6月29日

CAPE COD BASEBALL LEAGUE


ケープコッドの朝はとても気持ち良かった。2階建てのアパートのようなホテルの周りは、建物よりも背の高い木々が取り囲んでいたし、ドアも旧式なので開けっ放しにしておく事も出来た。駐車場やテラスに椅子を出して寛いでいる人も数人いた。私達は朝食をとるために、フロントの棟へ行こうとしていたが、その前にトラブルが起きてしまった。昨日からドアの閉まりが悪かったのだが、力任せに「バタン、バタン」と何回かやっていたら、ノブが取れてしまったのだ。妻を部屋に待たせて、フロントへ行き事情を話すと、係の黒人女性には部屋で待ってるように言われた。昨日のチェックインの時も彼女だったが、なんか愛想のない人だ。言われた通り待っていたが、なかなか来ないのでフロントに電話をかけた。声の感じでは違う女性だと思うが、チョット強く言ってやったので、すぐに男性従業員がやって来た。中南米系の2人組だったが、彼らは各棟の間をゴルフ場でよく使われてるカートで行き来している。ドアはすぐに直り、閉め方のコツも教えてもらった。

ようやく朝食だとフロントの棟に行ったが、肝心の食堂が見当たらない。ゲームコーナーを清掃していた中学生のような黒人従業員に尋ねたが、何の事か分からない様子だった。表に出るとカートに乗ったさっきの男性が丁度来たので聞いてみると、朝食サービスは無いと言われた。「えー、確かインターネットには載っていたのに・・・」と思ったが、確信は無かったので外で食べる事にした。と言っても隣のセブンイレブンで済ませてしまったのだが・・・。

そのまま部屋には戻らずに28号を西に向かった。今日最初の目的地コートイットは、昨日行ったファルマスまでの途中だが、ハイアニス市街は避けて、北を通る28号の本線を使った。昨日も何度か見かけたが、次の町に入る手前には「ENTRANCE ○○○」の標識がある。コートイットは大通りから外れてるので、道路標識にも町名が多く出てくるので分かりやすい。パットナム通りPutnam Av.で左折すると、交通量はグッと少なくなる。しばらく直進すると、道路中央に分岐の表示があった。地図では普通に左折するような感じだが、実際は三叉路のようになっていた。両側は殆ど森だが、徐行して数メートル行くと右側に入口があり少し奥に「Elizabeth Lowell Park」の看板が見えた。車から降りると夢のような景色が待っていた。

この球場は昨日観戦したコートイット・ケトラーズCotuit Kettleersの本拠地ローウェル・パークだが、ホームページの写真でもここが一番美しかった。バックネット裏の一部を除いて、敷地の殆どが森に囲まれている。一塁側と三塁側の結構大きい木製スタンドも、ダッグアウトも放送室も、グリーンに塗られているので、周囲に完全に同化している。ライト後方のブルペンにも行ってみたが、どこから見ても素晴らしい景色だった。私は出来るだけ高い位置から写真を撮りたかったので、階段の手すりに足をかけて2階建ての放送室の屋根に登ってしまった。初めは余裕で景色を楽しんでいたが、いざ降りる時になり下を見ると足がすくんだ。手すりに足をかけなければ降りられないが、踏み外せば2階の屋根から地面に落ちる事になる。かと言って、狭い1階通路の部分に飛び降りる勇気も到底無い。少し離れた所にいた妻を呼ぶと「馬鹿だね〜、なんで上るの」と言われるが、後ろ向きに足をかける位置を確認してもらい降りる事に・・・。しかし、「そっちじゃない、もっと右、落ちる!落ちる!」と言う声を聞くと、足が下に付く前に止めてしまう。上った時は簡単だったが、なかなか足が手摺に届かない。その繰り返しだった。本当に困ってしまった。しかしそこへ偶々パトカーが通りかかった。妻が「あれっ、停まったよ」と言うと、本当にパトカーは駐車場に入ってきた。「ヤバイッ」と思い、慌てて下に降りた。するとパトカーは出て行ってしまった。こちらを心配して来てくれたのだろうが、「なんだー、泥棒と勘違いされたのかと思ったよ」と言うと、「でも、そのおかげで降りられたね」と妻。しかし、降りる時にTシャツが捲くれ上がって、腹を屋根で擦りむいてしまった。妻に見せると「うわー」

この球場は海にも近いので、林の中を少し走り狭い私道のような所から砂浜に出た。狭いけど美しい砂浜だった。母子が一組水辺で遊んでいたが、プライベートビーチだろうか?他の人は全く居ない。100メートル足らず程の沖には、真平らの半島がこちらに向かって迫出していた。不思議な景色だ。

それから私達はケトラーズのグッズを求めてダウンタウンへ行った。ダウンタウンと言っても、他の町と比べても本当に小さくて、住宅地(別荘地?)の中に商店が数件あるだけだが・・・。「どういう店で売ってるのかな〜」と考えていたら、「Kettle Ho」と言う看板の店があったので、関係があるかと思い入ってみた。狭いけど洒落た感じのレストランだった。ケトラーズの事を尋ねると、「ワタシ、ニホンゴデキマス」と若い女性店員が言ってきた。しかし彼女も周りにいた客達もケトラーズの存在すら知らなかった。この町には避暑で来てるだけの人が多いのだろう。そこへ奥からオバサンの店員がやってきて「28号沿いのアイスクリーム屋さんに売ってるわよ」と教えてくれた。

メイン通りから28号に出ると、何軒かの店があったが検討が付かないので、突き当たりにあった郷土博物館に入った。小さいので一見普通の家みたいだが、内装は凝っていてお洒落な感じだ。海に因んだ民芸品なども売られていた。中では数人の年輩の女性が話をしていたが、私が「日本人旅行者です」と言うと、「マー、私はハンガリー人なのよ」と握手をしてきた。どこまでが客で、店員なのか分からなかったが、女性の一人が「28号を東に半マイル程行くとチェイズ・アイスクリームがあるわ。そこはケトラーズのスポンサーなのよ」と教えてくれた。言われた通りに28号を行くと、すぐにチェイズChadsはあった。中に入ろうとしたが、鍵がかかっていて入れない。ガラス越しに覗いて見たが、中は暗くて誰も居ないようだった。しかし壁にケトラーズのペナントが貼られ、小さなショーケースには帽子とTシャツが見えた。同じ建物の半分は別の店になってたので、そちらのドアを開けると、小さな事務所に女性が一人で仕事をしていた。チェイズの事を尋ねると「開店は12時よ」と教えてくれた。まだ時間はたっぷりあるので、私たちは次の町へ向かった。

28号を西へ向かうと、昨日パトカーに停められたロータリーがすぐに出てきた。今日はそこから州道151号に進む。交通量はとても少ない。両脇はだだっ広くて何も無く、遠くに森が見える景色が続く。途中信号がある交差点は2つだけで、全長約10キロの道は数分で終点近くのハイウェイ入口に着いた。28号は半島西端だけハイウェイになっていて、その真中付近から私達は北へ向かった。標識もここでは正しく「North」となっている。さすがにハイウェイは交通量が多く、大型車もたくさん走っていた。ボーン・ブリッジ手前のロータリーも大きい。1周して最後に出てくるトゥローブリッジ通りTrowbridge Rd.に進む。500メートルほど行くと左手に学校施設が、右手にグランドが見えてくる。駐車場は右折するとすぐにあった。

この球場が10番目で、これで全て訪問した事になる。ボーン・ブレ−ブスBourne Bravesの本拠地コーディー・スクール・フィールドCoady School Fieldからは、東側の森の向こうにボーンブリッジがよく見えた。これは大きな「売り」だと私は思う。グランドに出ると年輩の男性が水撒き、若い男性が用具の整理をしていた。若い方に「選手ですか?」と尋ねると、「そうだ」と言うので、「外野手?」と聞くと、「いや、ピッチャーだ」と言う答え。選手のポジションを聞くのは3回目だが、全部外してしまっている。体型と顔つきで見てるつもりなのだが・・・。彼は17番のパトリック・マーレィPatrick Murrayだが、仕事が済むと自転車に乗ってサッサと帰ってしまった。私達は時間があるので少し長くいた。ここは普段は高校の野球チームが使ってるらしくて、レフト後方のスコアボードには「Home of the Canalmen」と書いてある。デザインも他の球場のとは若干違う。観客席はバックネットの両脇に木製の小さな物しかないが、三塁側の丘の上からの方が眺めは良さそうだ。

まだ時間は大分あったので、151号まで戻るとイーストファルマスEast Falmouth付近の一般道に入り田舎町をドライブした。所々に農園の看板が出ていて、農産物を直売したりしているようだ。看板もそうだがカラフルな家も多い。日本の農村の景色とは大分違う。28号に再び出て東に向かった。

チェイズ・アイスクリームには12時10分前に着いたが、開店待ちの客数人が車で乗り付けていた。時間になり開いたので中に入ると、手前のスペースにはケープコッドのお土産コーナーもあり、壁にはケトラーズの絵や写真も貼ってあった。店員は一人だけで、アイスを買う10人程の列がすぐに出来てしまったので、私達はお土産コーナーを見ていた。子供の客は野球チームのヘルメット型のカップにアイスを入れてもらっていた。壁の見本ではメジャー30球団全てあるようだった。客は後からも何人か来たが、15分くらいで掃けたので店員に「ケトラーズのグッズが欲しい」と言うと、「ごめんなさい。私はその権限が無いので、グッズは販売出来ないんです」と言われた。そう言えば女子高生ぐらいに見えるのでアルバイトなのだろうか?「権限を持った人はいつ来るの?」と聞くと、「今日は私だけです」と言われた。残念だが仕方が無い。私たちもアイスを買って帰ることにした。特性カップにはケトラーズのヘルメットもあったので、それに入れてもらった。車を汚すと嫌なので外のベンチで食べたが、すごく甘かったが美味かった。

28号でウェストヤ−マスに戻り、ホテルの近くのゴールデン・ボーイGolden Boyと言うレストランで昼食にした。ファミレスのような作りだが、入ってすぐのカウンターで注文して先払いなので、ファーストフードの要素もある。しかしメニューは本格的なロブスターもあった。せっかくなのでロブスターと大アサリの盛り合わせとクラムチャウダーを注文した。それに飲み物をたのみ30ドルチョットだった。飲み物だけを自分でテーブルに持っていき、ロブスターが来るのを待った。入った時はガラガラだったが、徐々に客が増えテーブルは半分近く埋まった。みな軽めの物を食べてるようで、ロブスターなんか食べてる人は居なかった。注文した時の女性店員がロブスターを持ってきた。大きくて立派なものだったが、紙皿に乗っていてスプーンやフォークはプラスチックだった。クラムチャウダーも発泡スチロール製の容器に入っていた。大あさりには2種類の付け汁が付いていたが、一つはオリーブオイルで、もう一つは味の無い白く濁った物だった。クラムチャウダーは美味かったが、ロブスターとアサリはイマイチだった。時間は3時すこし前。今日も2試合観戦予定だが、試合開始まで時間があるのでホテルに戻り休憩した。

4時過ぎにブリュ−スターに出発したが、途中ヤ−マスのスポーツ店とカードショップ。それにサウスデニスのバッティングセンターに寄った。みな野球関連の商品を扱ってる所なので、もしかしたらケープコッド・リーグの物もあるかなと思ったが、残念ながら無かった。色々寄り道したが、昨日下見に来てるので、グランドのある学校には開始10分前に到着した。

Cape Cod League

BREWSTER WHITECAPS VS WAREHAM GATEMEN

昨日はゲートが閉められていたので裏を通ったが、校舎の南側の綺麗な駐車場からは、サッカー場の横を通り最短でグランドまで行く事が出来た。グランドは一段低い場所にあるが、そのお陰で一塁側ダッグアウトの後ろは広―い土手の観覧席になっていた。所々に木製の長椅子が置かれてるが、殆どの人は芝に座っていた。全ての球場に在った1階売店/2階放送席の建物は、この球場はネット裏ではなくて土手の上にあった。1塁ダッグアウトの屋根には「2000 CHAMPIONS」と書かれている。ホワイトキャップスは去年の優勝チームらしい。対戦相手のワーハム・ゲートメンは昨日一番最初に訪問したチームだが、入口で貰ったメンバー表で確認すると、昨日の二人組はエリック・リードEric Reedとトッド・デイニンジャーTodd Deininger(共にテキサス農工大Texas A&M)だった。人の名前も聞き取れないとは、英語耳の未熟さを感じてしまう。国家斉唱が終わりプレーボールになった。先攻のワーハムのトップバッターは背番号2エリック・リードだ。

ブリュースターのユニホームは下が白、上は明るい青緑のユニホームだ。以前本で見た写真とはデザインが随分変わっていた。ワーハムは上が薄いエンジ、下は白だった。売店で売ってるTシャツや帽子はサイズも種類も少なくて、昨日の2チームに比べると値段は同じ位だが、デザインや作りもショボい物だった。

私達は1塁芝生席で隣にいた家族連れと暫く話をしながら観戦していたが、別方向からも見たいので妻を残してライト後方から回っていった。このグランドはファルマスと同じく全体的には長方形で、センターからライトのフェンスの後ろはスペースが余っている。その更に後方には数面のテニスコートがあった。グランドではリードがセンターを守っていたので、後ろから「ヘイ、リード」と呼ぶと、彼はグラブをこちら方向に向け応えてくれた。グランドの北側は森になってるので、レフトフェンスの後ろはやっと歩けるくらいのスペースしかない。ポール付近は金網や角材が落ちていてチョット危ない。まぁこの辺に来る客も滅多に居ないんでしょうけど・・・。

ファウルグランドに出ると、すぐにワーハムのブルペンがあって、数人の選手が座っていた。投球練習は誰もしていない。トッド・デイニンジャーが居たので近くに行くと、向こうも気が付いていたようで「やあ」と声を掛けてくれた。彼は他の選手に「昨日グランドに来て話した人だよ」と私の事を紹介してくれた。写真を撮らせてくれと言うと、トッドが「俺だけを撮ってくれ」と言ったので、隣の選手が「皆でだろ?」と私に確認してきた。勿論みんなでだ。私はケープコッド・リーグのTシャツ(チーム名は無い物)を着てたので、その背中にブルペンの皆にサインもして貰ったのだが、トッドはまたも「俺だけじゃないの?」と不満そうだった。それから15番の選手だけは「僕は選手じゃなくて、ブルペン捕手なのでサインは出来ないよ」と言ってきた。みんな「ハハハッ」と苦笑いと言った感じだったが、「君のサインも欲しい」と言って書いてもらった。サインを貰うのは有名になりそうな選手だからと言うよりは、思い出としての比重が大きいのでブルペン捕手だろうと大歓迎だ。帰ってから確認すると、彼はワーハム高校のクレイグ・デビッドソンCraig Davidsonだった。体が大きかったので選ばれなかった大学生が手伝いに来てるのかと思っていたが、高校生としては良い経験をしてるのではないだろうか。彼だって将来良い選手になる可能性は0とは言い切れない。それから一緒にいた中でパット・ネシックPat Neshik(バトラー大)は、私がかぶっていた西武ライオンズの帽子を見て「サイブだろ、知ってるよ。日本のプロチームだ」と言ってくれた。

私は3塁ダッグアウトの裏の茂みを通ってネット裏に戻ってきた。茂みには細い通路が通っていたが、ファウルボールがその中に飛んで行くと、数人の子供達が一斉に飛び込んでボール探しの競争になる。その中には女の子も居た。ネット裏にはスピードガンを持ったスカウトらしき人が数人来ていた。妻がやって来て「ワーハムの帽子の人が居るよ」と教えてくれた。ネット裏から少し1塁寄りの土手に、黒に赤字でWの帽子のオジさんが座っていた。当然ながら地元以外のグッズは売られてない。隣に腰をおろして声をかけると、「ちょっとスコア付けてるから待って」とオジさん。邪魔しちゃ悪いので、無言でジー-ッと待つ。バックネットの反対側の妻は「何やってるの!?」といった顔でこっちを見てる。イニングの合間になって「なにかね?」と聞いてきたので、ワーハムの帽子が欲しいと言うと、「ワーハムでの試合なら売ってるから、見に来たら私が買ってあげるよ」と言ってくれたが、「明日の朝ケープコッドを離れるんです。その帽子ではダメですか?」と言うと、「私のはサイズが大きいよ」と帽子をとって見せた。7ハーフだったので、「大丈夫、これと交換しましょう」と西武の帽子を渡した。するとオジさんは「セイブじゃないか。私は前に日本で働いてたんだ」と言った。こんな小さな町の野球場で西武ライオンズを知ってるアメリカ人に二人も会うとは、「やるなー西武!」と思った。

それからはネット寄りの3塁側で立って観戦していたが、試合は5回にワーハムが先制し、1-0の投手戦は早いペースで進んでいった。この感じなら7時開始のチャタムにも早く行けそうだと思っていたが、終盤ブリュースターは先発が打ち込まれ投手も2回交代させた。7thイニングストレッチは何もやらなかった。いつもなら残念と思うのだろうが、この時は「早く次の回、次の回」と思っていた。8回表でワーハムは5-0とリード。8回裏からは、ここまで好投の先発投手に代わってトッド・デイニンジャーがマウンドに上がった。

9回表にそれまで2塁打1本のリードが、最後の打席で内野のエラーで出塁した。送りバントで2塁に進み、浅いヒットでホームを駆け抜け俊足ぶりを披露してくれた。デイニンジャーは8、9回で三振3つを奪い出塁も許さなかった。内容も良かったが、マウンドでも堂々としていて将来が楽しみだ。試合は6−0でワーハムが勝った。勝ち投手マーク・マイケルMark Michael(ケンタッキー大)、負けマイケル・ウィールMichael Weel(オースチン大)。

監督の訓示が終わり、私はリードの元へ駆け寄った。「ナイスラン」と握手を求めると、「ありがとう」とリード。「顔が真剣で、昨日とは別人みたいだね」と言うと、ようやくニコッとした。帽子のツバにサインを貰い、今度はデイニンジャーの所に。「ナイスピッチング」と言って帽子にサインを求めると、「どうしたんだ、これ?」と聞かれたので、「君にサインを貰う為にゲットしたんだよ」と言うと、リードのサインを指して「エリックのもあるじゃないか」と言ったので、「当番の相棒なんだから良いじゃないか」と言うと、笑いながらリードの隣にサインを書いてくれた。

土手を登るときに帽子を交換したオジさんがいたので、もう一度お礼を言って、一緒に写真を撮った。駐車場に行くとワーハムの選手達がバスの前でサンドイッチやホットドッグをパクついてた。「早い」と思うかも知れないが、敵地ではサインを求められる選手は少ないので、終わったらサッサと帰り支度をするようだ。移動で使うのは一般のスクールバスだ。次の試合はもう始まってるので、私達は急いで学校を後にした。

Cape Cod League 

CHATHAM ATHLETICS VS ORLEANS CARDINALS

クイーンアン通りを昨日とは逆に向かい、チャタムには20分ほどで到着した。しかし、学校裏の駐車場は満車だった。昨日のファルマストは違い、殆どが野球を見に来てる人なので、途中で出て行く車も無さそうだ。「困ったなー、今日はホントに交替で見に行かなくちゃかな」と思っていたが、一番奥の端っこにギリギリ1台停められそうなスペースを発見。アメリカ人なら絶対に停めないのだろうが、狭い車庫に慣れてる日本人には楽勝だ。バスケの子供達の注目の中?バックで駐車して、土手の上の球場へ急いだ。日はすっかり落ちて、徐々に暗くなってきたところだ。

試合は3回が終わり2-1でチャタムがリードしていた。チャタムは昨日と同じ青と白のユニホーム。オーリンズは上が赤、下が白のユニホームだ。この球場は観客席も多いが、それが殆ど埋まっている。ライトからセンターにかけての土手の芝生席でも観戦者がポツラポツラいて、グランド全体に活気があった。私はいつものように1塁方向からグランドの周りを歩き始めた。1塁ダッグアウトからライト方向に、金網に沿って簡素な金属製のスタンドが大小4つあり、その後ろは子供が遊ぶ木製のお城があった。結構大きい物だ。外野の土手に上がると、後方を通る道路にも住宅地にも意外に近い。下からでは全く気が付かなかった。マットを敷いてピクニックの人、ビーチベッドで寛ぐ人。のんびり観戦するには外野席が良いだろう。

左中間で土手を降りると森があり、その前にスコアボードがあるのだが、ここのはイニング毎に表示するタイプで、大きくて綺麗で、電球が切れてる箇所もなかった。レフトポールから外に出ると、サッカーゴールが置いてあり、中学生くらいの子が数人遊んでいた。その後ろの小屋には古いスコアボード(他の球場と同じ型)が立てかけてあった。映画サマーキャッチ"Summer Catch"の主人公はこのチーム在籍と言う設定なので、ロケは主にこの球場で行われたのだろう。スコアボード以外にもトイレ、壁、小屋の屋根のバット人形など、よく見ると映画仕様か?と思わせる所が随分ある。3塁側のスタンドも数が揃っていてバランスが良い。「まさかこれも映画の・・・」と思ってしまうが、他の球場とは明らかに違う。ネット裏に戻ると妻が「グッズが凄いよ」と言うので見に行くと、品数の多さにビックリ。Tシャツや帽子も数種類あって、他では見なかったバッチ、ペナント、キーホルダーまであった。売店も仮設テントを使ってたので、広くて店員も多かった。

なかなか空いてる席が無かったが、主に1塁側の外野寄りに座って観戦していた。この辺の席では、試合に集中してる人は少なくて、話をしていたり、子供と遊んでいたりしている人が多かった。犬を連れて来てる人も何人かいた。こういう雰囲気も結構好きだ。かなり暗くなったが、ライト後方は凄い夕焼けだった。昼間から涼しかったが、夜は結構冷えてくる。ボストンでは「持って来るんじゃなかった」と思っていた長袖シャツも「持って来て絶対正解」となった。その後チャタムは着々と追加点をしていったが、そのたびに球場は盛り上がった。でも距離的に近いので、一塁側にはオーリンズファンも結構応援に来ていた。7th イニングストレッチは行われず、7回が終わり5-2でチャタムリード。

私達はグッズを買いに再びテントの売店へ。どれを買うか検討は付けていたが、種類が多いので結局迷う事に。でも、断ったり変えてもらったりしても、店員は嫌な顔一つせずに対応してくれた。見た目は女子高生のような感じだったが、接客の様子ではもう少し上か?「他の球場では、こんなに商品は無かったけど、映画の影響?」と聞くと、「それもあるけど、ここは元々人気があるのよ」 と店員。「ここが一番?」と聞くと、「プロビンスタウンが一番よ」と言った。「オイオイ、そこは野球チームは無いだろ」と思ったが、後ろにいた別の女の子が「野球ではここが一番よ。それとコートイットかな」と言い、他の女の子達も頷いていた。彼女達はケープコッド自体の事も素晴らしい所だとアピールしてくてた。特に気候の良い夏が一番の自慢なのだそうだ。私は夜はチョット寒すぎると思ったが・・・。グランドではオーリンズが最後に粘っているようだったが、まもなく終了となり、チャタムが5-4で逃げ切った。勝ち投手ダニエル・ムーアDaniel Moore(ノースカロライナ大)、負けブレット・ルイスBrett Lewis(南ジョージア大)

ここでも試合後はファンがグランドに入り、選手にサインを貰うのだが、ファンの人数が多いので、選手を囲む円もアチコチで出来ていた。私達も3〜4人の選手にサインを貰った。徐々にバラけてきて、ネット越しに知り合いと談笑する選手が何人かいたが、その知り合いはガールフレンドとかではなくて、40〜50代の夫婦とか、それに子供を加えた家族のパターンだった。ホームスティ先の家族か?それとも本当の親が遠くまで見に来てるのか?定かではないが、サインや写真を求められると、会話中でも一旦止めて、ファンの要望に応じている選手を、「家族?」は嬉しそうに見守っていた。
帰りは28号一本でホテルまで帰った。隣のコンビニで軽い食物を買って部屋に戻った。午後10時30分


ワーハム・ゲートメン(西地区)とチャタム・アスレチックス(東地区)は各々地区優勝し、8月9日〜12日の優勝戦で激突しました。
結果は2勝1敗でワーハムが見事2001年の優勝チームとなりました。
エリック・リード(ワーハム)はセンターでベストナインに選ばれました。

2002年6月 MLBのドラフト会議で、エリック・リードとトッド・デイニンジャーはフロリダ・マーリンズとシカゴ・ホワイトソックスから、それぞれ9巡目で指名されました。他のケープコッド・リーグの選手も多数指名されています。

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