再びシカゴへ・・・


9月5日

6時に起床してタバコを吸ったり地図を見たりしていた。妻も6時半過ぎに起きてきて、7時に本館の朝食コーナーへ。フロントの先にある広い会議室のような部屋に、これまた公民館や講堂にあるようなイスと長テーブルが10セットほど置かれていた。殺風景な食堂?だ。前日のホテルと同じようにパン、コーンフレークが数種類。それにコーヒー、牛乳、ジュース等の飲み物だけだった。さすがにこのメニューでは飽きるのも早い。食べ放題でも、ここぞとばかりになんて気は起きない。せめてオカズが2〜3品でもあってくれれば良いのだが・・・。食事中に昨日の豊満な女性が新聞を持ってきてくれた。すらすらとは読めないが写真も多いので一応目を通した。スポーツのトップはパッカーズGreenbay Packersだ。

部屋に戻り荷物整理をして8時過ぎにチェックアウト。フロントの豊満な女性が処理作業をしている時、私がカウンターにあったボールペンを手にとって見ていると、女性は「どうぞ・・・ミルウォーキーを思い出してね」と2本くれた。目付きはチョット怖いけど優しい人だったようだ。ボールペンはホテルのロゴ入りなので嬉しかった。

妻の運転で出発。昨日と同じように894号から乗ってもよかったが、27th通りを5Kmほど南下して、直接94号ハイウェイに乗る事にした。カレッジ通りCollege Av.を左折すると乗り口はすぐだが、すぐ東に大型の空港があるせいか、街外れの割に車の量は多めだ。でも、ハイウエイに乗った途端に交通量は少なくなった。地図で見ると94号はミルウォーキーからシカゴ、ゲーリーGaryの先あたりまで、ミシガン湖の西と南の湖岸沿いをすっぽり取り囲んで走っているが、この辺は湖からは5キロも内陸で、道路も高架ではないので湖は全く見えない。遠くに近くに大小の森が所々見えるくらいで、あとは田舎の風景が続く。

昔は女子野球のプロチームがあったというラシーンRacine、キノーシャKenoshaと言う町を過ぎると、あっという間にイリノイ州に入った。徐々に交通量は多くなってはきたが、まだまだ快適に走れている。あまりにも早く着き過ぎてしまいそうなので、どこか良い寄り道できる所はないかと、私は助手席で地図を見ながら探す。この辺りの情報はガイド本にも載ってないので、名前のイメージからレイクフォレストLake Forestと言う町に決めた。シカゴから北に40 Kmくらいの町だ。Exitに名前があったので妻に指示して一般道へ降りる。混雑してないので妻の運転もスムーズだ。細かい地図は持ってなかったが、ハイウェイを越えなければ大丈夫だろうと、適当に町を流す事にした。名前の通り緑の多い綺麗な町だ。所々で道は狭くなったりクネッたりしたが、対向車も殆ど来ないので危なくない。道沿いの家はみな庭が広くて、大きな木が何本も植えられていて、奥に綺麗で立派な家があるパターンばかり。別荘地のようにも感じられた。大きな看板に「○○ ○○ Club」と書いてある家があり、駐車場もあったので「一般の家ではないな」と思い中へ入ってみた。やはり庭が立派で、綺麗な花がたくさん咲いていた。建物は片面がガラス張りなので事務所のようだったが、誰もいなそうだったの、降りて庭で写真を撮ったりしていた。

その後はそこから少し東の方に車を走らせると農村や牧場などがあったが、湖畔には出られずハイウェイ方面に引き返す。降りた所より2〜3南の乗り口からシカゴ方面へ。都市部はかなり混雑しそうなので運転は私がする事に・・・

予想通り90号と合流する手前あたりからかなりの交通量になってきた。渋滞と言うほどではないが、逆にスピードがある程度出ているから恐怖感は強い。車間距離をあければすぐ横入りされるし、ストレスの続く運転だ。合流してから益々車は増える。景色も高いビルが多くなって来たので、妻に「まだかな?ちゃんと地図見ろよ!」と自然と口調も強めになってしまう。完全に市街地に入ってしまうとExitは番号じゃなくて、ストリート名だけになってしまうので、妻のナビもお手上げ状態になる。いっそノロノロ渋滞になってくれれば、ゆっくり確認する時間があるのだが、スピードは出ているので標識から出口までが短い。こちらもパニック寸前だったが、Exitの標識の中にOhio St.を発見。トーキョー・ホテルの前の道だ。「同じ名前の通りが何本かあるのか?」「勘違いではないか?」などと一瞬頭をよぎるが、4〜5車線の端から端まで一気に車線変更して出口へ。今まで車間距離を多めにとってたので、後続車はイラつき気味のようだったが、この早業にはビックリしただろう?強気になれば日本人の方がはるかに運転は上手いのだ。

降りてすぐにラサール通りLaSalle St.との交差点になったので、リーバーノース地区だと確信。一安心だが、ホテルの場所を確認するために道路沿いに車を停める。今度の宿はホージョー・インHojo Innだ。ラーサール通り沿いとの事だが、一通の関係で一回りしてホテルの横へ。車から降りてパーキング入口を確認してから車を中へ入れた。このホテルはラサール通り沿いの正面入口を挟むようにフロントとレストランがあり、駐車場を取り囲むように2階建ての客室棟が建っている。

フロント室のカウンターには東洋系の女性がいたので、予約している事を告げると、「ワン・サーティー」と言うので「中途半端なデポジットだなぁ」と思いながら小銭を出すと、彼女はゲラゲラ笑い出して「ワン・サーティーはチェックインの時間よ」と言った。そう言えば時計を指していたような気もする。ちょっと恥ずかしかったが、駐車場に車を停めておいても良いと言うことなので、荷物を車に置いたまま観光に行く事にした。高い塀に囲まれたホテル内の駐車場だから大丈夫だろう。

「あー、良かった、良かった。無事シカゴに帰って来れた。あとは帰る日に運転するだけだ!」と喜んで歩いていると、大事な事に気が付いた。私は靴に履き替えるのを忘れてビーチ・サンダルで歩いていたのだ。しかもそのビーサンはかなりボロだったので、行きの飛行機の中で履いて帰りは捨ててくるつもりだったのだが、ホテルの部屋や車中では楽なのでズーっと履いていたのだ。しかし、シカゴの街中で履くのはかなり抵抗が・・・

妻に言うと「なんだ、分かってて履いて来たのかと思った。良いじゃない高級な所に行く訳じゃないんだから」と履き替えに戻る申し立ては一蹴された。

まず向かったのはワバッシュ通りのジャズ・レコード・マートJazz Record Mart。ジャズやブルースの中古レコードやCDを豊富に扱っているとの事。入口には不良っぽい若者が数人たむろしていたが、私がつかつか歩いていくとサーっと道をあけてくれた。ビーサン効果か?店は広く品数がとても多そう。奥にはスタジオもあるようだ。それから盗難防止の為もあるだろうが、レジで大きな荷物は預かってくれるので、宿をチェックイン前(あるいはチェックアウト後)の観光客も身軽でレコード探しが出来るようだ。CDよりもレコードの方が圧倒的に多かったが、レコードはかさ張るので1枚だけにしてCDを3枚買った。店には30〜40分いただろうか。

それからハリー・ケリーの店で買い忘れていた似顔絵のパッチを買って昼食にする事にした。ハリー・ケリーの店はレストランなのでそこで食べても良かったが、そこから西に向かいウェルズ通りWells St.のフーターズHootersへ行った。この店はウェイトレスが若い健康的な女の子ばかりで、タンクトップにショートパンツという制服が人気らしい。全米に店舗を拡大中だそうだ。ガイド本を見て行こうと思っていたが、妻には店に入るまでその事は内緒にしていた。店に入ると早速そのオネーちゃん達が店内を飛びまわっていた。テーブルに案内され後ろについて行くが、尻が半分見えそうだ。席に着くと妻が不安そうに「男の人が来る店なんじゃないの?」と聞いてきた。見回すと確かに男性客が圧倒的に多かったが、私達の他にカップルも2組ほどいた。(後から家族連れも来ました)

名物のチキンとサンドイッチ、それとビールを飲んだ。隣りのテーブルの禿のオッサンが誕生日の歌を歌ってもらったので、ウェイトレスの全員集合を近くで見る事ができたが、7〜8人のうち半分は、看板に違わぬプロポーション、美しさだったが、後はまあ平均的、中には「面接してるのかよ?」と思う人もいた。それでも値段が安いから文句ではないのだが。

店を出て50〜60メートルほど歩いたあたりで、後から女性の声がした。さっきの店のウェイトレスがハリー・ケリーの袋を持って走って向かってくる。私が椅子の上に忘れてきた物だ。「サンキュー」とお礼を言ったが、そんな格好で街中を走らせてしまって申し訳なかった。店に戻る彼女のうしろ姿を見送りながら「いい子だなぁ」と言うと、妻は「君はチップはずんだからねぇ〜」と笑っていた。

ホテルに戻りチェックイン。私達のすぐ前で日本人の老夫婦もカウンターで手続をしていた。空港から着いたばかりらしい。私が車に置いてあった大きなバッグを部屋へ運んでいると、さっきの老夫婦の奥さんが「大変な荷物ね、新婚旅行?」と尋ねてきた。「そうです」と返事はしたが、「全部こっちで買った荷物だよ」とは言わなかった。

再び買い物に出かけたが、少し酔っていたので、またもビーサンで出てしまった。2日目に行った本屋で来年のシカゴのカレンダーと野球関連の本を3冊買う。日曜のミシガン通りはかなりの人出だった。たった今結婚式を挙げてきたような新郎新婦がウォーター・タワー前に現れ、花婿が花嫁を抱きかかえ、道端の牛の置物に乗せようとするが、彼女が重いのか?男の力が足りないのか?なかなか牛の背に上がれない。家族らしき人が写真を撮ろうと待っているのだが、何回やってもダメだった。たぶん私達が同じ事をやっても無理だったろう・・・

その後、土産が足りてないので、デパートに行こうとも思ったが、さすがに短パンにビーサンでは気が引ける。ガイド本を見て検討してジョン・ハンコック・センターの展望台に行く事にした。(こちらもビーサンで行く所ではありません)

100階建ての黒いビルは2本のアンテナが特徴的で、二日目に船でミシガン湖へ出たときも、遠くからビル群を眺めても一目でわかる存在感だった。入口にあまり人が居なかったので、ここで良いのか分かり難かったが、チケット売場では日本語で「ようこそチカゴへ」と言われた。料金は$8.5だ。そこから少し離れたエレベーター前では数人が並んでいたが、全く待たずに次のエレベーターで一気に94階の展望台まで昇れた。上には程々の客が居たが、混んではいないので全方向から好きなだけシカゴの風景を楽しめた。一番の眺めはやはりミシガン湖だが、近代的なビル群の中にポツンと見えるトーキョー・ホテルもなかなか味があった。ホージョー・インは2階建てなのでさすがに見えなかった。それからこの展望室には窓拭きのシチュエーションで写真を撮れるコーナーもあった。

一通り見て下に降りると、エレベーターの昇り口の方はさっきよりも多くの人が待っていた。やはりこれからの夜景が目当ての人は多いようだ。でも、夕暮れ時のシカゴも美しかったので満足だ。辺りはまだ明るさが残っていたが、時間は8時近くになっていた。急いでホテルに戻り、ちょっと着替えをして再び出かけた。もちろん靴も履き替えた。今夜は野球は観にいかないで、ブルースを聴きに行くのだ。

その昔、ミシシッピー・デルタ地域の黒人達が、シカゴに移り住んできた時に持ち込んだ南部の音楽が、大都会シカゴで洗練されシカゴ・ブルースが生まれたと言う。本場シカゴのブルースを一度は聴かなくては帰れないと言う事で、ブルー・シカゴ・オン・クラークBlue Chicago on Clarkへ向かった。名前の通りクラーク通りにあるのでホテルからも近い。開演は午後9時とのことなので間に合いそうだ。と思っていたが、店に着いたら既に満杯だった。同じ通りの2ブロック北にある本店(ブルー・シカゴ)が休日なのも影響してるだろうが、明日が祝日(労働者の日Labor Day 9月の第1月曜)で街に人が多く出ているのが最大の原因だろう。なんとか二人分のチャージを払って中に入れてもらい、遅い客は立ち見が当然と言う中、偶々席を立つ客がいたので、幸運にもカウンターに座る事が出来た。「飲み物は?」と聞かれたので、壁に貼ってあるパブストのステッカーを指し、ミルウォーキーで飲みそこなったパブスト・ビールPabst Beerを頼んだ。ビールはすぐ出てきたが勘定はすぐその場でとなる。グラスは無く、小ビンをラッパ飲みする。実にシンプルだが美味い。

店内は早くも熱気で溢れていた。ほどなく今日の出演歌手シャーリー・ジョンソンShirley Johnsonが紹介され、演奏がはじまった。ステージのすぐ前は立ち見客で溢れており、カウンターはそこよりも後なので、ステージはあまりよく見えなかったが、音は十分聞こえているので、一杯飲みながら本場のブルースを堪能する事ができた。普段はあまり聴く事が無いジャンルだが、曲によって、或いはギターのフレーズによってはR&Bやロカビリーの要素も強く感じられた。私は以前、その手のバンドをやっていた事があるので、二日目に行ったジャズの店よりも親近感があり、数倍楽しめた。店全体が盛り上がっていたせいもあるだろうが、私も妻も自然にノルことが出来た。なによりも雰囲気が「これがシカゴだ!」と思わせてしまう何かがあった。う〜ん、ラジカセがあったらその場で録音したいくらいだった。

1時間ほどで終わり、店を出た。ツマミ無しでビールしか飲んでなかったので腹がへった。すぐ前にあるロックンロール・マクドナルドRock’nRoll McDonaldへ行くことに。外壁にはプレスリーやジェームス・ディーンなどが描かれていて、店内にも写真やギターなどの展示物がたくさんあった。椅子やカウンターも50年代をイメージした造りになっていたが、客は普通のマクドナルドと特に変わった様子も無く食事をしていたので、写真を撮るのは遠慮した。メニューも何の変哲も無い物で、それを食べて店を出た。12時近かったがハデハデ地帯の一角なので、とても明るい。

ホテルへの道も通行人が適当にいたので怖さは全く無かった。シャワーを浴びて午前1時に就寝。



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