旅の終わり

旅の終わりはあっけなくやってきました。でも、すべての出来事は、今でも心の中で生き続けています。

 
 ユングフラウヨッホからホテルに戻ったのは、夕方21時頃でした。夕食をとらずにいたので、とりあえずインターラーケンで泊まっているホテルで食事をすることにしました。席は、街の大通りに面した席を陣取り、夕暮れのインターラーケン(オスト)の街並みを眺めながらビールを飲み、食事をつまんでいました。 空は薄暗くなって、星がいくつか輝いているのが見えました。

 一夜明けたらついに帰途につかないといけない、たったひとりの最後の晩餐でした。たった一人でちょっとばかり寂しさを感じていたのはたしかですが、それよりも、時の流れをこころからじっと見つめていたという気持ちが大きかったです。また、今まで旅をしてきた充実感を感じて、とても穏やかな心境になっていたのです。

 翌日は朝7時の出発。スイスにいる残された時間は、ほとんどありません。僕は、食事をすませると、夕暮れの街を見るために、散歩に出かけました。ミラノから出発して一日中いろいろと見て回り、ここまでやってきた一日の疲れを背中に背負いながら、街に吹く風と、流れる時間と、暮れゆく街の風景を楽しむために、ゆっくりとゆっくりと目に映るものすべてをこころに焼き付けるような気持ちで、街の中を歩き続けていました。

 そして、街中が暗やみに包まれ、もう歩けないほどに疲れ切ってから、ようやくホテルに戻りました。すぐにシャワーをあび、翌日の身支度をすませてから、最後は途中で買ったビールでひとり無事に旅行を過ごせたことに乾杯をしました。そして身体の芯からの疲れを感じつつ、ベッドに横たわり、小説を読み始めれば、数行も読まないうちにあっけなく眠りについてしまいました。24時半頃でした。。。


夕暮れ迫るインターラーケンにて 川の水がとてもきれいだった

 翌日5時に起床。 すぐに、早朝の街を見るために散歩に出かけました。約1時間ほど散歩していました。風が心地よく、ふらふらと道に迷いそうになりながら歩き続けていました。そして6時半頃、ホテルでチェックアウトをすませ、駅へ向かいました。そして切符を購入。電車に乗り込みました。平日の朝のラッシュということもあってか、人はちょっと多かったです。車内では、すぐに猛烈な睡魔におそわれ、よく眠りました。景色を楽しもうと思って、眠気覚ましに車内サービスのコーヒーを飲んだのですが、それでも飲んだらすぐに寝てしまうという有様でした。。。

 空港にはかなり早い時間に到着。席の確保は、一番くつろぐことの出来る、窓側でフライトアテンダントの前の席を希望し、見事ゲット!! このために早く来たのでした。これで帰りの飛行機の中は、トイレに行くにも気をつかわず、足を延ばして、景色も楽しんで帰ることができます(ずっと寝てしまうことになりましたが) そして空港で時間をつぶして、帰国のための飛行機に乗り込みました。その時はもう寂しさはまったく感じてはいず、反対に「またいつの日にか機会を作って、ぜったいここにまた来てやる!」とこころに誓っていました。そして離陸したあと、僕はチューリッヒの街を窓から見ながら、「楽しかったよー、また来るよー!」って心の中で叫んでいました。。。


スイス・チューリッヒ上空より 「ばいばーい! いつかきっとまたくるからねーっ!!」

 

終わり

 


 

おまけ 旅を振り返って・・・

 

 ここまで読んでいただいて、ありがとうございます&ほんとうにご苦労様でした(笑) 読むのもたいへんだったかもしれませんが、やっぱり作るのも大変だったです。写真も250枚以上の中から、紹介しておきたいものだけをチョイスし、できるかぎり画像でページが重くならないように、画質を必要最小限まで落としておくという作業があったため、旅行記すべてのアップまで2ヶ月以上かかってしまいました。また、写真をたくさん使っているために、アイコンや壁紙は全部おなじものを使いました。

 でも、ほんとうにスイスやフランス、イタリアを旅行して来てよかったと思います。はじめはまったく行く気にもなれずに、タダでもらったチケットを売り払うことばっかり考えていた僕だったのですが、こんなにたくさんの想い出が出来てしまうなんて、夢にも思わなかったことでした。日本を出発するときの精神的な疲れもいつしか、旅行中にはどこかに消えてなくなってしまっていました。また、旅行中は反対に、毎日毎日疲れ切った自分の身体を、好奇心が無理矢理に引きずりたおして、ひたすら歩き続けていたようなものでした。


こころからくつろぎの時を感じた、Chur(クール)の街の朝


 出発した日は6月1日、帰国した日は6月10日で、約10日間の日程でした。帰国した日はすこし疲れもありましたが、その夜すぐに、どうしても行きたかったホタルを見に行っていました。われながらじっとしていない性格です(笑)

 また、その翌日は、スイス行きのチケットをもらった大会に参加しました。その大会の開会式に、行ってきた感想をみんなの前で一言いうことになったのですが、そんなの一言ですむわけないです。だから仕方なく、「スイスは最高でした!」と、ほんとうに一言だけ言いました(笑) その場にいた人は、気の抜けた表情をしていましたし、僕の師匠からは「なんだ、それだけか?」と突っ込まれてしまいました。もし、2時間くらい話させてもらえるなら、具体的にどうよかったのかを話させてもらったところです(笑)


 帰国翌日  2000年6月11日(日)の大会の記念写真撮影風景

 

 でも、今回の旅行で、僕は神さまの存在を信じるようになりました。偶然とか、たまたまとか、そんなことがあまりにもいろいろ重なり続けていたりすると、やっぱり何か感じてしまいますね。また、あのグリンデルワルドからユングフラウヨッホの大自然の圧倒的な景色を見せつけられたりすると、あまりの自然の迫力に、こころがものすごくふるえてしまいました。正直言いますが、あまりの景色のすごさや、その場のエネルギーのすごさに、僕はなぜか涙が出たこともたびたびありました。僕はだんだんと、たぶんここにも自然の神様が住んでいるんだろうなぁ。。。という気持ちにもなってしまいました。

 


ユングフラウヨッホに向かう車窓から あまりにも雄大な景色に心が真っ白に

 また、ユングフラウヨッホへ向かう途中で、とてもきれいなお花畑を見たときには、天国って、こういうところなんじゃないかと思ってしまいました。人はほんとうに親切で、心のあたたかさを感じる土地柄で、自然もすばらしく、景色も最高だし、こういうところにずっと住んでいたって苦にはならないんじゃないかと思ってしまいました。ほんとうにここは心がよろこぶ場所、っていう感じでした。

   
とってもかわいいスモールカー 左はスイス・ツェルマットの電気自動車 右はイタリア・ミラノでのショット


 ところで、今回の旅行のスイス往復チケットをゲットした最後の大会は、僕は3位から1位に上がるという、実は逆転優勝だったのです。また、実はその大会の前日から僕は優勝するんじゃないかという予感(いわゆる第六感です)はしていました。大会では2本滑るのですが、1本目でよいポイント
(注:自分のタイムの100分の1秒の桁の数字がポイントになる、実力ではないポイントレースです)を稼ぐことが出来なかった僕は、1本目を終わった時点で、もう誰からも優勝するなんて言われなくなりました。でも、2本目でボーナスポイントがついてしまって、ほかの人たちはポイントがふるわず、逆転してしまいました。


ルーブル美術館 スイスでさえも全然行く気がしなかった僕なのに、フランスにも行ってしまうとは。。。

 その2本目を滑るとき、スタート台に立って、僕は空を見上げていました。どんよりとした曇りの天気だったのですが、空はなぜか静かに僕を見ていてくれているような気がしました。そして、全力で滑り、ふたを開けてみれば逆転1位で、スイス行きが決定してしまっていました。優勝が決まったことがわかった瞬間は、スイス行きの切符をもらうことが出来てうれしかったということは全くなく、前日からの予感があたったことのほうの驚きのほうが実は大きく、ぼう然としてしまいました。。。


ほんまかいな(・・;)


 はじめのほうにも書きましたが、僕の師匠からは、スイスに行くことが決まったときに、
イタリア・ミラノとフランス・パリに行くように言われ続けていました。はじめは、まったくその気もなく、予定もしていなかったのに、偶然にも、スイスに行って来たばっかりの僕の知り合いがいて、そのいとこさんがフランスのパリでデザイナーをしていて、そのデザイナーさんを知り合いから紹介してもらうことによって、フランス行きが決定してしまったのです。


また、ミラノに行ったのは、自分でも全くの予想外でした。。。 目的がなかったのが一番困ったことでした(笑) 写真はミラノ駅です


 さらに、スイスでは、機械屋さんの都合や天気の影響で、必然とミラノに行ってしまったという、偶然にしてはできすぎたような師匠の指示(暗示?)でした。すべて自分の意志だったけれども、振り返ってみると、なぜか
敷かれたレールの上を走っているような感じでした。


国によって車窓から見える風景は全然違ってきます (ミラノ駅周辺 車内から窓越しに写す)

 でも、今回の旅行の話を聞いていちばん自分のことのようによろこんでくれた人は、実は僕の師匠さんでした。250枚もの写真を見ながら、僕の解説を聞いてほんとうにうれしそうに話を聞いてくれました。また、いった先の事は、僕よりも詳しいことが多く、大変驚いたものです。

 そして師匠さんは、すべての写真を見終わってから僕に向かって、「出来れば君は今回の旅行のことに関して、きちんと記録にしておいた方がいい。それは、この先、きっと役に立つ事になるだろうから。めんどくさいかもしれないけれども、将来へのために、自分の記録のために、きちんとした記録を残しておきなさい。」と、アドバイスをしてくれました。

 そして、その言葉を聞いて、この今回の旅行エッセイができあがることになったのです。できれば、自分だけ読むものではでなく、エッセイとして人の役に立つことが出来るかなと思ったからです。もし読んでくれた人が、このエッセイを旅行の参考にしてくれたら、ほんとうにうれしいことです。

 

 なんだかんだといろいろありましたが、すべての結果を見て見れば、一人旅にしては、無駄のない、かなりいい旅行になったと思います。わからないときは、ふと知り合った人たちがいろいろと教えてくれたり、間一髪でいろいろな人に助けられたこともありました。下調べを一切していなかったのに、すんなりと思ったところに迷わずいけたことや、ミスしたことも、よいものに変えられたこともありました。そうやって思い起こしてゆくと、なんていい旅行だったのかと思ってしまいます。

 また、この旅行をこんなにもよい想い出にしてくれた、僕の師匠さん、そしてデザイナーさんを紹介してくれた僕の友人、デザイナーさんとその友人さんたち。さらに、クビにせずに休みをくれた社長(親父なんだけど)。そして、旅先で知り合ったたくさんの人たち。そして、僕をスイスに連れて行ってくれた大自然の神様、そして母、そしてスキーというスポーツに、こころからお礼を言いたいです。ほんとうに感謝しています。

 この旅行の10日間は、本当に夢のような10日間でした。またこれから精一杯頑張って、また旅をしてみたいです。

 Thank you for your reading !

 

 

 

2000年8月15日アップ

 
誤字・脱字を発見した人は、教えてもらえるとたいへんうれしいです
感想文なんてもらったりすると、かなりうれしいものがあります(笑)