スイス・山岳鉄道編
Jungfraujoch. 2000/06/08

 
 写真は、本当にたくさん撮りました。でも、写真って、巨大な光景の感動を伝えるのにはあまりにも無力ですね。僕がここに来て、自然のすごさを感じて写した写真は、約40枚あります。でも、どれ一つとして、目の前で見た感動を伝える写真はありません。あれだけのすごく巨大な光景を、たった数センチ四方の写真に押し込めてしまうなんて、やっぱり無理な話ですね。ずっと写真を撮りながら、「この感動を伝えることの出来る写真を撮るというのは、絶対に無理だろうな」と撮りながら思っていました。


クライネシャイデック駅で見た、除雪車 顔が書いてあっておちゃめですね
また、この季節外に出しているということは、わざわざ展示しているようで、なかなかおちゃめですね

 ユングフラウヨッホ行きの山岳鉄道には、クライネシャイデックで乗り換えです。乗り換える駅での気温は26℃。そして、山頂付近の気温は3℃。なんとその鉄道は、20℃以上もの気温差を体感できるという山岳列車でした。はじめは広大な景色を楽しめるのですが、途中からはずっとトンネルの中を列車がすすんでゆきます。山をくりぬいて鉄道をひいてあるのですが、山はとても固い岩山です。スイスのこの観光山岳列車は、かなりの苦労をして作られたものなのでしょう。

 また、山頂から帰ってくる列車は、けっこう人がたくさん乗っていて、みな一様に車窓が曇っていました。普通なら窓なんてこの季節(6月)曇らないところですが、それだけ標高の違いによって外気温が下がるということでしょう。実際、途中休憩する駅があったのですが、だんだんと山頂に近づくにつれて寒さがひどくなってきました。また、列車に飛び乗ってみたら、ちょこっと飛んだだけなのに2分間くらい息が苦しくて、空気の薄さも体験してしまいました。この鉄道に乗る予定の人は、服装などにはご用心です。


クライネシャイデック駅 ここには日本人の女性の方が働いておられました
僕ははじめ電車の時刻を英語で聞いたのですが、日本なまりの英語で気がつきました(笑)

 山頂駅は、標高3454mのユングフラウヨッホ駅。ほとんど富士山並ですね。富士山に登ったことのある人は、気温差と空気の薄さがわかってもらえると思います。また、それだけの高さまで岩盤をくりぬいてまでして山岳観光列車を通しているという技術は、本当にすごいですね。ちなみにトンネルに入れば窓は閉めてください。急激な温度変化でかなり寒くなるのは当然ですが、手を出したりしたらすぐに岩にあたって手がなくなってしまいます。それだけ、列車ぎりぎりのトンネルの大きさなのです。窓からほんの数十センチのところを大きな岩肌がすぎてゆくのですから、すぐにわかると思います。

 山頂駅到着は、もうすでに夕方5時をすぎていました。売店が開いている程度で、外に出ることも出来ませんでした。窓からは、大きな氷河が見え、「いっかいスキーで滑ってみたいものだ」とやっぱり思ってしまう僕でした(笑)


こんなところでスキーしてみたい。。。 大まわりなんかしてみたら、脳味噌がとろけてしまうだろうなぁー

 山頂駅では、とりあえずビールを一本飲みました。空気が薄いと、酔いのまわりが早い感じがしました。寒いけれども、ちょっとだけ外に少しでてみたいと思っていたのですが、どうやら、外に行く扉がすべて締め切りがしてあって、外にはまったく出ることが出来ないようでした。たぶん出ることが出来なかったのは、夕方に着いてしまったからでしょう。頂上駅まで来て、建物の部屋の中からしか景色を見ることが出来ないなんて、ちょっぴりあじけないものでした。外に出て、せめて風と雪に触れることくらいは体験したかったものです。また、氷の洞窟にも入ることが出来なくて、なんとなく手持ちぶさたのまますごしていました。結局、山頂駅には30分程度いたのでしょうか。ちょっとがっかりしたまま、折り返す電車に乗って来た道を戻ってゆくことになりました。。。

 でも、ほんとうに景色はすごくよかったです。また、この日一日、ほとんど雲もなく、天気に思いっきり恵まれて、最終日としては、最高のコンディションだったと思います。途中の景色も、また、野原一面に咲きみだれる小さな草花も、そしてカランコロンと大きな首の鈴をならして草をはむ山羊たちも、こころから僕は楽しむことが出来ました。僕は、窓から流れる景色をずっと見ながら、「天国って、こういうところなんじゃないかな」と思っていました。親切な人たち、すばらしい景色と自然の偉大な光景、そして時の流れの悠久さ。そんなものをすべてこころで感じながら、ほんとうにこころが幸せで満たされてゆくような気がしていました。


写真では写らなかったけれども、小さなとてもきれいな色とりどりの花が咲いていました
この向こうでは山羊が草をはんでいました

 ここに来る途中、再会した母娘さんたちと別れましたが、同じ方向に行かなくて正解だったと思います。これは悪い意味ではなくて、自然と景色をこころに感じるためには、一人でいてよかったと思うのです。気の置けない人ならともかく、やっぱりこういうときは一人で静かに景色を楽しみ、自然を感じ、こころを全開にして、自然からなにかを感じるという事が出来るというのは、やっぱり一人旅ならではですね。また、自然が語りかけてくるという事も、やっぱり一人でないとなかなかわからないものです。自然とこころがとけ込む一瞬を、誰にも邪魔されないためにも、一人でいてよかったとこころから思ったのでした。


すっかり夕方に近づいてきました 太陽の光の筋で、太陽の傾きがわかってもらえると思います
20時頃 グリンデルワルド付近にて

 そろそろ、今回の旅の終わりが近づいてきました。でももう、このころになると旅の終わりのもの悲しさというものは感じなくなってきました。これは開き直りというものではないのです。あきらめの境地というものでもないのです。それは後に書くとして、書いておくこともだんだんと少なくなってきました。もうそろそろ最終日に向けての締めくくりに入りたいとおもいます。

 

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2000年8月15日アップ