9 月 3 日 

Midwest League(A)

BELOIT SNAPPERS VS FORT WAYNE WIZARDS

ベロイト・スナッパーズ VS フォートウェーン・ウィーザーズ

Pohlman Field   Beloit , WI(ウィスコンシン州 ベロイト) 


どうも夜中に起きる癖が付いてしまったようで、この日も3時半頃目が覚めてしまい、しばらく眠れ無かった。でも此所の部屋は、扉では仕切られてはいないが2部屋に別れた造りになっていたので、ベッドとは別の部屋で電気を付けても、寝ている妻に気を使う心配は無かった。私は地図を見たりタバコを吸ったりして、また眠くなる迄の時間を過ごした。再び起きたのは8時頃だったが、妻は1時間も前からテレビを観ていたそうだ。顔を洗い軽く髪を整え、朝食を食べるため1階へ降りた。ロビーの横の食堂は15卓ほどのテーブルがあり、3組位の客が朝食を採っていた。簡素なバイキング形式で、お皿にハンバーグ、炒り卵、ハッシュドポテト、ベーコン等を取り、数種類のパンは自分でトースターで焼くようになっていた。私達がテーブルの前を通ると、客達は皆挨拶をしてくれた。特別な味はしなかったが久々の落ち着いた朝食だった。

9時半にチェックインを済ませ車に乗って出発。昨日は気付かなかったが、駐車場の花壇がとても綺麗だ。今日向かうベロイトBeloit は此処からは30Km弱で、1日分の距離としては旅行中1番短い。それにベロイトの地図は唯一貰えなかったので、もし泊まる処が見付からなかったら、もう一度此処まで戻っても良いなと思った。

ステート通りから90号線には、近いせいもあって簡単に乗ることが出来た。やはり都会の様に道路が複雑では無いので、一目で合流や分岐のポイントが判断できた。ハイウェイの運転は今日で3日目だが、今までの感じからするとアッと言う間にベロイトには着いてしまうだろう。ベロイトはウィスコンシン州なので、妻に地図を良く見ていて貰い、出来ればイリノイ州との州境(看板でもあるだろうと)で写真を撮ろうと考えていた。「ロックトンが出てきたぞ」「マダマダだよ」と言ったやり取りがしばらく続き、「あれ、今なんか大きな看板があったぞ」と私。しかし妻は「えーマダの筈だけど」と言ってたら、今度は「E Collay Rd」の看板。妻は「あーッもうウィスコンシンに入っちゃったみたいだネ」。慌てて車を路肩に止めたが時既に遅し。少し考えたが、何メートルも道路をバックして戻るほど重要な事でもないし、州境での記念撮影は2日後にイリノイ側に戻る時にしようと言うことになり、再び車を発進させた。イリノイ州側の最後の方に走ってきた場所は、自然公園の中だったが、ウィスコンシン州を走ってるんだと思うだけで、気のせいか自然が多くなった感じがする。しかし、そんな事を思うのもつかの間、ベロイトへの出口「Exit185 A」が見えてきた。1マイル以内に出口が数カ所ある場合は数字の後に「A」とか「B」と表示され区別されている。街に入ると大通りの両脇はG.Sやモーテルが立ち並んでいた。ロックフォードのステート通りを小ぢんまりさせた様な感じだった。今日はホテル探しに苦労しなくて済みそうだ。

まず球場を見てこようと、地図は無いが球団のHPに載っていた案内メモを取り出した。3つ目の信号を右折しクランストン通りCranston Rd. へ。少しクネクネしたが、綺麗な住宅街を1マイル程走ると ショッピアー通りShopiere Rdとの交差点 にぶつかった。「オー地図が無いのに順調に来てるね」と妻も嬉しそうだ。知らない街で自分で運転して目的地に行くと言うのは確かに大変な事だ。地図も標識も案内メモも当然日本語では無い。しかし、協力してそこに向かい、発見し到着した時は格別の満足感がある。私達の場合も本来は野球を観るための目的でしかないそれらの作業が、何日か続けるうちにとても楽しくなってきた。勿論、巧くいかず迷ったりすれば車内は険悪になるし大変疲れる。それでも、初めて対面する美しい球場達は、いつも私達をワクワクさせてくれるのだ。 ショッピアー通りを右折すると球場はもうすぐの筈だ。しかし、行けども行けども陰も形もない。「ちょっと行き過ぎだよね」と話してると、とうとう陸橋で90号線を通り越してしまった。間違ったと確信し引き返す。ショッピアーとクランストンの交差点での意味が違っていたらしい。「右折」ではなく「直進で右手にある」だったようだ。

テルファー・パークTelfer Parkの駐車場にはベロイト・スナッパーズのマスコットの絵が描かれてたので、そこから中に入っていった。駐車場の奥に体育館のような建物があったが、まだ球場は見えなかった。広い駐車場にはそこそこ車が停まっていた。建物の横に車を停め降りて建物の方に歩いていくと、1階はとても広い吹き抜けのスペースで、何かを組み立てる作業をしている人たちと、少し離れたところでバスケットをしている若者達(高校生?)がいた。建物の横に電ノコで草刈りをしている人がいたので球場の場所を聞いたが、電ノコの音でお互い何を言ってるか分からない。彼は作業を中断し「アッチだ」と指差し教えてくれた。建物の隣にはローラースケートやスケボーのバンクが置いてある広場があり、その金網の横を歩いていくと、右手には一般用のグランド(照明付き)。その奥にまた金網があり、隙間からスコアボードが見えた。正面入口に廻ったが鍵がしてあり誰も居なそうだった。中には入れそうもなかったが、外から見た感じは昨日のマリネリ・フィールドに近い造りの様だ。しかし、入口横の事務所は煉瓦造りの立派な建物で、大きな看板には「Welcome to Pohlman Field Home of the Beloit Snappers 」と書かれていた。周りの雰囲気も明るくて安全そうで、住宅地の中のスポーツ公園と言った印象だ。ここホルマン・フィールドを本拠地にするベロイト・スナッパーズは、昨日観たレッズやクーガーズと同じくミッド・ウエストリーグ中地区に属し、同じウィスコンシン州のミルウォーキー・ブルワーズの傘下だ。マスコットのスナッピーSnappyは亀だが、スナッパーと言うのは「かみつく」「元気の良い」「バチンと鳴る」という意味がある。

車に乗り再び街(実際のベロイトの市街地はもっと西)に向かい、今度はホテル探し(選び)だ。フリーマン通りFreeman Pkwyなら、球場からもハイウェイの入口にも近いので今日は楽できそうだ。フリーマン通りは大通りと測道の二重構造になっていて、先ほど見たモーテル4〜5軒は殆ど隣同士で、測道で行き来できた。近くに停まって何処にするか選んでいたが、「Fairfield Inn」と書かれた下に、小さく「Marriott」と書かれ、見覚えのあるマーク。あのホテルだけはやめようと思った。もうマリオット系は懲り懲りである(高いので)。どれも綺麗で問題無さそうだったが、外には料金表示が無いので、中に入って聞くことにした。先ず1軒目では「今晩の部屋を予約したいんだけど」と、言うと「おタバコは吸いますか?」と聞かれたので、「はい」と答えると係の女性はパソコンで確認し「喫煙できる部屋は全部予約が入ってます」との事。2軒目では喫煙の有無に関わらず既に満室だそうだ。「まいったなー」「どうしてだよ、こんな街に」と言ってはみたが、無いものは仕方ない。他のホテルに行こうと思ったが、「あそこも聞いてみようよ−」と妻。あそことはマリオット系のフェアフィールド・インの事だ。「どうせ高いからダメだよ」と言ったが、「私が聞いて来る」と言って、中に入って行ってしまった。私は車で待っていたが、しばらくして妻が戻って来た。「タバコの吸える部屋が空いてたよ。一晩69ドルだって」「マジかよー。デカシタ」やはり当たって碎けろである。妻の話によると、「部屋を予約したいのですが」とフロントの初老の女性に言うと、「ちょっと待っててね」と言って、やはりパソコンで確認し「ありますよ、クレジットカードを」妻がカードを見せると「日本から来たのね。まあ、可愛いカードね」と手続きをした後、部屋に案内しようとして「タバコは吸わないでしょう?」と初めて聞いて来たそうだ。妻が「エー、私の夫が吸うのですが」と言うと、少し困った顔をしたが「まあ、いいわ」と言って、事務所の灰皿を持って来て「これを使って」と言ってくれたそうだ。彼女の名はジェーンと言い、ここのマネージャーだそうだ。従業員も全て女性で、彼女も買い出しや掃除など率先して働いていた。料金は朝食付で$69だった。ジェーンの話だと月曜日(6日)が祝日なので、明日から3連休になり、ミネソタやカナダからの旅行者がシカゴへ向かう(或いはその逆)のに、ベロイトを中継点によく使うそうだ。それを考えると明日向かうミルウォーキーの宿が少し心配になってきた。

3階建てのフェアフィールド・インは、やはり清潔で明るい印象だった。入口を入ると右手にフロント、左手にそれほど広く無いロビー、その奥には食堂。フロントを過ぎて突き当たりには室内プールまであった。私達の部屋はプールの横の107号室だったが、部屋は昨日のホテルに比べると少し狭い。でも、壁やベッドの柄も上品そうで、早い時間のチェックインなのに隅々まで清掃が行き届いていた。窓からは隣のスーパーの駐車場が見え、カーテンを開け過ぎるとこちらも丸見えになるが、買い物は歩いて行けそうだった。それからロビーにはスナッパーズの日程表が置かれていて、私達も一部貰った。ジェーンは「野球を観て行くの?とても楽しいわよ」とお薦めのようだ。球場周辺の様子と言い、昨日の様な事は無さそうだ。これまでに比べたら今日は時間がたっぷりあるので、少し荷物の整理をしようとトランクに入れっぱなしだった大きなビニールバッグを部屋まで持って来た。既に相当な重さになっている。 

時刻は午後1時になり、歩いて隣のスーパーマーケットに行ってみた。店内はそれほど広く無く、日本のコンビニ2つ分位の大きさに程々の客が買い物をしていた。しかし、少し見て気が付いたが此所は普通のスーパーでは無く、シリアル、アイスクリーム、菓子類などを大量に箱売りしている店だった。しかも入口と出口は各々一方通行になっていて、レジを通らないと店から出られない様になっていた。私達は大量買いなどする必要は無く、困ってウロウロしていたが、特売?で小カップのヨーグルトをバラ売していたので、それを1つ持ってレジへ列んだ。レジはベルトコンベアーみたいなヤツに買った物を乗せて、前後の人の品と区別する為に品物の最後にプラスチックの棒を置くのだが、私のヨーグルトは1個だけなので、そのまま置いておいた。ところが、後ろに列んだ老夫婦の物に混ざってしまいそうになったので一応棒で仕切ったら、お爺さんは大ウケして「面白い考えだ、中国人かい?」と聞いて来た。そこまでは聞き取れたので「いいえ日本人です」と答えたが、その後が大変だった。延々と何かを話しかけてきたが、何を言ってるか全く分らなかった。笑っていたので好意的な話だったのだろうが、私達は意味も分らず愛想笑いをしていた。時たま奥さんが話に割り込んできたが、比較的彼女の方が聞き取り易く、どうやら家に招待すると言ってる様だった。時間はあるし良さそうな人達だったので、行っても良かったのだが、何となく相手にするのも疲れそうなので、聞き流してレジをすませ外に出てしまった。歩きながら「絶対、家に来いと言ってたよ」と妻。「行きたかった?」と聞くと、やはり「大変そう」と言う返事。私達はそこから100メートル位の所に見える大きな建物(間には野原しか無い)に向かった。造りからしてショッピングセンターだと思ったが、近くまで行って良く見ると、とても大きなゲームセンターだった。開いて無かったので中には入らなかったが、駐車場からの眺めが良かったので車止のブロックに座って、さっき買ったヨーグルトを食べた。

今度は車に乗り大通りの反対側の大型マーケットに行った。昨日の店と同じく商品は充実していたが、ここは食品以外にも、衣料品、日用品、本、おもちゃ等も売られていた。昨日買ったパンがまだ残っていたので、それに挟む惣菜を買ったが、普通のサラダとプリンを潰した様な物を試食させてもらい、やはり小さい容器に入れてもらった。他の食品は買わなかったがブラブラと店内を散策していたら、最初に入った店で会った老夫婦がいたので思わず隠れてしまった。私達は本の売場に逃げ込み、そこでスタトレの雑誌を見つけたので、それを買って店をでた。

他には見たい所も無かったので、遠くに見える「Beloit」と書かれたタンクの様なヤツの写真を撮りに行く事にした。それは車で移動を始めた日から、どこの街でも見掛けた物だったが、高さが20〜30メートル、色は全体的に銀色(金属製だから)で、キノコの様にテッペンの部分が大きくなっていて街の名前が書かれている。ハイウェイを走っていても遠くから街の位置が確認出来る様になっていた。中は空なのか何か入ってるかは知らないが、水やガスのタンクの様にも見えた。フリーマン通りからは逆光なので南に向かってみたが(たぶん2〜3Km)、一般道を走っていたら、いつの間にか何かの工場に入ってしまった。行き止まりになったので気付いたが、大きな正門もタンクに気を取られていて目に入らなかった。別に怒られなかったので、休憩中の人に聞いてみたが、朝以外はどうしても逆光になってしまうようだ。仕方ないので写真は諦めホテルに戻った。ホテルの駐車場に入るとき、丁度ジェーンが車に乗って出かけようとしていた。彼女は私達に気付くと手を振ってくれたので妻も手を振って応えた。

表の駐車場がいっぱいだったので裏に停めたが、裏の出入り口に黒人の子供が居た。彼は10〜13才位だと思うが、私達が出掛ける時にチェックインしていた家族の中にいた子供だった。「中に入りたいの?」と聞いたが(裏口は鍵が無いと開かない)、日本人と話すのが恥ずかしいみたいで逃げてしまった。私達は鍵を開け(部屋の鍵と共通、このパターンは多い)中に入った。扉が閉ると、さっきの子供はガラス張りのドアに張り付いて、入りたそうにしていた。開けてやろうと近付くと、また逃げてしまった。「マッタク!」と思ったが子供に腹を立てても仕方ないので、部屋に戻りサンドイッチを作って食べた。ビールも飲んでいたが、部屋に冷蔵庫は無く、飲み物は備え付けの容器に氷を入れ冷やす様になっている。容器を持って廊下の製氷機(無料)の所に言ったら、さっきの子供も氷を取りに来ていた。私が「ハ−イ」と手を挙げると、今度は逃げられないと思ったのか、ワンテンポ遅れて控えめに「ハイ」と応えてくれた。私が容器を置いたら、ボタンを押してくれた。氷の出し方は分らなかったので助かった。部屋に戻りビールを飲みながらテレビを見てたら、いつの間にか眠ってしまい起きたら5時だった。

球場へ行く前にホテルの前の側道にあるバービスB.P のガス・スタンド に寄った。アメリカのG.S は殆どがセルフサービスなので自分で給油しなくてはならない。一応ガイド本で予習してたが、給油ポンプは店によって皆違うので、初めはどうしても戸惑う事になる。スタンドは表から見ると日本とそれほど違いは無かった。私は先ず一番端のポンプの横に車を付け、降りてポンプの番号を確認し店内に入った。店内はコンビニの様になっていて、買い物客も結構いた。レジにいた男性にクレジットカードを渡し「ナンバー10、レギュラー 」と言った。ガソリンの種類の呼び方も日本とは少し違う(Regular、Plus、Premiumなど)。「OK」と言われたので、車に戻り給油口のキャップを開ける。閉め忘れない様にキャップは鎖でつながれていた。「これで良いんだよな−」と妻に確認しながら「Regular」と書かれた所に掛かっていたノズルを手で持った。給油口に差し込みレバーを握った。しかしガソリンは出ない。確かポンプ側にもう一つレバーがある筈だが、良く見ても分らない。隣に車が来たので聞きに行ったら(店員は外には居ない)運転してた若者は、私達のポンプまで来てくれた。彼はノズルの掛かっていた枠を下に押し下げ「レバーを握って」と言った。その通りにすると手応えがありガソリンが入っていった。お礼を言うと、彼は手を振り戻って行った。その直後にまた手応えがあり今度はガソリンが出無くなってしまった。メーターは12で止まっている。レバーを何回握っても、ガクッと言う手応えがあるだけで、給油は出来なかった。「まあ12リッター入ったから、しばらくは大丈夫だろ。これで精算しよう」とキャップを閉めた。再び店に戻るとレジは列が出来ていたが、給油のみの客は列ばなくて良いみたいで、呼ばれたのでサインをして車に戻った。エンジンをかけ発車すると、燃料計は満タンになっていた。大事な事を忘れていた。こちらで表示される単位はリッタ−ではなくガロンGallonだった。12ガロンは約40リッターである。あれ以上は入らない訳である。私達は安心して球場へ向かった。

ゲーム開始は7時なので、まだ1時間以上ある。しかしテルファー・パークの駐車場は7〜8割は埋まっていた。出来るだけ球場の近くに停めたかったので奥のスペースが空くのを待った。野球場以外の施設に来ている人も結構いたので、出て行く車もあったからだ。それ程待たずに良い位置が空いたので車を停めた。昼間見た建物の1階はかなりの人垣が出来ていて、その真ん中には特設のリングが見えた。昼間組み立てていたのはコレだったようだ。リング上は誰も居なかったが、これからボクシングかレスリングが始まるのだろう。球場方面に歩いていくと、スケボー場?も照明が点き、十代と思われる少年達が技を競っていた。一般のグランドも点灯されていて、バラバラの運動着の人達がソフトボールの試合をしていた。一応小さなスタンド?も在り、応援している人も楽しんでいた。ホルマン・フィールドも既に開門されてるようで、ライト方面に在るピクニックエリアは、準備をしているグループで賑わっていた。私達も正面入口に回りチケットを買って中に入った。チケットは$3〜6。

昨日のマリネリ・フィールドと同じく、場内は金網で仕切られていてスタンドはその中にあった。金網とスタンドの間は程々のスペースがあり、仮設の売店(グッズと食物)が2〜3軒出ていた。スタンドの下にも食物の売店とチャンとしたグッズの店もあった。種類も豊富でデザインも個性的だったが、シーズン終了間際と言うことで、良い物は在庫が少ないようだ。私はさっそくスナッパーズの帽子を買ってしまった($15)。ネット裏と3塁側のスタンドの間の通路からグランドを覗くと、両チームの選手達が練習をしていた。しかし、通路にある案内所の前では背番号6の選手が係の女の子とジャレ合っていた。彼は小柄で大変痩せていたので、初めはユニホームを着た場内係か何かだと思ったが、後から来た子供にサインをしてやってたので「やっぱり選手なんだ」と、私もさっき買った帽子にサインをして貰った。握手をすると彼の手はとても冷たかったので「ウォーミング・アップもしないで女を構ってるんだから、どうせ補欠だろ」「挫折した選手じゃない?」と妻と2人で勝手な事を言っていた。

スタンドに出ると、ホーム方向以外はネットが低いので、ベンチに引き上げてきた選手とは簡単にコミュニケーションが取れる。サインを求める人は数人居たが、シャンバーグ程の混雑では無かった。私も何人かの選手にサインを頼んだが、彼等は積極的に応じてくれた。私の帽子は6枚矧ぎで、3枚はマーク刺繍があったので、バランス的には3人のサインでよかったが、1人がサインをしてると後から来た選手が「俺もしようか?」と聞いてくるので、断る訳にもいかずツバの裏にして貰った。

サインはもう欲しくなかったので、1番眺めの良さそうな1塁側スタンドの最上段に上がってみた。やはり此処もネット裏以外はアルミ製の簡素な造りだった。さっき通ってきたソフトボール場やスケボー場が良く見えた。入ってきた時は気付かなかったが、1塁スタンドの後ろ(場内)にはスベリ台やブランコがあり、小さな子供達が遊んでいる。野球がまだ解らない子供を連れて来ても退屈しないような配慮もされていた。公園周辺はスポーツを楽しむ人で賑わっていたが、その周りは住宅地なので、大きな木が見えるぐらいで後は大した眺めでは無かった。しかし、環境的には明るくて安全そうで、人々が安心して野球を観に来れる。やはり素晴らしい球場だと思った。グランド内は既に選手達は練習を終え、ベンチ前でキャッチボールをしたり、各自くつろいだりと言った様子だ。3塁側ベンチのスナッパーズは上下白地のユニホームで、いかにも地元っぽかったが、胸のマークと背番号は個性的なデザインだ。対する今日の相手フォートウェーン・ウィーザーズFort Wayne Wizardsは上は黒、下はグレーのユニホームだ。フォートウェーンはインディアナ州北部の町で、ウィーザーズはミッドウェスト・リーグでも東地区のチームだ。

スタンドが結構埋まってきたので、私達はネット裏の自分の座席に移動した。グランドには始球式?に参加するユニホーム姿の子供達が出てきた。子供達はスナッパーズの選手と共に各自のポジションに走って行った。観客達も起立し脱帽したので、私達も同じ様にしてグランドに注目した。センター、ショート、セカンドには2人以上の子供が居たが、ライトには居なかった。しかし、ドラマのお決まりシーンの様にダブダブのユニホームをズリ上げながら、一番チビの子供が遅れてライトに走っていった。彼が守備位置に付くとアメリカ国歌が流れ、子供達は選手と列んで直立不動で胸に手を置き歌が終わるのを待った。良い光景だ。子供達は選手から記念品の小さなペナントを貰い、それをはためかせながら走って引き上げて来た。

試合が始まりチョット驚いた。先ほどの不真面目そうな背番号6番がショートShort stopに入っていた。しかも裏の攻撃では先頭バッターとして打席に立ったのである。「1番ショート」と言えば重要なポジションだ。「大丈夫かな?」と思っていたがホセ・グィーエンJose Guillenと言う名のその選手は、3打席目まで大振りのアッパースイングを繰り返し凡打に倒れていた。やはり準備不足か?対照的に私の眼に止まったのは3番バッターのボビー・ダルーラBobby Darulaだ(背番号14)。彼もグィーエンと同じく小柄だったが、とてもセンスの良い打撃を観せてくれた。決して豪快ではないが無駄のない構えとシャープなスイングから放たれるライナーは、他の選手とのレベルの差を感じた。しかし経歴を見ると既に26才でチーム最年長。体格的な事もあり上から声が掛かるのは難しい気がする。センス抜群なのに・・・。試合はウィーザーズが先制し、4回までに6-0の展開になってしまったが、得点差以上にウィーザーズが押し気味だった。毎回のように塁上を賑わすウィーザーズに対し、スナッパーズは、凡打、摂行の山、しかも無策に早打ちを繰り返していた。観客は95%以上がスナッパーズ・ファンだったが、1塁側の最前列の4人(夫婦2組)だけはウィーザーズを応援していて、チャンスや得点した時は大騒ぎしていた。男性2人は野球帽を被っていたので、私は昨日の事(帽子の交換)もあって、どんな帽子か確認するため近くに席を移動した。

席の値段は当然ネット裏の方が高いが、滅多に来れない私達には低い金網の内野席も大変魅力的だった。グランドではウィーザーズのバッターのファウルチップが球審に当ってしまい、しばらく中断してしまった。幸い大した怪我では無く、その後も同じ球審でゲームは続行したが、彼が暫くマスクを外してたので気付いたが、球審は東洋系の人だった。街でも全く出会わなかった顔立の人が、この試合で最高の権限を持っているとは不思議な感じがした。それからアトラクションの変わったモノを紹介すると、なんとダイヤモンド内を使ってのベースランニング競争が行われたのだ。観客の有志2人が潜水用の水掻きを履いて、マスコットのスナッピーと競争するのだが、途中スナッピーの妨害もあり、ドタバタやって倒したり引きずったりで、グランドは大丈夫かなと思ってしまった。大事な試合ではやらないのだろうが、ファンのゆったりした気持ちがベースに無かったら、とても受け入れられないだろう。その他には、お馴染みとなったグッズ投げ入れで、私は今日もボールをゲットした(今日の競争率は高かったです)。それからグランド外では、ブランコの横でピエロが子供達の顔にペインティングをしていた。値段を聞いたら無料だそうで、妻が「私もやって貰う」と言ったので「たのむから!」と必死でやめさせた。まだウィーザーズ・ファンの帽子は確認できずにいた。

私達は荷物もなく、座席の確保もそれ程気を使わなくても良さそうだったので、時偶スタンド下の売店等のあるスペースに降りて行った。此処からは試合は見え無くなってしまうが常に人で賑わっていた。アチコチで立ち話の輪が出来ていて、野球に余り興味のない人でも、球場は地域交流の場として大きな存在になっているようだ。家族揃って球場に来ても、父親、母親、子供と目的はバラバラでも良いのだ。ビールは$2.50と程々の値段。その他の食物も変わった物は無いが、量が多くて味も合格点だろう(大味に慣れてきたのでしょうか?)。事務所内にあるトイレ(外から入れる様になっている)も綺麗だった。私は出るときに間違えて選手ロッカーに入ってしまい、興味もあったので暫く見学?していた。建物が綺麗なので余り悲壮感は漂ってなかったが、やはり人数の割には狭いし、とても散らかっていた。

スタンドに戻ると、飽きてしまったのか数人の子供達が通路で追い掛けっこをしていた。黒人の子も白人の子も一緒に遊んでいるようだ。そのうちに座席の方まで入って来てしまったので、注意されてスタンドの外に出て行ってしまった。7th イニング・ストレッチには下にいた人達もスタンドに戻り、大いに盛り上がって合唱した。主役は何と言ってもスナッピ−で、彼は外見とは違い機敏に動き回り、観客を乗せるツボも弁えてる。かなりの熟練者だと感じた。

例のウィーザーズ・ファンの前を何度か通って確認したところ、ウィーザーズの帽子を被っているのは一人だけだと言う事が分った。ここでも敵チーム(ウィーザーズ)のグッズは売られていない。妻と相談して、彼女が被っていた浦和レッズの帽子を「交換要員」に決定した。妻も2つ返事で了承した。私は帽子を持ってウィーザーズ帽の彼に「失礼、・・・・」と昨日の要領で(しかも2回目なのでスムーズ)、帽子のトレードを申し込んだ。しかし、彼は怪訝そうな顔で「トレード?ノー」とはっきり断わってきた。彼の隣に座っていた奥さんらしき人も、周りにいた人も注目していたが、みな苦笑いで「仕方ないね」と言った顔だった。私は「分りました。ごめんなさい」と言い席に戻ったが、ベロイトの帽子のオジサンが「これじゃダメかい?」と聞いて来たが、「ごめんなさい、それは買ったので持ってます」と断わった。気持ちは有り難かったが、まだ2試合観戦の予定があるので、大事な「交換要員」を無駄には出来なかった。それにウィーザーズの帽子をまだ諦めた訳では無い。日本の野球カードをプラスして3対1〜5対1くらいのトレードを彼にもう一度申し込もうと考えていた。しかし、用意をして彼の近くに行くと、奥さんが彼に何か言ったらしく、彼は怒って言い返していた。連れのもう一組の夫婦も「交換してやれよ」と言ってるみたいだったが、彼の顔は増々険しくなっていった。「ちょっと言える雰囲気じゃ無いね」と諦め、私達はスタンドから降りてグッズの売場へ入った。目を付けていた実際に使用されていたユニホーム(上着のみ$80)とトレーナー($25)を買って店を出ると、試合が終わったらしく通路から人々が一斉に降りて来た。結局6-3でウィーザーズが勝ったらしい。

出口では全員に缶ジュースを配っていた。一般のグランドとスケボー場は灯が消えていたが、建物1階の特設リングではプロレスをやっていて、D.J が響きわたり、観衆が熱狂していた。それを横目に私達はテルファー・パークを後にした。行きに寄ったG.S でバナナとビールを買ってホテルへ戻った。ホテルの駐車場では客の黒人の若者達が騒いでいたので賑やかだった。昼間閉まっていたゲーセンのネオンも畑の中で一際目立って見えた。彼等に写真を撮って貰って部屋に戻った。シャワーを浴び、バナナとパンを食べながら、明日の打ち合わせをした。明日のゲーム(ミルウォーキー)はデーゲームなのと、宿の事が少し心配だったので、早めにミルウォーキーへ向かおうと決めた。しかし、テレビでスタトレをやってたので、ついつい見てしまい、床についたのは午前0時30分になってしまった。

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