(2003.10.03/2021.06.26)

金魚の飼い方

金魚を飼い始めるきっかけが「夜店の金魚すくい」という人は多いと思います。しかし、夜店金魚を生き延びさせるのは至難の技と言われています。でも、和金は生命力の強い生き物ですから、きちんとした環境を作ってやればけっこう生き延びます。ポイントは最初の一晩、ここをいかに上手く越えるかでしょう。では、夜店で金魚をすくって家に持ち帰ったところから始めましょう。

●応急措置――水の用意

まず、塩素の入っていない水が必要です。塩素中和剤(コントラクロライン等)を使って作ってください。手許になければ、すぐにペットショップかホームセンターに走って買って来ます。

夜でお店が閉まっていた場合は、緊急措置としてペットボトル水を5リットルほど使います。これならばコンビニなどで入手できるでしょう。ミネラル分が多い水は金魚には良くないので、ミネラルウォーターではなく、所謂「天然水」が良いでしょう。ウチでは最初、賞味期限切れの保存用ペットボトル天然水を使いました。

この際、温度合せに注意してください。冷蔵庫のペットボトル水をそのまま使うと、金魚が心臓麻痺で死んでしまいます。水の一部を鍋で加熱して適当に混ぜて、金魚が入っている袋とほぼ同じ温度に調節します。温度調節は指を突っ込んでだいたい同じに感じれば問題ないでしょう。

もし、塩素中和剤もない、ペットボトル水も惜しい、と言うとことになると、ほとんどの場合、金魚は一晩で死にます。

●応急措置――水槽の用意

水槽も、きちんとしたものがあれば良いのですが、ない場合はバケツを使います。大きめの洗面器でもよいでしょう。ともかく、なるべく口が広く、5リットル以上入る容器を使って下さい。これも一晩の緊急措置用です。

このバケツにさきほど用意した水を入れます。そして、金魚の袋の中の水と温度が極端に違わないことを確認した上で、金魚を放します。このとき、なるべく袋の中の水は使わないで下さい。アミがないと金魚だけ移すのは難しいのですが、病原菌などが入っている可能性が低くないからです。が、上手くできなけば、袋の水ごとざぁっと入れちゃっても良いでしょう。どうせ一晩用です。

●応急措置――その他

エアーポンプがあれば理想的ですが、金魚3〜5匹程度なら、ポンプなしでも一晩はもつと思います。ただし、エアーポンプも濾過器もない状態では、餌は決してやらないでください。水を腐らせるか否かが生死の分かれ目になるからです。 また、金魚が弱っているような場合、食塩を加えてやるとよいでしょう。消毒や体力回復の効果があります。目安は、水1リットルにつき小さじ1杯(5g)。やけに多いようですが、金魚に害はありません。 また、金魚は実は暗いところ好みます。外敵から隠れられる場所に居ると落着くようです。新聞紙などで、容器の口を半分覆ってやるとよいでしょう(全部は覆わないように)。

●飼育環境の整備

一晩明けたらすぐにペットショップに走ってください。生き物の命にかかわることです、会社に行ってる場合じゃありません(^_^) このとき最低限必要なのは、

  水槽 金魚の大きさや数に合せて
濾過器・エアーポンプ ポンプ、チューブ、濾過器のセット
塩素中和剤 液体タイプが使いやすい(コントラクロライン)
すくいアミ はじめは小さいものでよい
金魚餌 金魚の大きさに合せて、異なるタイプを二種類くらい

これだけあれば、ある程度継続的に飼育できます。また、余裕があれば水槽の底に敷く石や温度計、水草、水槽用ブラシ、スポイド、水の汲み出し用ポンプ、などもあるとよいでしょう。

水槽選びで問題なのは、まず、家の中における物かどうかでしょう。大きければ大きいほど金魚にはよいのですが、日本の住宅事情では難しいところがあります。ちょっと贅沢を言うと、45cm水槽(だいたい20リットル程度入る)で3〜5匹が目安になります。少し大き過ぎるように感じると思いますが、金魚はすぐに成長しますし、物凄い勢いで水を汚す魚なのです。

しかし、最初はやはり10リットル程度の小さな水槽から始めた方がよいと思います。小さな水槽でも濾過器などがきちんと機能していれば、けっこうな数の金魚を飼育可能です。水替えや水槽掃除は頻繁にしなくてはなりませんが、逆に水替えや掃除の練習になります。水替えや掃除は小さな水槽の方が圧倒的に楽――と言うか、大水槽は物凄く面倒なのです。

なお、掃除しやすさで言うと、プラスチック水槽よりもガラス水槽の方が楽です。多少重くて高価ですが、それなりの価値はあります。プラスチックは曇りますし、アオコがきれいに取れません。

●餌はやりすぎない

餌は量が問題です。食べきれないほど与えると水を腐らせてしまい、文字通り生死にかかわります。最初少しパラパラとまくと、金魚は必死になって餌を食べるはずです。で、食べおわったら、また少しパラパラ…というのを繰り返すと、そのうち餌に対する反応が少し鈍くなります。そこがリミットです。通常はそれよりも少な目に与えてください。

また、金魚は悪食で何でも食べますが、けっこう好みはあるようです。餌は複数の種類を買ってきて、食いの様子を見ながらメイン餌を決めましょう。なお、小さな金魚には必ず小粒の餌を買ってやってください。大き過ぎると食べられないだけでなく、残った餌が水を腐らせる原因になります。そういう点では、食べ残しを掬える浮く餌の方が良いのですが、どうも金魚は浮き餌よりも沈む餌の方を好むようです。

●最大の敵は腐った水――バクテリア濾過のウソ

水の中にバクテリアが発生すると、金魚の排泄物(フン)を分解してくれるので、水を綺麗に保つことができます。ですから、水替えの際も全部の水を変えない、また、濾過器のフィルターを水道水(塩素水)では洗わない――というようなことが、金魚の飼育書には書かれています。

が、初心者はこれを信じてはいけません。水の判断が着くようになるのには、けっこう経験(しかも悲しい経験)が必要です。初心者がこれを信じると、ほとんどの場合、水を腐らせて金魚を苦しませ死なせてしまいます。少なくとも、水の良し悪しの区別がつくまでは、水は全部変える、フィルターは水道水で洗う、を実践してください。ドロドロのフィルターや水槽の底の汚泥は水を腐らせる原因です。

確かに、この方法ですと、金魚に掛かる負担は大きいのですが、水を腐らせるのに比べればずっとマシです。バクテリア濾過云々は、水の良し悪し、金魚の体調などが一目で判るようになってから考えましょう。初心者は、まず何よりも水を腐らせない事、腐った水を使わない事、水を腐らせる原因を残さない事、を肝に銘じてください。バクテリア濾過を信じて、何匹も死なせてしまった私が言うのだから間違いありません。

●水替えは週イチがノルマ

では、水替えはどの程度の頻度で行えばよいのでしょうか? 飼育環境によるのですが、まず週に一度は変えてやってください。最悪でも二週間に一度。これよりサボると金魚は病気になります。なお、濾過器なしの場合は三日に一度は必要です。具体的には次のようにします。

バケツに水を汲んで塩素を中和し、温度を確認してから、水槽の金魚をアミで掬ってバケツに移します。そして、水槽の水をすべて捨て、中をよく洗い新しい水を入れます。そして塩素中和剤を入れてよくかき回します。さらに濾過器のフィルターを取り出して、水道水でよく洗い、元に戻します。バケツと水槽の水温差が小さい事を確認した上で、金魚を元に戻します。なお、「よく洗う」と言っても、洗剤は使わないでね(^_^;

●あとは小まめに世話をする

金魚を長生きさせる秘訣は、金魚に興味を持ち続けることです。餌やり、水替えを怠るのは言語道断です。どんなに忙しくても、一日に一度は様子を見てやりましょう。そのうちに、金魚の体調やご機嫌がわかるようになります。水の状態もわかるようになったら、上手にバクテリア濾過を試みてください。水の全交換は、歳を取って弱った金魚にはかなり辛いもののようですから…。

金魚の本当の最大の敵は、飼い主が飽きて世話をしなくなること。生き物は責任持って飼いましょう! 


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