4箇所を外す。さらに、エプロンの下に隠れていたペンタブのネジ2箇所を外す。これでトップカバーが外れる。

■接眼レンズの掃除

接眼レンズの左右に上から下に向けてかなり長いネジが二本入っているが、これを外せば接眼レンズが外れる。内側およびプリズムの接眼部分をレンズクリーナーで磨く。このとき、AE連動糸に触らないように充分注意すること。

■プリズムの取り外し

本来はミラーボックス部をボディ部から取り外すのが正式な分解方法らしい。しかし、グッタペルカを剥がしたり、リード線の半田付けを外す必要があり、かなり大掛かりになるので今回はパス。フレキ基板の下から無理矢理引っこ抜く方法を取った。
  1. 前述の方法で接眼レンズ(アイピース)を取り外す。
  2. プリズムの両側にあるプリズム抑えのバネをラジペンなどで取り外す。
  3. 金属カバー、白プラカバーの順に取り去る。
  4. プリズムを引っ張り出す。
今回は、このプリズムのスクリーン側の部分に大きな目立つカビがあったので、レンズクリーナーで掃除した。また、プリズムの下にさらにレンズのようなものが一枚入っていて、その下がスクリーンになっているようだ。したがって、この部分を分解しないと、スクリーンの内側のゴミは取れない。だが、今回は敢えてそこまで分解しなかった。プリズムの掃除だけでもかなり奇麗になったし、手探り状態だからステップ・バイ・ステップで行きましょう。

■組立時の注意

最初の難関はプリズムの組み立て直し。プリズム抑えは、アイピース部と前面のプリズム横にフックがある。さらに、金属カバーにフックが付いているので、この三点を引っ掛ける。丸まっている部分がアイピース側になるようにする。と、書くと簡単そうだが、これは非常に面倒な作業になるので注意。忍耐力が必要。

また、速度ダイヤルのはめ込みにも注意。速度ダイヤルの裏には、速度設定の出っ張り(内側)と感度設定の出っ張り(外側)があり、はまり込む円板のくぼみと位置がずれている。推奨値のASA400-Bの場合、まず外側の切り込み位置を合わせて、反時計回りに半周ぐらいさせると、正しい位置で内側もはまり込む。

■AE連動糸の修理

けっこう注意はしていたのだが、やっぱりAE連動糸を切ってしまった(>_<) 速度ダイヤル側の糸車の付け根の部分が切れてしまったので、先端に結び玉を作り、糸車の切り込みに引っ掛けて瞬間接着剤で固定した。これ自体はまあ何とかなったんだが、当然糸の長さは若干短くなる。この「若干」がクセモノで、短くなった糸の長さは1cm足らずだと思うのだが、露出段数で4、5段狂ってしまったから始末に悪い。

結局、切れた糸は取り去って、木綿糸でつなぐ事にした。もちろん、強度が心配ではあるが、購入したテグスは太すぎて扱いにくかったため。とりあえず、木綿糸でも支障なく使えている。なお、右手側のプーリーに糸を固定するときは、瞬間接着剤を使わざるをえないのだが、このとき、プーリーに厚みができてしまうと、速度ダイヤルの動きが悪くなるので注意。

糸の長さは根元から根元までで20cm(正確な数字ではない)。左手側のプーリーから順に、いったんプーリーに付いているネジにタスキ掛けにしたあと、切り欠きから溝に導いて反時計回りに一周させる。で、アイピース周りから左手側のプーリーに導く。

問題は、糸の長さが正確でないと露出がズレること。しかも、糸を正確な長さにするのはけっこう難しい。そこで、誤差分を糸の掛け方を変える事で調整する。たとえば、短くなった分をかせぐために、ネジのタスキ掛けをせずに、いきなり切り欠きから溝に導いたり、長い分を調節するために、ネジに二度巻くなどする。

露出の目安としては、ASA400-B時に左手側のプーリー上のネジが3時くらいの位置になるようにする。なお、露出計のチェックの際は、必ずトップカバーを被せること。トップカバーが開いていると、どこからかCdSに光が入り込んで、露出値が数段狂う。

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