出逢いと読書

 

 本なんて何がおもしろいんだろうと思う人も多い世の中、本を読む人間にとっては、本は、はまるとやめられないくらいにおもしろいものですね。本は、僕にとって、人生のいちばん大きな出逢いです。自分で言うのもおかしいけれど、僕はもともとおもっきり馬鹿な奴だとおもう。性格もろくなものじゃないし、勉強もさっぱりだめ。何とか、本を読んでいたおかげで、今までやってこれたと思う。ほんとに

 いま、部屋に読みかけや読む予定の本や雑誌が、10冊くらい転がっている。また、車の中まで本が転がっている。いつも持ち歩かなくても、持って出かけられるようにとの配慮からである。いつも、仕事の時の昼食に出かけるときも、本は持っていく。わずかな時間でも、ぼんやりと過ごすくらいだったら本を読んでいたいから。ここまで来ると、活字マニアと思われそうだけれど、読む暇がないから無理矢理、少しの時間を利用して読んでいるのである。車の中にある本もそう。渋滞したときにすかさず出してきて読むのである。あまりこれは自慢できる話ではないけれど。そういえば、バイクのヘルメットをいれるところにも、本が入っていたっけ

 本を読んで何がおもしろいのか、と思う人もいるだろうと思う。どうおもしろいのかは、人それぞれのとらえ方によって違うので何とも言えない。でも、本というのは、知識を吸収したりすることや、人の生き方や考え方を吸収したりする事ができるんですね。たとえ友人がたくさんいなくても、本を読むことで、作者が色々自分に意見を語りかけてくれたりするし、見たこともなければ聞いたこともない、想像をはるかに超えたいろいろな世界のこと、世間のことを教えてくれます。

 それよりもいちばんいいのは、小説などを読んだときには、主人公の人生をずっと見続けていけるところがいいですね。歴史上の人物さえも、身近に感じることができたりもするし、有名な人も「人の子なんだ」と人間くささを感じることができるし。何人もの人の生き様を知ることもできるし。人間は、人生一度きりだけれど、本を読むことによって、何度も違う人生を経験させてくれる事にもなるんですね。本を読むことでたくさんの違う人生を経験することができるし、違う考え方やあたらしい発想などもとりいれられる。この効果は、本当にすごいと思う。

 また、本を読んでいてよかったと思うこともあります。前に、僕のスキーの先生である藤井さん(大阪府スキー連盟・全日本学生スキー連盟の顧問)と一緒にスキーに行った帰りの車の中で、昔の海軍の話が出ました。もともと、僕の先生は第2時世界大戦中、海軍のパイロットとして刻々とひどくなる戦況の中を生き抜いてこられた方なので、戦争のことがよく話に上がるのです。

 その時、「東郷元帥(日本海海戦の海軍総帥)を知っているか?」と聞かれて、東郷元帥の下に秋山と言う参謀(兄貴は騎馬隊でコサックといわれるロシアの騎馬隊と戦った)がいて、その参謀が優秀だったのと、ロシア艦隊の置かれた状況、天候や国際情勢も日本に有利な状況だったという、僕が知っている限りのことを少し話をすると、僕の先生はさらにいろいろなことを教えてくれました。僕の先生は子供の頃、東郷平八郎に頭をなでてもらった経験があるそうです。詳しいいきさつは、メモがないので忘れてしまったけれど、東郷元帥に頭をなでてもらったことを、とてもうれしそうに話しておられたのをおぼえています。僕は日本海海戦の話は、司馬遼太郎の小説で高校生の頃に読んでいました。結構おもしろい小説だったので、一気に読んでしまった記憶があります。この小説を読んでいたお陰で、先生との話も盛り上がり、東郷平八郎の話も聞けたのです。

 さらに、西武グループの総帥、堤義明さん(全日本スキー連盟会長)の話になったりした時も、僕は20歳になる前に堤義明さんに関して書いてある本を読んだ記憶があり(20歳になるまでビジネス書をたくさん読んでいた)、鉄道王と世界中から言われている人で、堤さんはコクド(旧国土建設)・プリンスホテルの総帥であり、寒冷地の高速道路の路面にロードヒーター(?いい方忘れた)が入っているのはコクドが作ったところ、兄がセゾングループの総帥で少し事業がつまずいていることなどを話したら、いろいろとおもしろい話がまた聞けました。

 堤義明さんに直接会ったことのある方だから、その話はリアリティがあります。書けない話もあるけど、問題のない話であれば、関西にある函館山スキー場は、堤義明さんがスキー場の責任者をだれそれに変えたとたんに、スキー場の質が変わって関西では人気のある素晴らしいスキー場になったこと。その人は今、どこの部署に移って今はどんな仕事をしているとか、新しい責任者は誰で、来シーズンはどういう施設が変更になるのかなど、たくさんの話を聞かせていただきました。(ここで現在オリンピック委員長である八木さんの話も出ました。大変な要職にあるので、今のところは八木さんの話は触れられないのです)また、もともと堤義明さんの出身は滋賀県で、近江鉄道(地元の人がガチャコン電車と言っていた記憶がある)に出資していることなども、僕も先生も知っていて話がまた盛り上がったりもしました。

 また、大阪の経済界にも詳しいようだったので、1989年にこの世を去った経営の神様、松下グループの総帥だった松下幸之助さんが、実際どういう人だったか知りたいというと、とあるエピソードを聞かせてもらったりもしました。

 松下幸之助さんが、ある松下グループの会社の社長を選ぶときに、上から番付で20番目くらいの山下さん(大今商業出身)という人を選んだという。この方は、とても人のいい方で、先生(藤井さん)とも結構仲が良かったそうです(山スキーをされていて、キリマンジャロやボスニアなどに行っていた。商工会議所などで一緒になったら、「藤井さん藤井さん」といってスキーの話をいつもしていたという)そして、この方(山下さん)と松下幸之助さんとの間のとある件に関して、おもしろい話も聞かせてもらえた。ひと昔、大阪府工業会の会長を選ぶときに、その時の三洋の社長(井植さん)が、松下幸之助さんに朝の5時頃に電話を入れたという。「松下から(大阪府工業会の)会長を出して欲しい」 それを受けた松下幸之助さんは、山下社長にすぐに(朝5時頃!!)電話を入れ「こういう話があるけれど、受けてみないか」と話し、朝6時半には三洋の社長に許諾の返事をしたという。(三洋と松下は創始者同士が親戚なので、つながりも深い)

 この件で、おもしろいのは、朝の5時に三洋の社長が松下幸之助さんの家に電話を入れたこと。普通なら、こんな時間に電話なんてしないと思うのが普通ですね。経営のトップクラスの人間は、たいていいつも夜は遅くなるものですから。そしてそれでも松下幸之助さんは早朝にもかかわらず、すぐに行動をした。さらに、この責任重大な件を、ほとんどたったの1時間くらいで決定して返事してしまっていること。すごい判断の速さもさることながら、朝早くの電話でさえも、いつでも誰でも対応できる体制にあることは、ほんとうにすごいですね。企業の意志決定が、いかにスムーズに行われているかがわかります。やっぱり、トップ企業のトップクラスの人たちはこういうことが当たり前なのかもしれないですね。そういう話を藤井さんは僕に話してくれました。

 話は読書からずれたけれど、本を読んでいることによって、こういう話も聞かせてもらえることもあります。こういうことがあると、たくさん本を読んでいてつくづくよかったなと思います

 

 

 また、エッセイ「サイクリスト」の学生さんとも話が結構盛り上がったのも、本を読んでいたお陰ですね。お互い、ニュートンという雑誌を読んでいるということで、なぜか親近感がわきましたから。アインシュタインの特殊相対性理論の話や遺伝子に関する話なんてのも、いろいろな本を読んでいたお陰です。いつもこういう堅苦しい本ばかり読んでいるわけではないけれど、必要に迫られたり、興味があるときは、僕は本をたくさん買ってきて読み漁ってしまいます。遺伝子関係の本は、母が病に伏せることになったとき、なんとか母を救える方法はないかと医学関係書を読み倒していたときに読んでいたためでした。このときは、仕事時間12時間、見舞い2時間、読書3時間という生活を毎日続けていたりもしました。何とかしたい一心で、本屋に通って買いまくっては医学書を調べ続けていた毎日でした。このときの本を読んでいた経験が、京都大学のサイクリストの学生と話をするときに役立ったのです。なんせ、彼の父親が知る人ぞ知る、四国にある国立大学の医学部でエイズウィルスの研究をされている博士であり、エイズウィルスの研究では世界的にも名が通っておられる方だから。そういったことを考えてゆくと、ほんと、本で得た知識がいつ役に立つのかわからないけれど、確実に自分の人生にはプラスになってくれているような気がします。

 

 

 長くなりました。最後に、僕は、今までに小説は1500冊以上は読んだと思います。すべてが頭に入っているわけではないけれど、かなり僕は本に影響されていると思うのです。だからか知らないけれど、こうやってエッセイも書いたりするのも好きだし、読むのも好きだし。また僕は、人のキラリと光る個性を見る(見抜く)のが好きなんですが、たぶん、人の個性を見抜こうとするクセは、本を読んでいて得たのかもしれません。

 個性のある人は、少なからず寂しがりやが多いのもわかります。個性的な人は、その個性が誰からも理解されずに、それでいて自分のその個性を守り、さらに上を目指して伸ばそうと努力するから。まわりからは理解してもらえなくても自分の意志を貫こうとするから、いわゆる、孤高という言葉がぴったり当てはまる人たちです。小説に描かれている主人公達は、みなそんな陰を持ちながら生きていた人ばかりでした。たとえ歴史に残らなくても、ほんとうに自分が目的を持ってやっていこうとする人は、みなそういった状況(人に理解してもらえない状況)に置かれてしまうようです。そこで負けてしまうか、孤高となってがんばれるかが、いちばんの大きな分かれ目になります。

 人は一人では生きてゆけない。でも、自分に夢や目標があるなら、一人でもすすんでゆかなければならない。そういったことを小説ではまざまざと見せてくれます。僕がそう出逢って感じた人が、僕の先生の藤井さんであり、サイクリストの学生さんであり、ヤマトスキーショップのおじさんであり、近いうちにエッセイで書く予定のスノーボーダーの方です。そういった人たちに出逢うことが、いちばん自分にとって、しあわせに感じる瞬間なんです。できれば、そのほんとうに偶然出逢うことのできた素晴らしい人たちを、これからもまたHPで紹介してゆきたいとおもっています。。。

 

こんな文字だらけの文章を読んでくれた方は、きっと読書好きでしょう(笑