9 月 6 日 

 National League

CHICAGO CUBS VS CINCINNATI REDS

シカゴ・カブス VS シンシナティ・レッズ

Wrigley Field    Chicago ,IL


夜中に起きてタバコを吸いながら、窓の外を眺めてみた。ホテルの裏の通りは裏通りと呼ぶのがピッタリだったが、昨日までのホテルとは違い「街だなぁー」と思った。旅行もあと2日だ。 7時40分、目覚まし時計に起こされる。朝食のサービスは無いので、部屋でバナナとマックポテトの残りを食べた.今日も朝から良い天気だ。どうやら予定していた全ての観戦を無事に果たせそうだ。私達は憧れのリグレー・フィールドの前で、結婚報告ハガキ用の写真を撮ろうと思っていたので、シカゴを代表する2球団のユニホームをそれぞれ着込んで(夫-Wソックス、妻-カブス)、少し早いがホテルを出発した。午前9時。

レッドラインのシカゴ駅の入り口には5分ほどで着いた。階段で地下に降り、カードで自動改札を通る。反対から来た人波に付いて行き別の階段で地上に・・・?んっ。なんてドジだ。Lの出口は改札を通らないため、降りてきた人達の後をついて来て、外に出てしまったのだ。$1.50(二人で$3)の損をしたが、もう一度改札を通り乗り場へ・・・。ホームには余り人気は無かったが、こちらに来て数日が経っていたので、私も妻もそれほどビクビクする事は無かった。危険な目に遇わない要素として「慣れた振る舞い」と言うのは大事だと本に書いてあった。なかなか出来ない事なのだろうが、呑気過ぎるのはダメだが、必要以上に怖がるのもダメだと言うのが良く分かった。 間もなくして電車が入ってきた。しかしA、Bどちらの路線か分からず、乗っていた人に聞いてみるが「ハワード、ハワード」と行き先を言うだけなので、取り合えずこの電車はやり過ごす。次の電車も分からなかったのだが、そんな事ばかりもしてはいられないので、「間違っても良いや」と乗ることに。ガイド本によると球場のあるアディソンAddison駅は「B又はABの電車しか停まらない」と書いてあったが、ダウンタウンで地下を走ってる路線なら「問題ない」とも書かれている。無事に着いたから良かったが今でも釈然としない。日本語も分からなくなったか・・・。

アディソン駅は高架に在り、静かで明るい感じだった。ダウンタウンからは20分位だったか。すぐ下を通っているアディソン通りから目の前に見える球場まではカブスのグッズを売っている店が何軒もあった。店先には目玉商品が割安で飾られているが、中に入るとそれほど安くはない。球場に着き一番先に目に付いたのはハリー・ケリー氏の銅像だった。マイクを持って踊りだしそうなポーズ。こちらまで楽しくなってくる。その前ではカブスのユニホームを着た5〜6人の楽団が演奏していた。曲名は分からないがモダンジャスだろう。皆かなりの年輩だ。祝日だからかもしれないが、試合開始まで3時間以上あるのに球場の周りは結構な人出だ。(混雑と言うほどではないです)。

私は一番近くのチケット売場で「ウィルコールですが」と言うと、「Gの窓口で10時半からです」と言われた。Gの窓口のある正面入口に言ってみると、当日券を買い求める人達が並んでいた(他の窓口)。まだ時間ではないのでGの窓口は閉まっていた。時間まで20分位あるので一回りしてこようと歩き出すと、その小窓から声が・・・「ヘイ!ノートン、こっちへ来なさい」 あれっ良いのかなと思い、窓口の前に行き「ウィルコールお願いします」と言ってConfirmation Number(引き替えの確認番号)を書いた紙を渡たした。しかし声の主の中年の窓口係は「ノートン君、来るところ間違えてるよ」と言ってきた。確かに今日の私の格好はWソックスの31番グレッグ・ノートンのユニホームだ。彼は尚も続けた「君の球場はもっと向こうの方だよ。シカゴでも外れの田舎の方だ」と笑っている。チケットを渡してくれそうもないので、少し離れた所にいた妻を呼び、「彼女はカブスです」とウッドのユニホームを着ている妻の胸の熊のマークを指すと、彼は「オー彼女はOK。ようこそリグレー・フィールドへ!でも、君はダメだ。」と・・・。仕方ないので私はユニホームを脱いだ。すると彼はようやく番号の紙を手にとってチケットを確認し、大声で私の名前を読み上げた。私が「そうです」と言うと、笑いながら日本語で「ドーモアリガトゴザイマチタ」と言ってチケットを渡してくれた。妻は大笑いしてその様子を写真に撮っていた。確かに面白い思い出だが、その場はマジで弱った。でも彼の様子からすると、同じシカゴのチームでも余計にライバル心と言うか、敵対するようなところも結構あるのかなと思った。

私の使ったウィルコールWill Callと言う方法は海外からチケットの予約をするのには一般的だそうです。チームによっては当日券でも十分ですが、カブスのような人気チームはしていった方が良いと思います。私は6月に予約しましたが、それでも席のレベルは3(1〜5)しか取れませんでした。当日券ではもっと下のレベルだったでしょう。インターネットで簡単に出来ますが、入力画面は5分経過すると無効になるので(チームによると思います)、記入事項(クレジットカードの番号、住所など)は予めローマ字でメモしておいたり、英語の達者な人にやって貰うのが良いでしょう。無事チケットを入手した私達は食事をするために、辺りの散策に向かった。  

クラーク通り(正面入口でアディソンと交差)を南に向かうと両脇に飲食店が並んでいる(半分以上閉まっていたが)。開いているのはハンバーガー屋とコーヒーショップくらいだったがシェフィールド通りSheffield Av.と交差したところに「Noodle」と言うネオン看板を発見。一緒にラーメンの絵看板もあった。日本食は飛行機で食べたきりだったので迷わず入ることにした。店内はラーメン食堂と言った感じで、7〜8卓あるテーブルもまあ綺麗だった。調理場も見えるところに在り、中近東系のコックさんが炒め物を作っていた。日本人っぽいウェイトレスに「日本人ですか?」と訊ねると彼女は「いいえ韓国人です」と言った。メニューにあったラーメンと焼ソバとタマネギ入りオムレツを頼んだ。焼ソバは「Yakisoba」と書かれていたが、ソース焼ソバではなく中華風だった。具沢山で味も良かった。ラーメンはまあアメリカでこの位なら上出来の部類でしょう。それからオムレツにはタダでライスが付いてきたが、このご飯が日本人にはチョット無理だった(想像してネ)。全部で9ドルと安かったが、ここの店はカードは使えないそうだ。

店を出てそのままシェフィールド通りで球場へ戻った(クラーク通りは斜めに通ってるので両方とも球場に面している)。途中には一般住宅も在ったが、なんと庭先でカブスのTシャツを売ってる家が2軒もあった。おそらく店で纏め買いしてきて幾らか上乗せして売ってるのだろう。まだ試合開始まで時間はあるが、球場周辺はダフ屋が多くなってきた。私達は数メートル歩く度に、声を掛けられた。グッズ売りの露店も開店準備をしていた。シェフィールド通りは球場のレフト後方を通ってるので、ソーサのホームランが飛んで来るので有名だが、露店が出るのも一番多い通りだ。私は商品の中にバンダナを見つけたので、値段を聞いてみた。$5だそうだ。ハンカチやバンダナ等は大量に買ってもかさ張らないので、お土産には良いのだが、シカゴ市内でも全く売られて無かった(結局他の店でも無く、旅行中ここだけでした)。店主に「何時までやってるの?」と訊いたら、試合終了から1時間くらいだそうだ。他の店も色々見たが、買い物は試合が終わってからする事にした(荷物になるから)。

クラーク通りに戻ると正面入口は大変賑わってきていた。さっきは気付かなかったが足元には過去の名選手や功労者のプレートが埋まっていた。勿論ハリー・ケリー氏のプレートも良い位置に在った。開始1時間前だが入場した。

通路はとても混雑していて、私達は先ず2階から見ることにした。ここもカウンティー・スタジアム程ではないが、スタンド裏はスロープが張り巡らされていた。スロープは緩やかなので、2階に上がるまで右に行って左に行って、縦に行ってと結構歩いた感じがした。通路からスタンドに出ると、本やテレビで何度も見た景色が飛び込んできた。外野席後方にはビルの間からミシガン湖も見える。此処から見るとソーサなら湖に放り込んでしまうのではと想像してしまうくらい近くに見える(ちょっとオーバーですが)。「本当に建物の上に座席が在るね」と妻が指を差す。球場に面している建物は、高さを計算したように皆同じ位の背丈だ。どのビルの屋上からもとても良く観戦できそうだ。すっかり名物になった外野席?だが、中には球場よりも値段の高い席もあるそうだ。

何人かの人に写真を撮って貰ったが、スコアボードを入れると逆光になる様だった。何人目かで頼んだ小柄なお爺さんに「絶対に逆光だよ。私は30年通ってるんだ」と言われた。リグレー・フィールドは開設以来ナイター設備の無い球場として有名だったが、1988年からナイターでも試合をするようになった。しかし、現在も地元住民の要望でデーゲームが中心に組まれている(ナイターは1割以下)。まあ、写真を撮る人は殆どが逆光になってしまうわけだが、もう一つデーゲームによる弊害に気付いた。この球場のスコアボードは球場同様とても古いデザインなのだが、此処で行われている試合を含め12カ所の他球場の途中経過が表示されている。しかもコミスキーパークのように「5-2」と言うだけではなく、1〜9回の得点表がそのまま表示されている。12カ所と言うのは24球団制の時代が長かった名残だろうが、ここでチョット考えてみて下さい。他の球場は圧倒的にナイターが多いのだ。当然デーゲームで途中経過を表示することは出来ない。点数表がギッシリ埋まる美しいスコアボードは滅多に見られない訳だ。スコアボードの上にはナショナル・リーグ全チームの三角フラッグがはためいていたが、3本あるポールで地区別に別けられ、上から現在の順位で掛けられている様だ。カブスは真ん中のポールの上から4番目だ。これは中地区の4位ということだ。

妻に2階席で待ってて貰い、私はレフト外野席に向かった。「Hey Hey」と書かれたポールを入れて写真を撮って貰うためだ。人混みの中をかなりの距離を走ったのでハアハア言いながら外野席入口のトンネルを潜ると「チケットを見せて」と係りの女性に言われた。私のチケットでは外野席には行けないようだ。「お願い!1分だけ」と言って許しを貰い、妻の居る2階席に手を振った。合図をしてお互いに中間点に向かった。「オーイ、此処だよ」迷路のようなスロープで妻を見つけ合流した。通路はすごい混雑になってきた。

1階のスタンドに出て、案内係に座席を聞いて自分たちの席に座った。今日は込んでるのでそれほど移動できないだろう。妻は隣に座っていた家族連れの奥さんと話をしていたので、私は売り子からビールを買って飲んでいた。プラスチックのコップにはリグレーフィールドの写真がプリントしてあった。しかし日陰に居ることもあり、ジーっとしていると寒くなってきた。妻にビールを渡すと「寒いからいらない」と言われた。他の球場ではナイターでも半袖で平気だったが、ミシガン湖から吹いてくる風のせいだろうかシカゴが一番寒かった。私たち以外の人でも半袖の人が圧倒的に多いが、中には準備良く上に羽織る物を持ってきている人も結構いた。

試合開始直前になり国歌斉唱の放送が流れると皆起立し始めた。男女一人づつの歌手が紹介されるが、私は彼等のことは知らないし、名前もよく聞き取れなかった。私達も一応立ち上がってアメリカ国歌を聞いていた。日本のプロ野球でも試合前に国歌を歌う事があるが、日本では起立しない人が結構いる。国歌(特に「君が代」)に付いては、人各々考えがあるだろうが、あまり深く考えず試合前の余興くらいに思って、全員が立ち上がって欲しいものだ。私達は日本でも絶対起立しますよ。勿論、試合前の球場が盛り上がって欲しいからですが。

試合は1回表にヤングDmitri Youngのタイムリーでレッズが先制したが、その裏カブスもグレースMark Graceの犠飛で追い付いた。そして1-1で向かえた3回裏、旅行中最高の場面が訪れる。2死走者無しでソーサが思い切り叩いた打球は、私達の目の前を緩やかな放物線を描きながらレフト場外に消えて言った。対空時間が長かったので(そう感じた)皆立ち上がって口々に「Go 〜!」と叫んでいた。そのくらい打った瞬間は微妙だったが(HRになるか)やはりレフトスタンドは狭いので、場外弾になってしまった。あっという間の出来事なのだが、打球を目で追ってる時はスローモーションの様だった。ソーサがベースを一周する間は当然スタンディングオベージョンである。私はその間トリハダがおさまらなかった。ソーサの打って走り出す時のジャンプや、胸を叩いて敬礼みたいなポーズをするのは有名だが、彼のベース一周もすごく特徴がある。2塁でも3塁でもそうなのだが、ベースを踏む前に歩幅が小刻みになる。なんか踏む足が合わないようなのだが、毎回そうなのでチョット可笑しい。

場外のスタンドのある建物に掲げてある57と言う数字も、すぐさま58に取り替えられた。次のソーサの打席は更に声援が大きくなったが、その後の2打席でソーサは連続三振だった。 試合はレッズが5回にヤングのホームランなどで5点をあげ逆転。

7th イニング・ストレッチの時はリグレー・フィールドで歌っていると言う感激が大きかった。どこの球場でも歌われているが、やはり本場と言えばここだろう。お土産のペナントに、この歌詞に出てくるピーナッツ&クラッカー・ジャックが描かれているのも頷ける。今旅行最後と言う事も手伝って感慨も一塩だった。気のせいかもしれないが客のノリも他とは違う。見た限りでは着席している者など皆無。Wソックスのユニホーム姿の不心得者が一人居るだけだ。

それが終わると帰る客も徐々に出はじめてきた。私達は空いた席を見つけては、少しずつ前の方へ移動する事にした。終了間際になると最前列から5列目くらいの所まで来ることが出来た。試合を近くで見る事より、自分達の写真を撮る為に、良い背景となりそうな場所を探した。そんな事をしていたら、偶々近くにいたカブスの帽子をかぶった日本人3人組と目が合った。「こんにちは」と挨拶すると、一人が話しかけてきた。聞けば私達と同じホージョー・インに宿泊しているそうで、私達がホテルから出かける時も部屋の窓から偶々見ていたそうだ。岐阜県から来た彼らはシカゴの前はアトランタ他でメジャー・リーグ観戦をしてきたそうで、マダックスの投球を近くで見て、感動した話をしてくれた。私も負けじとマイナーを含めたこれまでの観戦ルートを披露した。せっかく細かいところまで言葉が通じる相手なので、写真を撮るのを頼む事にした。彼らは3人とも本格的なカメラを持っていたので腕も心配なさそうだ。グランドとスコアボードをバックに何枚か撮ってもらい、その場は別れた。ホテルが一緒なので、また会えるだろうと思っていたが、結局彼等とはこの時だけになってしまった。

試合は6-3でレッズが勝った。勝ち投手グーズマンJuan Guzman 負けボウイMcah Bowie セーブ グレイブスDanny Graves  ソーサ3打数1安打1本塁打。グレース2打数1安打(以上カブス)、ラーキンBarry Larkin5打数1安打(レッズ)

私達は球場を出ると、すぐにレフト後方の露店へ向かった。目を付けておいたバンダナを20枚購入。1枚5ドルの物を交渉して4ドルにしてもらった。お土産はまだ足りてない。アディソン通りの店に片っ端から入り、安売りしている物を探す。Tシャツはカブスの名前が入っている物は最低でも8ドルだ。それを10枚程買い、帽子は1ドルの物を発見。カブス以外のチームの夏物だった。去年のプレーオフ記念の物も2ドルで売られていたので購入。妻は見て周るあいだにチャッカリ自分の物も買っていた。4〜5軒見た中で、安いお土産用と言う事なら、リグレービル・スポーツWrigleyVille Sportsと言う店が一番だった。

一時間ほど買い物に費やした後、球場周辺の混雑もだいぶ掃けてきたので、球場の前で写真を何枚か撮っていた。自分達も二人で撮ろうと思い、陽気なオジさん二人を捕まえて撮って貰おうとしたのだが・・・人選を誤った。彼等は相当酔っていたのだ。1枚撮ってもらって、私達が立ち去ろうとしたら「まだダメだ。もっと良い位置で撮ろう」と看板の正面に連れて行かれ、「看板を全部入れて撮ってやる」とカメラを持って道路の向うに行ってしまった。ガイド本にも「カメラなどは他人に預けない」と書いてあったので、ちょっと不安になる。

オジさんがOKと合図したので、走ってオジさんの元へ。どうやら泥棒ではなかったようだ。「俺たちも撮れ」と言うので、妻がオジさんと一緒に撮った。一応、お礼を言うと彼等はご機嫌で帰っていった。「あー良かった」とホッとしていると、カメラのフィルムが巻き上がる「ウィーン」と言う音がしている事に気付く。「あれっ?まだ残っているはずだぞ!」と思ったが、フィルムは終了してしまった。後日、現像してから分かったが、オジさんが何枚も撮ってしまっていたようだ。まともな写真もあったが、往来する車が邪魔になってるのや、私達が走っているところまで撮ってあった・・・

丁度、手持ちのフイルムも切れていたので、帰りに駅前のセブン・イレブンでフィルムを買った。日系人の家族経営という感じだったが、大量の小銭で支払いしたにも関わらず、嫌な顔一つせず対応してくれた。

レッド・ラインでダウンタウンに戻り、ホテルへ荷物を置いて、時間があったのでガソリンを入れに行く事に。レンタカーは満タン返しが基本だ。明日返す前でも良かったが、まだ外も明るかったので早め早めと言う事で。GSは2〜3本先の通りにあったが、街中なので敷地は狭い。名前もロックンロール・アモコRock&Roll Amoco「どこが?」変な名前だ。前回は給油に手間取ったが、今回は私が事務所の中へ行ってる間に、妻が隣りの人のを観察していたのでスムーズに出来た。ちなみに前回とは違うタイプのポンプだった。

ホテルに車を置きに戻り、まだ時間があるので2日目に行ったスポーツ・マートへ。すでにかなりの買い物をして来た訳だが、土産が足りてるかまだ心配だ。一人一人チェックするよりは、多くなっても買っておいた方が無難だ。それにしても・・・こんど旅行に来る時は「内緒で来よう!」と強く思った。スポーツ・マートでは値引きしてある物を中心に、ホワイトソックスの物も混ぜて買ったが、レジの合計額は予想した金額よりもかなり高かったので、伝票を確かめてみると、値引きが反映されてない事が分かった。すぐにクレームを言うと、レジの黒人女性は横柄な態度で処理をやり直した。しかも、新しい伝票をこちらに投げるように渡してきた。まったく!自分のミスだろうが!!

ホテルに戻ったのは7時半頃だったが、シカゴ最後の夜をどう過ごすか検討した結果、今夜もブルースを聴きに行こうと言う事になった。でも、昨日は途中で腹が減ったので、先に夕食を済ませる事にした。近くてメニューも簡単そうと言う事で、ウェルズ通りWells St.のエド・ディビヴィックスEd Debevic’sと言うダイナーへ。しかし、店に行ってみると順番待ちの列が出来ていた。10分ほど並んでようやく店内へ入るが、すぐにはテーブルには付けず、まだ待たされるようだった。「こりゃダメだよ。他へ行こう」と外へ出ようとすると、店員の一人(責任者っぽい)がやってきて「どうしたの?」と言うので、「時間があまり無いんだ」と言うと、カウンターでも良いならという事で、すぐに座らせてくれた。他の待っている客は殆どが家族連れなので、テーブル席を待っているのだろう。私達が先に座っても文句を言う人はいなかった。

流れているBGMは全てオールディーズ。私達の席のすぐ前では若いコックが、その曲にあわせて鼻歌を歌いながら料理を作っている。店内も50年代を意識して造られているそうだが、ロックンロール・マクドナルドよりも良い意味で地味で、ゆったりしている感じがした。早そうだと思って注文したハンバーガー・セットもすぐに出てきた。マクドナルドよりは多少は豪華に見える。勿論、それ以外のメニューもあったが、レストランと呼ぶには?が付きそうな店だった。店の一角(結構なスペース)にはオリジナル・グッスを売っていたので、帰り際にTシャツを買った。しかし、そのコーナー担当の女性店員の態度は悪かった。さっきのスポーツマートもそうだが、リグレー周辺の店でも同じような事があった。祝日に仕事をさせられて機嫌が悪い人が多いのか?はたまた今日は私にとって悪い日なのか・・・

ブルー・シカゴへ向かう途中で面白い物を見た。街角で暴走族?と警察が睨み合いをしていた。暴走族と言っても日本のそれとは大分違う。バイクはハーレーのチョッパーが10台程で、乗ってる人達も革ジャン、革パンやヒッピーみたいなスタイルなのだが、どう見ても30代後半〜40代。中には50代の人もいるのではないか?2人乗りの後ろには、黒い革のブラに下は革のショートパンツの女性もいたが、これまたオバさんっぽくて、警官に向かってお尻ペンペンの挑発的ポーズをしているが、全然セクシーには見えない。反対に10人ほどの警察官達はみな若くて真面目そうな感じ。族のオジさん達の方が余裕の表情をしていた。 どうなるのか見ていたかったが、開演時間が迫ってるので、その場を後にした。

ブルー・シカゴ本店Blue Chicagoはそこからすぐの場所で、8時50分に店に着いた。昨日行ったオン・クラークの方は今日は休みだ。レンガ造りの建物にはライトアップされた壁画が浮かび上がっていた。入口にいた係にチャージを払って店内へ。しかし、昨日とは違って全く混んでいない。入ってすぐのカウンター席も余裕で空いていた。テーブル席も半分くらいしか埋まってないので、ステージから一番近い席に二人だけで座る事が出来た。店員が注文を聞きに来たので、昨日と同じパブスト・ビールを頼んだ。持って来てもらうと当然チップを払わないとなので、2杯目からは自分でカウンターまで取りに行った。(そうしてる人が大半)

今日の出演者はエディー・ショー&ザ・ウルフギャングEddie Shaw & The Wolfgangと女性ボーカルはゾーラ・ヤングZora Youngだ。9月のプログラムを見ると、ゾーラの方は昨日のシャーリー・ジョンソンと同じく、週一くらいでこの店のステージを務めているようだが、ウルフギャングは今日だけの出演なのでラッキーだ。大ベテランのショーは60歳を超えているとの事だが、とてもそうは見えなかった。自分が歌わない時はテナー・サックスを吹いて、とてもパワフルなステージを見せてくれた。開演後でも客は増えているようで、昨日ほどではないが、立ち見もチラホラ出だした。日本人も何人か来ているようだ。私も時たま写真を撮っていたが、観客から一番カメラを向けられていたのは、ギターのヴァーン・ショーEddie Vaan Shaw Jr.。ショーの息子だがキャラは正反対。熱い父親に対して、常にクールな感じ。どことなくヴォイジャーのトゥボックに似ている(関係ないか・・・)

良い席で昨日以上に堪能する事ができ、来て正解だった。今まではブルース・ブラザースくらいでしか聴いた事がなかったが、スイート・ホーム・シカゴSweet Home Chicagoがこんなに感動できる歌だとは知らなかった。暫く耳から離れそうにない。

ステージ終了後にヴァーンがその場でCDの即売会を始めたので、買ってサインをして貰った。ウルフギャングとは別の自前の物で、自身も歌っているとの事。ショー(父)は終了直後に、ゾーラとちょっとした口論になり、すぐに店の外に出て行ってしまった。店ではブルー・シカゴのオリジナルTシャツも売っていて、5種類あるうち一番人気のデザインの物は売り切れていたので、店の壁画と同じ物を買った。それを持って、テーブルに座り知人と話をしていたゾーラにサインを求めると、今まで厳しい顔をしていた(さっきのショーとの喧嘩で)彼女は途端に笑顔になり応じてくれた。テーブルにはCDが積まれていたので、それも買ってサインして貰った。CDはブルー・シカゴを中心に活動している女性ボーカルのオムニバスだった。$17だったが、20ドル($10、$5×2枚)渡すと、「15ドルでいいわ」と5ドル返してきた。私が小銭であと2ドル渡すと、「オ〜、あんたは良い人だわ。お金にきれいな人は好きよ」のような事を言っていた。

外へ出ると、店の前でショーや他のメンバーが店のマネージャー(この人がシブい!)と話をしていた。ショーは大声で何か訴えているようだったが、顔は笑顔だった。私は少し離れた所にいたベース担当のラファイエット・ギルバートLafayatte”Shorty”Gilbertに話しかけた。「ステージ感動しました」と握手を求めると、照れたように「ありがとう」と応じてくれた。彼は足が悪く、ステージでも椅子に座ったままベースを弾いてる。歩く時は金属製の杖を片側だけ使っている。さっき買ったTシャツとヴァーンのCD(彼もベースで参加)にサインを求めたが、サインペンを渡してもなかなかキャップを外せないでいた。悪いのは足だけではないようだ。震える手でやっと「Shorty Bass」とだけ書いてくれた。楽器はあんなに上手に使いこなしているのに、名前を書くのが大変なんてちょっと不思議だった。

良い気分でホテルに戻ったのも束の間、荷物の整理が待っていた。持ってきたバッグを総動員しても収まりきるか?と思ったが、やはり幾つかは店で貰ったビニールの袋のままもって行く事になる。ビーサンはここでゴミ箱行きとなった。それにしてもデカバッグはパンパンだ。一人で持てるだろうか?(空港で計ったら19キロでした) シャワーを浴び、寝たのは1時になってしまった。

 


9 月 7日

6時20分に目覚ましが鳴り起床。荷物を車に積み込み、7時にチェックアウトした。早朝なので受付のオジさんは初めて見る顔だ。私の名前を正しく発音できない。笑った。

エイビス・レンタカーには2回曲がるだけなので間違う事も無く着いた。地下の駐車場で車を確認してもらい、エレベーターで1階の受け付けへ行くと、借りる時にいたオバちゃんがいた。「良いドライブだった?楽しめた?」と聞いてきたので、「とても楽しかったよ」と答えると、オバちゃんはニコニコ頷いた。

オヘア空港に向かう地下鉄ブルーラインの駅はエイビスの目の前だったが、荷物が重くて5メートル歩くのもしんどい。電車では立っていたが、荷物を下に降ろせるだけでも凄い楽だ。遠ざかるビル群を見ながら「いい街だったなぁ」と心から思った。

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