8月19日

  American League

MINNESOTA TWINS VS NEWYORK YANKEES

ミネソタ・ツインズ VS ニューヨーク・ヤンキース

Hubert H. Humphrey Metro Dome  Minneapolis ,MN(ミネソタ州 ミネアポリス)


 6時半起床。カーテンを開けると朝日が眩しい。昨日買った材料でハムサンドを作り朝食。部屋には冷蔵庫は無いが、氷で冷やしていたので水もとても冷たくなっていた。野菜とハムは明日も使う為、出かける前に氷を取替えに行く。ジャグジーには女性が入っていた。目が合いニコッとされるが、こっちの方がちょっと恥ずかしかった。

今日もナイター観戦なので、昼間は近郊を観光する予定。旅行前に日本語サイトもあるミネソタ観光局に問い合わせをしたのだが、メールで質問にも応じてくれ、観光用資料もただで送ってきてくれた。ツインシティーを拠点に1〜2日の観光としては、ダウンタウンのスカイウェイ(大規模な高架遊歩道)、ブーツで有名なレッドウィングRedwing、北部まで足を延ばして自然探索、などが候補だったが、熟考した結果スティルウォーターStillwaterでのランチ・クルーズに決めた。

 時間的にはまだ余裕があったので、昨日スーパーで会った彼女達から聞いたミシシッピ公園Mississippi Parkへ寄って行く事に。球場へ行く時と同じようにワシントン通りへ向かい、大学に沿ってオーク通りOak Stを抜けて川沿いのリバー通りRiver Rdへ出る。表通りとは一変して樹木が多い。通り沿いのコインパーキングに駐車。メーターに25セントを2枚入れる。1枚で12分停められるようだ。道幅が狭いので交通量は少ない。木が繁っている間に川岸に下りる階段を発見。100段くらいあったろうか?ミシシッピ川のほとりまでやってきた。ゆっくりした流れだ。水はそれほど冷たくない。向こう岸の森の向うには背の高い建物が顔を出していたが、メトロドームは見えなかった。

「ツインシティーはミシシッピ川を挟んで2つの街が…」などとよく称されるが、この辺は両側ともミネアポリスだ。砂浜のようになっている川沿いを歩く。私達以外には誰もいない。川幅は100メートルくらいだろう。これが3000キロも旅をしてアメリカを縦断しメキシコ湾に流れ出る頃には、何倍もの広さになっているのだ。旅行も数日経つと、アメリカにいるのに徐々に慣れてしまうが、こう言う象徴的な物に直に接すると、瞬間的にゾクゾクしてくる。北に歩いて行くと、昨日渡った鉄橋が見えた。逆に南に見えていた橋はハイウェイだろう。所々、木の根が張り出していて歩き難かったりもしたが、少し冒険気分を味わい、公園の北側に辿り着いた。少しだけ斜面を上がると、上の広場に出られた。大学を正面に仰いで、ここは学生の憩いの場という感じ。

もう少しゆっくりしたかったが、「そろそろ時間だよ」と言う妻の声で、コイン駐車の事を思い出した。そこからは歩道を通って車まで戻ったが、結構な上り坂だった。最初にあれだけの階段を下りたのだから当然だ。駐車時間は少しオーバーしていた。9時30分スティルウォーターに出発。

 一旦大通りに戻り、ヒューロン通りHuron Blvdから94号ハイウェイに乗り東に向かう。交通量はそれなりにあるが、都市部の割にビュンビュン飛ばしてる感じは無い。かなり手前からセント・ポールの高層ビル群が見える。やはりミネアポリスと比べると、近代的に開発しているのは中心部だけのようで、他は歴史を感じる古い造りが多そう。経済の中心ミネアポリスに対して、文化的な首都セントポールと言った特徴そのままの感じだ。

 そこを過ぎると35Eで北に進み、間も無く州道36号への出口が見えてくる。下りてからも道路状態はハイウェイ並で、交通量も多かったが、景色は一気に郊外になった。森や川や池に囲まれ気持ち良かったが、どう言う訳か?隣りを走っていた車が、私が追い越そうとすると、瞬間的にスピードを上げ抜かれないようにしていた。それでいてトラックなどにはブレーキをかけてまで進路を譲っている。頭にきたので、横に並んで睨んでやると、サングラスの中年男性は素知らぬ顔。それでも競り合いは止めず、私を前に行かせないようにしていた。「この田舎者ドライバーめ。日本人に抜かれるのがそんなに嫌か!」ハッキリはしないが、それくらいしか理由は思い付かない。その車は途中の出口で下りていった。

 景色は更に自然が多くなり、道も一車線になった。水色のスティルウォーターの給水塔が見えて、丘を一越えすると、今まで東を向いていた道は、湖に沿って北へ走るようになった。地図によると船着場はもうすぐの筈だ。市街地に入る前に、右手にあった有料の駐車場へ入る。舗装されて白線も引かれている綺麗な駐車場で、50台以上は停められそうだが、この時停まっていたのは4〜5台だけ。その奥は、もう湖が広がっていて、駐車場との間に砂利道が通っていた。砂利道にも車が10台近く停まっていたので、私達もそちらに一時駐車した。

 観光クルーズの船着場も目の前で、「トム・ソーヤーの冒険」に出てきた蒸気船を思わせる外観の、観光船が3台ほど停泊していた。砂利道を50メートルほど歩いたところに観光船会社の小屋があり、3人の男性が荷物を運んだりしていた。中年のガッチリした男性に「予約してるのですが」と言うと、「おお、こっちだ」と言って小屋の窓口まで案内してくれた。

 セントクロイ・ボート&パケット社St.Croix Boat & Packet Co.は、シーズン中はほぼ毎日、なんらかの観光遊覧船を運航させている。船も何隻もあるようで、ランチクルーズの他にも、ジャズの生演奏付きのディナークルーズや、個人貸切、結婚式コースまであるらしい。私達が予約したのはデリ・ランチョン・ビュッフェDeli Luncheon Buffetと言う一人17ドルのバイキング形式のランチで、食事無しのクルーズが10ドルと言うのを考えると、なかなか割安なのではないか。

 料金を払いチケットを受取る時に、窓口の女性に「出航時間に遅れないでね」と言われた。それから、車は砂利道に停めておいてOKだそうだ(乗船客オンリー)。一旦車まで戻る時に、さっきの中年男性が声をかけてきた。「東京から来たの?」と言われたので「その近くです」と答える。彼がブルブルポーズをして「今日は寒いだろう」と言ってきたので「いつもこうですか?」と質問すると、「いや、2〜3日前はとても暖かかったんだ」と言い、一輪車(日本のとは違う)をガラガラ引っぱりながら、物置小屋に入っていった。

 出航まで1時間以上あるので、歩いて街を散策する事に。砂利道の突き当たりには小さなレストランがあり、それを超えると観光トロリーバスが停車する広場へ出た。バスは電車のような格好をしていて、近くの地面には線路の跡もあった。線路はさっきの砂利道あたりで埋まっているので、今は使われてないようだ。広場はとても見晴らしがよく、湖畔の遊歩道や湖にかかる橋も、向こうまで見渡せた。時間が早いせいか、観光客らしき人は2〜3人だけ。それと犬の散歩をしてる人が1人。

 セントクロイ川St.Croix Riverはウィスコンシン州との州境を流れていて、ここから30キロほど下流でミシシッピ川と合流する。地図で見ると、こちらの方が太くて本流のようにも見えるが、流れが遅く見た目ほど水量はないようだ。スティルウォーター近辺は特に川幅が広くなっていて、セントクロイ湖St.Croix Lakeとして州立公園になっている。

 橋の長さは300〜400メートルなので、歩いてウィスコンシン側へ行ってみる。風は涼しいが陽射しが強いので、湖の乱反射が眩しい。対岸から見たスティルウォーターの街は、山の中にポツンとあって可愛らしい感じがした。橋を戻ってからはその小ぢんまりしたダウンタウンを散策。古くて風情のある街だ。スティルウォーターはミネソタ州では、最初に入植者が住み着いた町だそうで、歴史観溢れるアンティークな住宅も残っているそうだ。懐かしい雰囲気を求めて年配の観光者がとても多いのだそうだ。お土産屋には、Tシャツや絵葉書とともに、木工細工のような物も多数置かれていた。 

 ダウンタウンの南の外れに西側の丘へ上がる階段があった。木に囲まれているので、とても目立たないものだ。時間もまだあるので当然登る事に。最初はコンクリートで手摺もあったが、途中から石になり結構急になった。真中あたりで自転車を担いで上がっている青年を追い越す。300段くらいはあったろうか?上がりきった時には息が切れた。

 丘の上は住宅地(雰囲気は別荘地)で、とても広い庭の大な家が、木々に囲まれ続いていた。中央には道路も通っている。自転車の青年は、別ルートからなら担がなくても上がれたのに・・・それとも何かのトレーニングなのか?階段横には、ちょっとした展望スペースがあり、セントクロイ川を一望出来た。毎日をこんな景色の中で過ごせるアップタウンの住人達は、さぞやノンビリしているのだろうと思いきや、半分以上の家が、大統領選の為の「Bush」「Kerry」などの手書きの応援ボードを庭先に掲げていた。隣同士なのに別候補を応援してる場合は、ボードの数も多く、一段と過激な印象。

 出航時間も迫っているので、船着場からも見えた高い塔の手前で引き返す事に。下りは別側から下りようとしたが、「来た道の方が無難」と妻に言われ断念。船着場に戻ると大勢の観光客が集まっていた。大半が年配のご夫婦だが、揃いのピンクのジャケットを着た婦人会?のお婆ちゃん達が目立っていた。

 観光遊覧船アバロン号Avaronに乗船したのは11時20分頃。出航は11時半と聞いていたが、全ての予約客が早めに乗船したせいか、28分には船は動き出した。ゆっくりゆっくりと船は進み、橋の手前でグルッと向きを変えて下流へと向かった。みな甲板に出て景色を楽しんでいる。日陰に入ると少し寒いが、陽の当たる場所はとても心地良い。風は強風と言うほどではないが、帽子を飛ばされたら取りには行けないので、常に注意していた。

 スティルウォーターの名前の通り、水面はとても静かで、全く流れていないように見える。僅かな逆立ちも上流に向いているので風のせいだろう。ウィスコンシン側の景色は森ばかりだが、ときどき家の屋根が頭を出している。家がある下辺りをよーく見ると木々の間から、丘の斜面にかかる階段や梯子が見えた。妻が野球観戦用のミニ双眼鏡を持っていたので、家によって石段だったり、木の梯子なのかも確認できた。階段を下りた湖畔には自家用と思われる船着場があり、ボートが停まっている所もあった。殆どが別荘なのだろう。驚くような大絶景では無いが、自然を感じられ、とてもゆったりとした時間だった。

 気が付くと甲板にいた乗客の大半が消え、残っているのは私達と2〜3家族だけになっていた。年寄りが多いから「寒いので中に入ったのだろう」と思っていたが、少しして係が「食事を済ませて下さい」と呼びにきた。後方の外階段から降りていくと、船尾には巨大な赤い水車が付いていた。外輪船をイメージしての物だろうが、機能しているのか飾りなのかは不明。トム・ソーヤーの時代の蒸気船の特徴である、煙突と迫り出しは明らかに飾りだと分かったが。

 2階に下りると、広いレストランでみな食事をしていた。眺めの良い窓際の席は埋まっていたので、私達は中央の席へ着いた。料理は後方のテーブルに並んでいて、食器も全てセルフ。ハム数種、ローストビーフ、照焼チキン、ブドウのパスタ、生野菜、大きなピクルス、パン、クッキーなどが今日の献立だった。どれも美味しかったが、中でもポテトをトロトロに煮た料理が二人とも気に入ってしまい3皿もお替りした。それから水やコーヒーもカウンターに取りに行くのだが、水はG.Sの給油ノズルのようなので出していた。ビールなどは別料金のようだ。

 食後は再びデッキで景色を満喫。レイクランドLakeland(たぶん?)辺りでUターンして、帰りは西岸に近い航路だったので、ミネソタ側の風景がよく見えた。ウィスコンシン側に比べると家も多かったが、それでも殆どは森だ。船着場に戻ると、食堂でも働いていた数少ないスタッフが、ロープを引いたり帰港の仕事までキビキビとこなしていた。

 約2時間のクルーズを楽しみ、スティルウォーターを出発。それほど遠くまでは行けないが、来た時とは違う道で帰りたいのでメイン通りMain Stを北へ向かった。小さな市街地を一瞬で通り過ぎ、州道96号を西へ。見えるのは道路と森だけ。暫く行くとチキチキマシンに出てきたポッポSLのような外観の農耕車両が前を走っていた。「こんなのが今でも走っているんだぁ」と感心しながら、ゆっくり追い抜く。時々、開けた場所では両脇に小さな池がたくさん見えた。

 対向車が少しづつ増えてきて、20分ほどでホワイトベア・レイクWhite Bear Lakeに着いた。特に下調べをしてこなかったが、地図で見るとツインシティー周辺では1〜2番目に大きな湖だ。私達は湖の北端にいるのだが、周辺はキャンプ施設の案内小屋が何軒かあった。舗装された綺麗な駐車場に車を停め湖畔へ。ビキニ姿で日光浴してる人が一人と、浅瀬で遊ぶ子供が3〜4人いるだけだった。手前の滑り台などの遊具には誰もいない。10分足らずで出発。

 西に向かうとすぐに61号に出た。さっきまでの景色とは一変し、交通量の多い大通りだ。694号ハイウェイから35Eと進み、行きでのルートに戻った。時刻は2時半を回ったところだ。そのまま帰っても良かったが、やはり同じ道ではつまらないので、一般道へ下る。Larpenteur Avからダール通りDale Stを経由して行くが、メリーランド通りMaryland Avが工事中で通行止めになっていたので、ユニバーシテイー通りからレキシントン通りで北に戻る。歩道まで綺麗に整備されている新しめの住宅街が続く。妻が持ってきたメモを頼りにエナジーパーク通りEnergy Park Dr.を左折。新しそうな道だが、意図的に作ったのか?かなりクネクネしている。大学だか会社だかの大きな敷地の横を通り過ぎるとスネリング通りSnelling Avとの立体交差インターが出てきた。潜ってそのまま直進すると右手に照明塔が見えた。

 鮮やかな青が特徴的な球場だ。正面を通り過ぎたときに、派手な壁画が飛び込んできた。道路沿いの駐車場に車を停める。ここはセントポール・セインツSt.Paul Saintsの本拠地ミッドウェイ・スタジアムMidway Stadium。シャンバーグ・フライヤーズと同じノーザン・リーグ所属のライバルだが、セインツの知名度は全マイナーチームの中でも抜きん出ている。日本の雑誌やテレビでも、独立リーグを紹介する時には、セインツの事を一番に取り上げる事が多い。当然、ファンからの人気も抜群なわけで、すぐ隣(球場の距離は4キロしか離れていない)のツインズを食っているとまで言われている。私達もせっかくツインシティーまで来たのだから、是非観戦したかったが、あいにく今は遠征中なので、球場だけでも見に来たのだ。

 車を降りると壁画がよく見えた。壁は球場へ続くスロープを囲っている側面で、コンクリート壁(高さ約1〜4メートル、長さ約20メートル)に、野球の歴史が年表のように描かれている。野球の起源からベーブ・ルース、ニグロ・リーグ、女子野球、そしてツインズの活躍を描いた絵にはパケットKirby Puckettが大きく描かれていた。その周りの花壇には色とりどりの花がたくさん咲いていて、係が水をくれながら枯れた部分を取り除いている。入口にはユニホーム姿の大きなスヌーピーの人形が置いてあった。その横の事務所には2〜3人のスタッフがいたので「中を見てもいいか?」と聞くと「どうぞ、どうぞ」

 球場は、スタンド下に通路や売店があるタイプで、思っていたよりも古そうだ(1982年オープン)。しかし、綺麗に塗装されているので古臭いイメージや、汚いイメージは全く無い。球場の外壁にも壁画があり、いたる所に鉢植えの花が置かれていた。スタンドに出てみると、丁度、ホームプレート付近を係が整備している最中だった。明るい空の下に緑のグランドが映えて、とても気持ちが良い。やはりドームよりもこっちに来たくなるのは当然だ。驚いた事に、観客席はネット裏までがアルミ製の長椅子タイプだった。マイナーの球場でも良い席になると、座り心地の良いしっかりした椅子で、ドリンクホルダー付だったりするもんだと思っていたが・・・それに比べて階段の手摺、ダグアウトの屋根などは、まめに塗り直しているようで、とても鮮やかな色をしている。そして、それらを取り囲んでいる数多くの美しい花々、壁の壁画。ファンが訪れたくなるのは当然だと思った。マイナーで人気球団を作る要素に、私はこれまで見てきた経験から、綺麗な新球場を建てるのが、一番手っ取り早いと思っていたが、古い球場でもスタッフの努力とアイデアで、ファンが満足する気持ちの良い空間に出来るのだと知った。ホント目から鱗の思いだった。関係無いけど、スタンドにリスがいたので、しばらく追いかけっこをしてしまった。

 そこからホテルへは同じミッドウェイ地区なので、すぐに帰れた。時刻は3時半過ぎで、テレビでは「風雲たけし城」を滅茶苦茶な吹き替えでやっていて、懐かしの亜仁丸レスリー(元阪急ブレーブス)や、丹子母鬼馬次も出ていた。

 4時半になりメトロ・ドームへ出発。走りながらG.Sの場所をチェック。明日は空港で車を返すが、朝は忙しいので今晩のうちに満タンにしておきたい。昨日何回も行ったり来たりしたので今日はスムーズ。同じオジさんのパーキングに入れたが、今日は出易いように手前に停めた。踏切を渡って球場側へ行くと、今日も行列が出来ていた。最後尾の人に「自由席の列ですか?」と確認して、私達もその後ろに。みな時計を見ているので「開門は何時ですか?」と聞くと「5時だけど、もう過ぎてるよ」と不満顔。列は私達の後ろにもどんどん延びていく。結局、列が動き出したのは5時半過ぎ。

 ゲートまでは荷物検査などでユックリだったが、それを過ぎるとみな走ってスタンドへ。私たちもレフト外野席の前から8列目に座る事が出来た。前2列は客を入れてないので実質的には前から6列目だ。自由席エリアの半分から前はすぐに満杯になってしまった。グランドはヤンキースの打撃練習中だったが、もう終了間際なのか?松井はセカンドベース後方の防球ネットのところで、ピッチャーの真似をして遊んでいた。フェンス際にはサインを求めているファンも大勢いたが、応じていたのはマリアーノ・リベラMariano Riveraだけだった。それも2〜3人だけ。

 開始時間が迫ってくると、遅れてきた客が「そこあいてる?」「その席いるの?」と引っ切り無しに聞いてくる。しかし、空いていても友達の為に確保してある席や、隣との兼ね合いでたまたま1つ空いてしまった席くらいで、前の方が2つ並んで空いているわけは無い。遅く来たのだから当然なのだが、カップルでも別々に座るか、我慢して後ろで見るしかないようだ。ほぼ満杯になった試合前の場内は、昨日までツインズが連勝している事もあり、地元ファンの熱気が伝わってくる。大型モニタでもそれを煽るように、前日、前々日のダイジェストを流し、「そして彼は出てこない」とAーRODの顔のアップが。そしてそれを箒で画面外に掃きだしてしまう。観客は「すぃーぷ!」と大合唱。

 国家斉唱はオバさん歌手の独唱で、レベルの高い歌唱力は妻を感動させた。名前は知らないが、確かに上手い人だった。試合は初回から1点づつを取り合ったが、その後は両先発が持ち直した。ヤンキースの先発ヘルナンデスOrlando Hernandezは7月に2年ぶりに復帰したので、見られたのはある意味ラッキーだ。私達の席から一番よく見えるのはレフトの選手なので、私が松井の写真を撮っていると、隣のお爺さんが話しかけてきた。「旅行で来た」と言うと「孫達もだよ」と隣の子供たちを指した。子供たちはロイヤルズの帽子を被っていたので「カンザスシティーからですか?」と尋ねると、「そうなんだ。私は、ここに住んでるからツインズファンだよ」と自分の帽子のツバに手をやった。

 私達は、持ってきたバナナとヒマワリの種を食べていたが、それだけじゃ足りないので、私が飲食物を買いに行って戻ってくると、「ハンターTorii Hunterがフェンスに激突して引っ込んじゃったよ」と妻。彼は名手で有名だが、一昨年の日米野球でのフェンス際の超ファインプレーも、私は見逃して妻に怒られたのを思い出した。間近で見られる機会など滅多に無いのに、よくよく彼とは縁が無いのかもしれない。

 5回表、これまで凌いできたツインズの先発シルバCarlos Silvaがヤンキース打線につかまった。ウィリアムスのタイムリー、シェフィールドのホームランなどで一気に5点。私はトイレに立ったついでに、ゲートに設けられてる喫煙所へ。しかし、幅4メートル、長さ20メートルほどのこのスペースに、出入りしても良い扉は中央の回転ドアだけで、その横に3つほど並んだガラス扉は締切り(鍵は掛かってない)になっている。私はそれを無理して開けて入ってしまったので、エアドーム特有の突風が一気に喫煙スペースに吹き込んだ。そこにいた人達からは一斉に大ブーイング。慌ててドアを閉めるが、これが強風のせいでなかなか閉まらない。ようやく閉めて、みんなに「ソーリー、ソーリー」と手を振ると、笑っている人もいたが、恐い顔で睨み付けてる女性もいた。端っこで小さくなって一服していると、後から来た人でも私と同じ間違いをしてる人がいた。係が持ち場を離れて、改札付近で外の係と長話してるのが一番悪いのではないか?

 6回表もヤンキースは1点を追加。ツインズもその裏コスキーCorey Koskieの犠牲フライなどで2点を返すが、7回表ヤンキースはA-Rodのツーランで突き放す。3-9でヤンキース6点のリード。勝負はついたかな?と思ったが、ツインズの奮起を期待する7thイニング・ストレッチは盛り上がった(ヤケクソ気味にも聞こえたが)。ここで私達は2人で買い物に立った。一応、座席には上着を置いておいたが、隣の爺さんとはずっと話していたので大丈夫だろう。それにしても、ここの外野席の階段は長いから上るのが大変だ。

 昨日と同じように通路の売店を見て歩く。目を付けておいたマウアーJoe Mauerの赤の背番号Tシャツを買おうと思ったが、サイズが品切れの店が続く。ツインズの背番号Tシャツは、日本で売られている物は殆ど(たぶん全部)紺地なので、赤は妻がどうしても欲しがったが、マウアー以外で赤が売ってるのは、7月末の直接3連戦中にボストンにトレードされてしまったミンケイビッチDoug Mientkiewiczだけだ。探している途中、スタンド側で時折大歓声が聞こえてきたが、何回も続くので通路越しに覗いてみると、ツインズが大反撃をしているようだ。一周してきたが無さそうなので、全く別のデザインのTシャツを買って席へ戻った。ツインズは7回裏にジョーンズJacque Jonesのタイムリー2ベース、ハンターの代わりに入ったフォードLew Fordのタイムリー3ベースなどで一気に5点をとり1点差に迫った。

 スタンドは凄い盛り上がりになってきた。みな立っているので、私達も立たないと試合が見られない状況だ。僅かにいるヤンキースファンも小さくなっているので、私達も松井の打席だけでの拍手もし難くなってきた。8回裏ツインズは、スチュワートの2点タイムリーで遂に逆転した。当然、スタンドは大騒ぎ。すぐ前に座っていた家族は、熱狂的なツインズファンのようで、夫婦に2人の子供(姉15才くらい、弟10才くらい)が夫々の友達を連れて来ているのだが、特に姉とその友人の年期の入ったユニホームは開始当初から目立っていた。彼女らは容姿が可愛い事もあって、周りの大学生っぽい男子集団がチラチラ気にしているようだったが、逆転の盛り上がりに乗じて、彼女らに握手を求める男もいた。一方、弟とその友達は「ヤンキース、サック!ヤンキース、サック!」と大声で合唱してたので笑ってしまった。

 10−9とツインズ1点リードで9回表ヤンキース最後の攻撃を迎えた。スイープが現実的なものになってきた。ファンもその瞬間をワクワクしながら待っている様子だった。しかし、今年急成長でクローザーに抜擢されたネイサンJoe Nathanがシェフィールドに同点ホームランを浴びてしまった。動揺したネイサンは後続も抑えきれず、松井には決勝打を許してしまった。落込むスタンドの中で私達も拍手をする訳にもいかず、心の中でだけ松井の活躍を喜んだ。ヤンキースはその後も追加点をあげ、その裏をリベラが難なく抑えた。ヤンキース13-10ツインズ 勝ち投手ゴードンTom Gordon 負けネイサン セーブ リベラ 松井4打数1安打1打点、シェフィールド4打数3安打5打点、ロドリゲス5打数3安打2打点、ウィリアムス5打数3安打1打点、オルルッドJohn Olerud5打数2安打1打点(以上NYY)、スチュワート5打数4安打2打点、ジョーンズ5打数2安打2打点、フォード3打数2安打1打点(以上ミネソタ)

 隣の爺さんに「松井が打ってゴメンネ」と言うと「いいんだ、いいんだ。君達もよい旅を」と言ってくれた。スタンドの階段は混み込みで通路に出るのにかなり時間がかかった。東京ドームの外野席でも同じ経験をよくするが、座席数が多いせいか時間は倍以上かかった気がする。そこを過ぎれば後はスムーズに進めて、駐車場も出易いところに停めたので、すぐに出発できた。それでも時刻は11時近い。まあ、面白いシーソーゲームを見られたのだから仕方が無い。

 行きにチェックをしておいたGSはみな閉まっていたので、ホテルを通り過ぎて別のスタンドを探す。すぐに無かったら朝にしようと思ったが、なんとか近くで開いてるスタンドを発見。こんな時間だが、元気のよい黒人の女性店員が1人で営業していた。
ホテルに戻ったのは11時半頃。荷物を整理して、風呂に入り12時半就寝。


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