†貧乏カメラ館・でじたる別館†
CAMEDIA C-990ZS |
★★★★発売年月 2001.03/店頭価格 ¥4.5万〜 カメラらしさにこだわったデジカメ |
C-900Zに始まるシリーズの五代目。5代ものあいだ外装の変更がなかった、超定番カメラ。発売当時はそれを揶揄する声も多かったが、現在から見ればそうした批判に意味はない。他機種のような小型化や高画素数化は、すぐに別の機種に追い抜かれてしまい、その機種固有の意義を失っている。しかし、この些かどん臭い定番機は、まさにその個性故に現在も存在感を示し続けている。それに、一般ユーザーは1台買えば数年間はそれで済ますわけで、3年間に4回のモデルチェンジに新味があろうとなかろうと、ほとんど意味はない。気にするのは新製品が出る度にチェックをしなくてはならないライターくらい。
ただし、それでは5代の間に進歩や変化がなかったかと言うと、そんなことは全くなく、実は機種ごとにかなり大きく機能が変更されている(別項参照)。その中で、最も完成度が高いのがこのC-990ZS。逆に、最もお薦めできないのが、最も数が出たであろうC-960Z。
ただし、個人的にはシリアル転送はありがたい。なにせ、数少ないUSBポートを塞がないから(^_^; USBハブを置くスペースもないからね〜。RS-232Cなんて今日び他に使い途ないから、ケーブルも接続しっぱなしでいいし、Web用のVGA画像を数枚吸い上げる程度なら速度も気にならないし、案外便利なのであった。
ストロボも同じく。使いもしないストロボのチャージはすべきではない。デジカメは電圧降下に弱く、僅かの無駄遣いがけっこう大きな影響を与える。無駄チャージ厳禁。そもそもストロボ撮影なんてのは、ユーザーが明確な意志を持って行うべきもので、オートで勝手に光られては迷惑千万。それに、開放F値がF2.8で、感度が400まであるんだから、光学ファインダーを覗いてきちんと構えれば、室内ノンストロボ撮影だって、けっこう手ぶれはしないものだ。蛍光灯二本の和室でも1/25"〜1/50"くらいで切れる。
レックビューがないのも高評価(液晶オンでの撮影の時はあり)。確かに、ビギナーのうちはレックビューがないと不安になるが、慣れてくるとむしろ煩わしく感じる。1カット撮る度にチェックしていては、撮影に集中できなくなるのだ。無論、オン/オフを選択できれば言うことはないが、なくても全然困らない。撮影結果の確認は、集中して何枚か撮った後に、まとめて行えば良い。もちろん|□|のダブルクリックで再生可能。バリアを閉じる必要はない。まあ、デジカメの操作にダブルクリックは少々問題だと以前から思ってはいるが。
もうひとつ大きな欠点は、撮影した画像の撮影情報が表示されない点。露出も感度も全然わからない。これはクラス不相応の手抜きだな。尤も、オリンパスのエントリーモデルは、撮影情報が表示される機種でも表示項目が非常に少ない。感度を確認するにもPC上に吸い上げてExifデータを表示する必要がある。そんなレベルの撮影情報なら、むしろ不要か。カメラ上で撮影情報の確認が必要なユーザーは、C4桁機を買えということか。
実はこのC-900シリーズのポジションって、けっこう微妙。モデルによっては10万近い店頭価格だったものもあるようだが、990ZSの店頭価格は4.5万くらいからスタート。しかも、その年の内に特売で1.5万で売られていたそうだ。C-100より安い店もあったそうな(u_u;) モデルごとにグレードの差があるわけでもないので、実際は「新モデル=値下げ」ということになる。基本は中級機のままで、値段だけ廉価機帯に下がってしまったため、性格付けがすごく曖昧になっている。
設定保持機能はあるが、液晶オン設定は保持されない。バッファメモリを備えているため、書き込みはそこそこ高速。HQ(500KB弱)のデータの書 き込みも、それほどイラ付かない。むしろ、表示速度に難がある。低温ポリシリコン液晶は非常に綺麗。C-2020Zの低ポリよりもずっと鮮やか(…でもないかな?)。つ〜か、 実際の撮影結果よりも奇麗に写るのは反則だろう(^^;また、露出がアンダーめのようだ。PCで見るには、+0.5evくらい補正した方がよい。
ちなみに、このC-990ZSにもマクロの裏技(?)が存在する。まあ、「裏技」と言うほど凄いものではないが、望遠端から少し広角側に戻ったところに、 近接撮影のスイートスポットがあるのだ。これはどうやら、オリンパスのデジカメに共通の特徴らしい。ここをうまく見つけ出せば、被写体に10センチ程度のところまで寄れて、画面縦いっぱいが4cmくらいになる。目安としては、望遠端から小刻みに4〜5回戻したあたりかな。
![]() | ![]() | ![]() |
ワイド端最近接 | スイートスポット最近接 | テレ端最近接 |
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なお、このころのオリンパスのデジカメは、実際にはシームレスマクロ機能を持っている ような気がする。ノーマルモードのままでもマクロモードと同じ距離まで近接できることがある。ただし、かなり慎重にピントを探る必要があり、合焦の速度や精度ではマクロモードに及ばない。おそらく、この「マクロモード」は合焦範囲を限定しているだけで、光学系自体が変化する−−たとえば、マクロレンズが入るとか、レンズが前に繰り出すとか−−のではないと思う。
端的に言って、この設定ホールドは、《露出補正とISO感度》を保持するためのもののようだ。実際には、それ以外にもホールドされる項目はあるが、そして画質やホワイトバランスのようにクリア設定でも保持される項目もあるが、要するに露出補正とISO感度の保持が、ホールドの存在意義のような気がする。しかし、これは多少微妙だろう。個人的には、感度はホールドして欲しいが、露出補正はクリアして欲しい。C-3030Zあたりからは項目別のホールドが可能になったが、クラスを考えると、納得せざるをえないか。
ちなみに、現時点でアルカリ電池(Maxell Dynamic;20本800円)を二箇月間入れっぱなしにしているが、未だにグリーンマーク。その間の撮影枚数は20枚ほど。何でもないことのように思えるかもしれないが、実はこれはかなり凄いこと。自然放電や設定保持電流の消費程度ではビクともしていない。果たして何箇月持つのか、興味津々。
…で、結局、九箇月で電池切れになった。現実的にはアルカリで半年、数十枚といったところか。終端電圧は1.2vで、これはPowerShot A460やXacti S5のような長寿命機でもダメ。つまり、デジカメとしてはきっちり使い切っている。しかし、長寿命4本機のC-120ならば、赤マークながら撮影可能だった。このあたりがミソかな。もちろん、1.2vあればラジオや懐中電灯は十分使用可能。う〜む。ちなみに、一番電力を消費したのは、起動時のストロボ強制無駄チャージと思われる。…内蔵ストロボなんて、この世の中からなくなればいいのに。
※
個人的にはかなり気に入っている機種だ。「カメラ」へのこだわりには強く共感する。しかし、価格と機能と大きさのバランスがものすごく悪い。初代のC-900Zはミドルクラス機だったので、この大きさでも何ら問題はなかった。しかし、C-990ZSのころには価格的にエントリークラスになってしまっている。ビギナーターゲットのエントリーモデルとしてはどう考えても大きすぎる。せめて、もう二周りは小さくないと受け入れられないだろう。機能的にもエントリーモデルとしては豊富過ぎる。真のエントリー機は、むしろ細かい設定ができてはいけないのである。無論、そんなことはオリンパスも百も承知で、C-990ZSと同時期に単三2本の小型エントリー機C-1を出している。ズーム付きのC-1Zは三箇月後だが、ほぼ同時期と見て良いだろう。C-1の系譜は名機C-2、μ廉価版X-200、ローエンド機FE-110につながっていく、エントリーモデルのメインストリームとなる。結果論ではなく、この時期既に単三モデルは2本機が主流になることは明らかだった。そういう時代状況の中で、あえてC-990ZSを世に問うたのはなぜなのだろう?
一つは、電池寿命の問題があったように思う。当時既に各社から三洋のDSC-X100/SX150系の単三2本機が発売されていたが、その電池寿命は悲惨なレベルで、とうてい実用的とは言いかねた。メーカーの良識として単三4本機はなくせなかったのかも知れない。実際、C-1Zと同時期に、単三4本の新シリーズC-200Zも出ている。しかし、三箇月後にC-200Zが出るのなら、やはりC-990ZSを出す必然性が理解できない。
まあ、販売戦略と言うのは理詰めのスペック議論とは別次元の話ではあるが−−たとえば、旧モデルの化粧直しでもよいので時期的にどうしても新モデルが必要だったとか、パーツの在庫を掃き出すためとか、実際のところは、そんなところなのかも知れないが、何となく作り手の愛着のようなものも感じてしまう。つまり、名作C-900シリーズを、低ポリなしのC-990Zで終らせたくない、どうしても完成形態のモデルを作って終えたい、と。まあ、些か感傷的に過ぎるが(^^;少なくともユーザー側から見ると、C-990Zで終るかC-990ZSで終るかで、シリーズ全体の印象がかなり異なる。