スイス・インターラーケンへ
From Millano to Interlaken 2000/06/08



 6月8日朝6時起床。この日はミラノからグリンデルワルドに行く日。ミラノのホテルを出たのが朝の7時だった。朝一番の風はやっぱり気持ちいい。でも気持ちいいと感じるのは旅行くらいかもしれない。日本じゃありきたりの一日というのに、海外では新鮮な朝と感じてしまうのは、やっぱり心境の違いだろう(笑) でも、この日のたった一日だけ、ものすごく一日の内容が濃い一日で、どこまで書けばいいのか、本当に難しい一日になったのです。

 駅で案内所を探して、そこで案内係にグリンデルワルドに行きたいと告げると、すぐに最適なルートを教えてくれました。その列車はなんと、イタリアを出発して、スイス、フランスを経由し、最終目的地はドイツのブリュッセルという、なんと四カ国も体験できる列車だったのです。その列車は、客車を機関車で引っ張ってゆくというもので、国境線手前の駅で、次の国の機関車につなげ変えて、客車だけがたくさんの国境線を越えてゆくという、大変興味深い国際列車でした。


スキーバックを引きずっての移動 機関車はボロでも色使いがヨーロッパチックかな(笑)

 その電車に乗ったのが朝8時くらいでしょうか。今度はまた、イタリアからスイスへの国境線越えです。車内で今回は、スイス入国のチェック。今回の入国審査もほとんどノーチェックみたいで、国境を越えることがこんなに手続きのいらないものなのか、拍子抜けしてしまうくらいでした。とりあえず、パスポートさえ持っていれば、ヨーロッパでは何にも問題がないような感じでした(ビザもいらないし) この日はまた奮発して一等車。ゆったりとのんびりと景色を楽しめました。途中、スイスの交通の要所・Brig(ブリーグ)駅(ツェルマット行き等の経由点)と経由して、Spitz(スピッツ)駅でインターラーケン行きの列車に乗り換え。インターラーケンまでは特急で一駅、約20分程度。そこからグリンデルワルド行きの列車があり、グリンデルワルドからは、念願(謎)の高山列車となります。そして、その終点のクライネ・シャイデッグからは、ユングラフヨッホという山頂へと行く登山列車になります(乗り換えだらけ)

スイスのハイテク公衆電話のご説明 やっぱり色使いがおしゃれですね

スイスの公衆電話ボックス なんと、この公衆電話は、E-mailが送れてしまうという。。。 でも、受信は出来ないのです

 実は途中、Spitz(スピッツ)駅でスカートをはいているおじいさん(老夫婦)に出逢いました。おじいさんがスカートをはいているからって、化粧をして女装しているあやしい趣味のおじさんじゃなくて、それはそれは色鮮やかなスイスの民族衣装でした。でも、もし、そんな民族衣装があると知らなかったら、きっとふつうは面食らうでしょう。僕もガイドブックでちらりと読んだだけだったのですが、目の前で本当に見ることが出来るなんて、大変驚いたものです。

 そして僕はすかさずカメラを取り出し、そのおじいさんに「写真を撮らせてください」と頼んでみました。そうしたらラッキーなことに、そのおじいさんはにっこり笑って「いいよ」と一つ返事で許可をくれました。でも、横にいたおばあさんがすぐに、「ごめんだけれど、写真は撮らないで」と僕に言ったのです。そうするとおじいさんは「なぜだ」という感じでおばあさんに少し怒ったように言っていました。けれどもおばあさんは僕にまた「ごめんなさいね、写真は撮らないで」とさらに言いました。どうやらおばあさんは、おじいさんの民族衣装であるスカート姿をあまりいいものとは思っていなかったのでしょう。でもおじいさんはその民族衣装をとても気に入っている様子でした。そして、おじいさんとおばあさんがけんかしそうな雲行きだったので、僕はすぐに「残念ですけれど、わかりました。」と言って立ち去りました。 


ピンクの囲いが、フランスもイタリアでもあった普通のICカード式電話機 コインは、使えるものが本当に少ない
ブルーの囲いは、E-mail用端末 書いたあと電話機にカードを差し込まないとメールを送れない
配列がJIS規格の日本のキーボードの配置と微妙に違う また、ドイツ語やフランス語のような言語でしかないような文字も。。。

 で、インターラーケンに12時半頃(?)到着。早速、ホテル案内板とにらめっこでした。もう、だいぶ慣れたもので、あっというまにホテルの予約が取れました。で、ホテルについて、早速昼食を取りました。すると、Chur(クール)駅で見かけた親子連れが僕のテーブルの斜め前にいたのです。何という運命のいたずらでしょうか。それはほんとうに不思議な感じでした。早速、どういった旅行をしているのか聞きに行って、いろいろなお互いの情報交換などをして、別れました。


これは、ICカードタイプのテレホンカードで10スイスフラン これがないとE-mailが送れない
ちなみに、E-mailを一通送信するのに1.5スイスフラン(約100円)かかる ちょっと高くて利用しにくいかも

 別れてから、僕はすぐに高山列車に乗るために駅に行き、電車に乗り込みました。もう、帰国まで24時間を切っていたので、一瞬一秒が惜しくて、なるだけはやく見てまわれるものすべてを見てまわりたかったのです。正直言って、残された時間を感じていて、かなりあせっていたのは確かです。でも、そういったときに限ってミスを犯してしまうのです。で、一瞬一秒を大切にするために急いで飛び乗った電車は、なんと目的地と反対行きの特急列車だったのです。。。

 正直言って、その列車の中では僕はものすごく落ち込み、また、旅行疲れもたまっていたのか、一人ものすごくイライラしてしまいました。特急なので、20分間は止まらずに、次の駅(もと来たSpitzという駅)まで、ものすごいスピードでかっ飛ばしてゆくのです。その次の停車駅までの20分が長いこと長いこと。ひとり、電車の中で脱力感と虚無感とイライラを感じでいました。

 また、折り返した駅(Spitz)では、特急はすぐには来なくて、一番はやく戻るための電車は、なんと、よりによって鈍行しか来ない状態だったのです。その列車で戻るには、その駅から40分位かかるということもわかり、待ち時間を合わせて、まるまる1時間を自分のちょっとしたミスで無駄にしてしまうことになったのです。こころはあせるばかりで、でも電車はなかなか来ない(定刻なんだけど) 自分のミスに一人イライライライラして、気持ちはふさいで、待っている間もものすごく無性に腹が立って仕方がなかったのです。


Spitz(スピッツ)駅前より 湖面にボートがたくさん浮かんでいて、とてもきれいなところでした

 でも、折り返した駅で乗った鈍行列車の中、イライラするこころに変化がありました。流れてゆく車窓からの景色を見ていると、あまりの景色のすばらしさに、なんとなくこころが溶かされていったのでしょうか。ふと、せっかくの旅行でこんなにイライラしていては、元も子もないじゃないかと思い始めたのです。もともと自分のミスだし、こんな事でこの旅行の大切な一瞬をイヤなものにしておくだなんて、本末転倒で、ものすごくもったいないような気がしてきたのです。確かに、残された時間を無駄にしたような感じで、自分のした失敗にはものすごくむなしさを感じてしまう。けれども、それよりももっと大切なことは、このことを逆に良いものに変えてゆけば、この旅行はさらにすばらしいものになるのではないか、と考え直すようになったのです。そう考えると、自分のこころが、なぜか晴れわたってくるような気がしてきたのです。

 

 そうしたら、ふと停車した駅で、なんともタイミング良く、大きなわんちゃんと快活そうな男の子が電車に元気良く乗ってきたのです。それも、その車両以外には人が乗ってきていないのに、わざわざ僕のいる車両だけやってきたのです。乗ってきた瞬間、こころを切り替えることのできた僕に、なにかプレゼントが降ってきたかのような気持ちになって、その子供の楽しそうな様子を、僕はほのぼのとした気持ちで見ていました。

 そして、記念になるかなと思って、その子供さんのおかあさんに写真を撮らせて欲しいと頼み、ワンちゃんとそのかわいい子供の写真撮らせてもらいました。子供さんは、照れたように僕を見つめて、なにかドイツ語で話をしていましたが、残念だったけど何を言っていたのかはわからなかったです。でも、なぜか気持ちを切り替えたすぐ後での出来事で、なにかさらにこころがあらわれたような気持ちになってしまいました。

 僕は、その時ふと、僕が電車に乗り間違えたのは、たぶんいままでずっと何かこころの忘れ物をしてきたからではないかと思ったのです。そして、電車でまた来た道を戻って無駄な時間をつぶしたのですが、無駄な時間をつぶしたのではなく、大切なことを思い出させるのにこの出来事が必要だったような、そんな気持ちになったのです。貴重な時間を失ったのは痛かったけれども、それよりも、僕は目的地とは反対方向の電車に乗って、どこかに置き忘れていた大切なこころの忘れ物を取りにかえってきた、そんな気持ちになれたのです。電車に乗り間違えてよかったことだったのかもしれないという気持ちになっていたのです。。。

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2000年8月15日アップ