7月18日


 妻が千葉ロッテのメルマガに登録してたこともあって、「ノーラン・ライアンが千葉マリンスタジアムで始球式をする」と言うニュースは、今月の初めに知りました。私は病気をする前には草野球チームに入っていたのですが、ポジションがピッチャーと言うこともあり、背番号「34」を付けていました。でも、ノーラ ン・ライアンの大ファンと言うわけではありませんでした。ケリー・ウッド、フレディー・ガルシア、フェリックス・フェルナンデスなど、メジャーで「34」を付けているピッチャーはとても多く、ピッチャーらしい番号のイメージがあったので、ユニホームを作った時に決めました。でも、年配の方には「金田かぁ?」「カネヤン!」と言われたりも してましたが・・・もちろん、こちらも大投手なので「34」ってスゴイですよね。「18」なんかよりもずっと格上だと思います。

 そんな事もあって、メジャーの一流投手のように私も『ライアンにあやかった気分』になり、「34」に思い入れもありました。その本家本元の「ピッチャーの神様」のような人が日本に来るなんて「ぜひ、一目拝みたい」と思い、聞いてすぐに行く事を決めました。

 アメリカには行ってないけど、私たちは、去年も今年も国内での野球観戦にはプロ、アマ問わずそこそこ出かけています。マリンスタジアムにも先月の交流戦で行ったばかりでした。しかし、当日は始球式の他に「アメリカン・ミート・マッチデー」と銘打ったアメリカ産の牛肉、豚肉をPRするイベントが催されており、その一環として試合前に「ノーラン・ライアン・トークショー」や「MLBクイズ」もやっているとの事で、試合はナイターでしたが、昼過ぎには家を出発しました。

 2時半過ぎにマリンに到着しました。正面前の特設ステージ周辺は、これからイベントの準備って感じでしたが、それほど驚くような人の多さではありませんでした。ここ数日、気温が低い日が続いているので、長袖の人が多いです。この日限定の「ライアン&ボビー弁当」の仮設ブースもあり、アメリカ牛肉&豚肉を使ったお弁当の宣伝をしていました。

弁当を一つだけ買って、ピクニックエリア?で開けようとしたら、すぐ後ろでストラックアウトが始まりました。これもイベントの一環です。9枚全て射抜くとライアンのサインが貰えるとの事で、妻と2人で挑戦しました。結果は私が0枚、妻が1枚でした。使用していたのがテニスボールだったので指に掛からなくて・・・と言い分はありますが、ブランクはあるとは言え情けない結果でした。

 弁当を食べようとしていたら、ステージではトークショーの告知を始めました。途端にステージ前に陣取りがはじまり、私たちも並びました。なんとか最前列を確保して、イベントの進行役から説明を聞きます。トークショーの前にMLBクイズがあるとの事。勝者には「ライアンの直筆サインボール+トークショーで直質問」だそうです。聞くまでは「クイズは有志による参加」だと思っていたので、出られる確立は低いと思ってましたが、実際には全員参加の○×クイズとの事。「よーし頑張るぞ!」と思いましたが、あくまでも拝むことが目的なので、 それほど欲はありませんでした。

 その場で座ったまま20分ほど待つと、司会者のクリステル・チアリさんが登場しました。クロード・チアリさんのお嬢さんだそうです。音楽番組かなんかで見たことがあるかも?「クイズ参加者はポールの内側に入って〜」と進行役が群衆を促します。さっきまでは30人くらいしか居なかったのに、後ろを振り向くと人垣が何重にも出来てま した。軽く200人くらいは居るのでは?でも、最初からサインや握手が目当ての人は、サークルには入らずにステージ横でベスト・ポジションの確保をしています。
クイズについての簡単な説明があり、いよいよ始まります。サインボールをゲットできるのは2人だそうです。そこまで○×で振るい落としていくのです。

 最初の問題「メジャー・リーグは現在32チームである」初歩的な問題です。誰も○には行きません。「ノーラン・ライアンのニックネームは、ザ・ロケッツ」である。「エクスプレスだよ」と答えを言ってしまう「知ったか」のせいで、みな集団移動でいっこうに減りません。

 4〜5問目だったでしょうか、「メジャーリーグで、アメリカ生まれ以外の選手が一番多いのはニューヨーク・メッツである」さあ難問です。みな「えー!」と迷ってます。私達も全く分かりません。妻と相談して「○×で分かれよう」と言うことになりました。結果は○で、私が勝ち残りました。これで、半分以上が落 ちました。サークル内もかなり空きました。

 その後、5〜6問を消化しましたが、知ってた問題ばかりだったので難なくクリアしていきました。司会者が「今、何人ですか?12人」の声で、一番ステージ側に居た私は始めて周りの状況を知りました。「けっこうもう終盤だな」サークルの外の一番前にいた妻と目が合うと「頑張れー!」とはっぱをかけられました。目は真剣です。

 その後、ライアンの故郷や生涯成績の問題が3つほど続き、いよいよ3人に絞り込まれました。私を含め、みな大人の男性です。次で2人になれば勝者確定です。トータルで11〜12問目だったでしょうか。問題「伊良部は、3人目の日本人メジャーリーガーである」ちょっと迷いましたが感覚的(ゆっくり数えてる時間はありません)に「×」にしました。他の人も動きません。しかし、司会者がちょっと困ったような笑いで正解を発表しました「答えは○です」すぐにステージ下の責任者に「どうしましょうか?」と確認し、「じゃあ、決まら ないのでクジにしましょう」と言う事になりました。

 3人ともステージに上がり、私は1番始めに箱の中のボール(ピンポン玉くらい)を引きました。「まだ見ないでください」と言われてたので、持ってる手を後ろに隠しました。3人とも引いてから「では、見せてください」で前に出すと、私と隣の男性が「赤い当たりボール」を握ってました。

 直後は「うれしい」と言うよりも信じられなくて、「どうしよう。どうしよう」と舞い上がってました。ステージの裏で進行の説明を聞いてる時も、上の空でした。ライアンに質問しているところを撮ってもらおうと、妻にカメラを渡しに行ったときに人だかりの中でスポーツ紙の取材を受けました。「やっぱり大変な事 なんだ」と徐々に実感してきました。

 ボビー・バレンタイン監督が登場し、ステージ上で簡単なライアンの紹介をし、いよいよ、ノーラン・ライアンの登場です。ベージュのアロハに茶系のズボン。現役時よりはかなり太ってますが、数年前にヒューストンからのオールスター中継で姿を見た時よりも、少し老けた感じがしました。

 私はステージ裏で待機してたので、いち早く拝むことができましたが、トークショーは裏で聞いてるしか出来ませんでした。でも、スタッフが気を利かせてくれて、斜め後ろからライアン氏を見させてもらい、トークショーの雰囲気は分かりました。

 会場には、やはりマリーンズの帽子やユニホームの人が大半でしたが、それに混ざり、テキサス・レンジャーズやヒューストン・アストロズ、カリフォルニア・エンジェルスの帽子やTシャツの人が目立ちます。私たち夫婦もレンジャーズの帽子やサンバイザーでキメてきました。そういう中で代表に選ばれたのだから、「何か気の利いた質問をしなくては」とずーっと考えてました。

 少しして、スタッフの人が賞品の包みを持ってきてくれました。「直筆サインボール」との事で、とても嬉しかったです。直後に妻からメールが入りました「サインボールGet!(^。^)」とあったので、「客席からこちらが見えるんだな」とその時は思ってました。それが、まさか・・・

 20分ほど経って、「質問コーナー」と言う事で、私たち(クイズ勝者の2名)がステージに呼ばれました。ハンドマイクを渡されている時に、いきなりバレンタイン監督が「ライアンのメッツ時代の背番号は何番ですか?」と聞いてきました。打ち合わせには全く無かったのですが、目線が私に聞いてるようです。しかし、困りました。全く検討が付きません。ライアンは確かにMLB生活をメッツでスタートさせているのですが、その後の3球団での活躍に比べたら、無いにも等しい実績(あくまでも比較としてです。ゼロと言う意味ではありません)で、私も、ユニホーム姿を目にする機会はありませんでした。だから、「メッツ時代ですか・・・参ったな。映像とかも余りありませんよね」と思わず言い訳口調で答えてしまいました。

 バレンタイン監督は、「では、レンジャーズでは?」と聞いてきたので、すぐに「34です」と答えると、監督は「当たりです」と言いました。私は「メッツでは何番だったのですか?」と聞き返すと、監督は「30番です」と教えてくれました。緊張してたので曖昧な記憶ですが、やり取りは全て日本語だったように思います。

 司会者が「では、もう一人の方・・・」と、隣に振ったので、流れ的に「え?終わり?今のが質問に取られたかな?」と思いましたが、「まあ、イイや。こんな近くで会えたのだから」と思っていました。でも、司会者が終わり際に「まだでしたよね」と質問させてくれたので、「30番と34番でどちらが好きですか?」と質問しました。さっきのバレンタイン監督とのやり取りから、その流れで出たような感じですが、舞台裏で考えてる時に最初に浮かんだ質問でした。

 会場からも笑いが漏れたが、通訳から内容を聞かされるとライアン氏もニヤニヤと笑いました。そして、通訳を介して「どちらが好きと言うのはないよ。エンジェルスからアストロズに移籍した時に、30番はすでに他の人が付けていたんだ。私は、それを無理やり自分の物にしようという気持ちは無かったので、空いている34番になったんだよ」と答えてくれました。

 「34」に思い入れのある私のような者もいれば、エンジェルス時代の「30」に強く惹かれるファンもいるでしょう。どちらも栄光の背番号には間違いありません。もしかしたら不謹慎な質問だったかもしれないが、ライアンは優しい答えをくれました。でも、たぶん答えてくれた事が事実なのでしょう。本当に良い思 いをさせてもらいました。

 私たち質問者は先に退場し、舞台裏で退場するライアン氏を見送りました。周りは海外メディアの大男が大勢います。ポールで仕切られた柵の向こうには、サインを求める人だかりになっていたので、ここでもクイズ勝者の特権をありがたく思いました。先に下りてきたバレンタイン監督と握手をしたのですが、すぐ後ろ にライアン氏が来てたので、監督には悪かったが、慌てて手を振りほどき、ライアン氏に握手を求めました。ライアン氏は「さっき、変な事を聞いた奴だな」と言うような目で、笑って握手をしてくれました。ライアン氏が立ち去ると、思わず「やった。やった!」と飛び跳ねてしまい、スタッフの人に笑わてしまいました。

 人波がバラける中を、最前列でトークショーを見ていた妻の元へ行くと、さっきのスポーツ紙の記者から取材を受けていました。手にはあの箱が・・・「君もサインボール貰ったの!?」にピースサインで答える妻。記者も「えっ?ご夫婦なんですか?スゴイですね!」と驚いています。さっきのメールは自分の事だった のか。裏からはよく分からなかったが、トークショーでも、ライアン氏の食生活やアメリカ産の肉のクイズがあったようで、妻はそれに答えてサインボールをゲットしていたようです。でも、間違った人でも貰えていたようだし、MLBクイズの難関から考えると、同じ賞品と言うのはなんか納得いかないなぁ。
スポーツ紙の人がいなくなると、次はテレビカメラを抱えた2人組が近寄ってきました。今度はAP通信です。「えっ、海外に発信されるの!?」さすがはノーラン・ライアン!

 その後、空いている三塁側内野席に入場し、ようやく「ライアン&ボビー弁当」を食べながら始球式の時を待ちました。午後6時を過ぎて、ライトポールの真下からブルペンカーでライアン登場です。一塁側ファールラインに外野まで並んだマリーンズ・ガールに見送られながら、ブルペンカーはマウンドの横までゆっくり進んできました。ライアンの服装はさっきと同じアロハシャツですが、手にはグローブをしています。

 打席にはボビー・バレ ンタイン。現役の時のように大きく左足を上げて、けっこうマジモードの投球が・・・あわやボビー直撃って感じでしたが、さすが動きの良い監督は間一髪で避けたようです。

 公式発表では16571人の入場者でしたが、始球式の時刻には全然少ない観衆でした。特に内野席は試合終盤と比べると倍以上違った感じがしました。当日はサラリーマンデーも兼ねていて、開始後もぞくぞく入場者は増えたので、始球式の時は1万切ってたかもしれませんね。でも、あれほどの選手が初来日したと言うのに、ちょっと宣伝が地味だったのか?まあ、競争率が低くなった ので、私にとってはラッキーだったのでしょうが、あのガラガラ感は、ちょっと勿体無いような気がしました。

 しかし、私としては大感動でした。ライアン氏は数年前に心臓の大手術をしたせいか? 3歳しか違わないのに、バレンタイン監督の方がかなり若く見えます。こんな遠くまでよくぞ来てくれました。まあ、なにかと問題のアメリカ産牛肉のPR活動という事で「大投手をそんなので担ぐな!」と言う批判めいた記事もネットで目にしましたが、彼の生い立ちや引退後のライフスタイルを考えれば、畜産業や食肉業が、彼にとって野球と同じか或いはそれ以上に思い入れがあるのは想像するに難しくないし、自分が手伝える事ならと、来日を自ら決断した事は、他人が とやかく言う必要は全く無いと思います。「野暮なこと言うなよ」「もっと大々的に盛り上げるべきだった」とさえ思います。あれで、アメリカ産の肉がよく売れるようになるとも思わないし、素直に歴代No1とも言える大投手の初来日を喜びたいです。自分が、良い思いをしたからそう思うのかなぁ?


4日後