6月23日(2)

   Pacific Coast League(AAA) 

TACOMA RAINIERS VS TUCSON SIDEWIDERS

タコマ・レイニアーズ            ツーソン・サイドワインダース

Cheney Stadium  Tacoma , WA(ワシントン州 タコマ)


 5号に乗ってからはスムーズに流れていた。順調にいけばタコマへは40分くらいで着くはずなので、ホテルで少し休みたい。進行方向正面には、たまにMtレーニアも見える。シアトルは例年だと雨季はとっくに終わっている時期だが、今年は6月に入っても晴れない日が多かったようだ。出発前の10日間くらいは毎日のように、このエリアの天気を確認していたが、山が見られる確信は無かった。でも、この感じなら明日は期待しても良いのでは?一応、旅行の工程は何パターンか考えてきたが、野球のゲーム・スケジュールとの絡みもあるので動かせない日もある。明日、山に登れれば後が楽なのだが...

!甘かった。シーテック空港の手前でノロノロになる。「そんなに飛行機に乗る奴がいるのか?」少し行くと全く動かなくなり、皮肉にもレーニアの写真が撮り易くなる。シーテックを過ぎると多少は走ったが、暫くするとまたまた大渋滞。フェデラルウェイFederal Way、タコマへと向かう車なのだろうか。「もうラッシュの時間なのか?」カリフォルニアで経験しているカープール(2人以上乗車の車だけ走れる車線)を走るも、違反してる車も多いようでスムーズに走れない。もし飛行機が遅れたり、入国審査やレンタカー手続きに戸惑ったりして、マリナーズ戦がギリギリだったら、フェデラルウェイでAAA(全米自動車協会)に寄ろうと思っていたが、ゲーム前に済ませてきて良かった。こんな所で下りたら更に30分〜1時間は余計にかかっていただろう。

 インターステート5号は一昨年カリフォルニアでも走っているが、西海岸全域を縦断する代表的なハイウェイだ。シアトル−タコマ間も片側5〜6車線の大動脈だが、渋滞の酷さも有名らしい。ナビの役目は当分無いが、寝るわけにもいかず、出来るだけ妻に話しかける。妻は「大丈夫」とは言っているが、顔は眠そうだ。

 タコマ市内に入り、705号、7号との分岐の手前で巨大なドームが目の前に飛び混んで来た。地図には「Tacoma Dome」とあるが、綺麗でかなり立派なものだ。マイナー.チームでもAAAクラスがある街あたりになると、他のプロスポーツの本拠地になっている事は珍しくは無いが、タコマの名をNBAや NHLで聞いた覚えは無い。「すごいねぇ」「なんだろうね?」と眠気覚ましのイイ話題になった。後日確認すると、タコマ・ドームは、学生スポーツ、プロスポーツ(本拠ではない)、コンサート等で幅広く使われているそうだ。2万人以上の収容能力があり、なんと世界最大級の木造ドームなのだそうだ。

 706号、16号と市街地へ行く道との分岐を過ぎると、多少走れるようになった。ホテルに向かうには84th St で下りるのだが、74thと84thの出口は一緒になっていて、先の84thには側道で行くように地図にも書いてある。しかし、74thで下りると、側道への曲がり口がハイウェイ入口のように見えて、つい通り過ぎてしまう。ちょっと遠回りだが、そのまま西へ進みタコマ通りTacoma Wayから84th通りを引き返す事に。陸橋で5号を渡る時に、東側のモーテル看板がたくさん見えホッとした。ホスマー通りHosmer Stを右折すると、すぐに今夜の宿エコノロッジ・タコマEcono Lodge Tacomaがあった。

 ホテル着5時半過ぎ。シアトルを出発してから1時間半もかかってしまった。すぐにチェックインするが、フロントの女性は何故か?ヒゲを生やしている。インド系にも見えるが黒人なのか?まさかアボリジニ?細長い形のホテルで、部屋は裏の奥の1階。ネットで安く予約すると、たいてい遠い部屋にされる。荷物を降ろし、休憩もそこそこに、6時に球場に向かう。ベッドに横になればすぐに寝てしまいそうだが、ここで起きてた方が時差ボケは早く解消されるのだ。雲も多いが日はまだまだ高い。

 来た時と同じように、84th通りからタコマ通りへ。混んでる5号はもう使いたくない。そのまま北へ暫く進む。この辺りはダウンタウンではないが、そこそこ店もあって賑やかな通りだ。45、43、40と、交差する通りは数字の名前。「38を過ぎたらユニオン通りに入るよ」と妻に指示するが、ユニオン通りUnion Avは高架だったので一瞬戸惑う(地図では立体交差だと分からない)。それでも、道は空いてるので、ゆっくりと小さな立体交差に入れた。北に進みセンター通りを左折すると、急に交通量は多くなった。夕方なので、これが普通なのだろう。

 ピュージェット湾Puget Soundの奥深く、小さく尖った半島に市の中心があるタコマ市は、半島東側のコメンスメント湾Commencement Bayを擁し、古くから海陸輸送の拠点として栄え、漁業、製材業、造船業も盛んだそうだ。日本との関わりも古く、20世紀初頭には多くの移民が渡り住んだ。タコマ市が属するピアース郡Pierce Countyの南に位置する、ワシントン州の象徴とも言うべきレニア山を、日系人らが、その形から「タコマ富士」と呼んだのは余りにも有名。また、先住民がレニア山を「タホマTahoma」と呼んだ事が、タコマの語源とも言われているが、タコマという地名はアメリカの他の地域にも5〜6個あるから、ホントはどうなのだろう?

 タイラー通りTyler Stで右折し、坂を上がりながら高架を潜ると左手目前に土手が見えた。その土手に何か文字が書いてあり「CH・・・」(たぶん球場名)「ここだ!左、左!」と、慌てて妻に指示。土手の上には小さな野球のグランドも見えた。曲がったところが広い駐車場で奥に球場。けっこう平たくて角ばった形。それにとても古い感じだ。平日だが続々車が訪れている。チケット売り場もとても賑やかだ。Reserved($7)を購入。1番高いBoxでも12ドルなので、このクラスにしては安い方だと思う。

 チケット売場横の正面入口を入ると、マスコットのルバーブRHUBARBくんが愛想を振りまいていた。直訳すると植物の名前のようだが、どうやら彼はトナカイらしい。着ているレイニアーズのユニホームもマリナーズに似ているので、どう見てもムース(マリナーズのマスコット)の偽物に見える。でも、トナカイとムース(ヘラ鹿)は実際には違う動物のようだ(常識?)。場内にはバルーン遊具も多く、子供がたくさん遊んでいた。

 マリナーズのAAAチーム、タコマ・レイニアーズ。レーニア山をチーム名にしていると言うのは、これ以上ない素晴らしい選択だと思うが、実はこの名前を使ったのはシアトルが先で、リーグ創生期(20世紀初頭)からパシフィック・コースト・リーグ(以下PCL)に参加していたシアトル球団が、メジャー球団誕生までの長い年月の間に、何回か「レイニアーズ」を名乗っている。くしくも私達の旅行中、サンディエゴでの交流戦(6月26日)に、なんと、マリナーズは、「シアトル・レイニアーズSeattle Rainiers」のユニホームで臨んだ。勿論、イチローもオールド・スタイルのユニホームを喜んで着てプレーしたそうだ。

 一方、タコマでもその間、地元チームはしっかり存在し、60年代からは現組織のPCLに参加している。当時はジャイアンツ、カブス、ツインズ、ヤンキース等と、母体チームの名前をそのまま使う事が大半だったが、レイニアーズになる前の15年間は、タコマ球団誕生当初のタイガースを名乗っている。グッズ売場ではレイニアーズに並んで、タイガースの物も売られているが、これは決して売れ残りではなく、地元の思い入れが「タコマ・タイガースTacoma Tigers」(ちなみにデトロイト傘下になった事は1度も無い)にもあるからのようだ。そして、95年からは現在の「タコマ・レイニアーズ」に。マリナーズ傘下になったのもこの年だ。(※シアトルもタコマも更に下部リーグのノースウェスト・リーグ所属の時代も何度かあり、上に書いた以上に歴史は複雑)

 本拠地チェイニー・スタジアムは、1960年オープンの古い球場で、長く球団の歴史を見守ってきた。球場の1塁側壁面には「Tacoma Baseball Hall of Fame」(タコマ野球殿堂)のプレートが飾られ、また、3塁側には、過去のチームの変遷が一目で分かる、夫々のユニホーム姿の壁画が描かれている。

 スタンドに出ると、両チームの選手たちがウォームアップ中。流石にこのクラスだと、メジャー経験のある選手が多く見られる。レイニアーズ側には木田優夫の姿もあった。彼は兎も角、オリボMiguel Olivo、スピージオScott Spiezioは、「なにやってるんだ、こんなところで!」と、思わず言いたくなる。スピージオの場合には今年、1塁と3塁に大物選手が入った事で、ポジションを追われた格好だが、代打でもDHでも、はたまたレギュラー争いでも、上で働くべき選手だ。オリボは去年途中からトレードでやってきた選手だが、前チーム(シカゴW)ではレギュラーだったはず。ボーダーズPat Bordersのような、超ベテランにポジションを奪われるとは。ウィルソンDan Wilsonにしてももうイイ年なんだから、今年はオリーボ中心で行くのかと期待してたのに、こんな所で見るとは思っていなかった。早く戻って低迷するチームを助けて欲しいもんだ。

 背番号50のオリーボとキャッチーボールしてるのは、今日の先発ロレインAndrew Lorraine。メジャー経験もある選手だが、彼についての予備知識は殆ど無かった。妻は、「ガルシアパーラに似てる」と言って「弟?」と聞いてきたが、「ピッチャーじゃないから違うだろ。それに、まだシングルAのはずだよ」ガルシアパーラ(カブス)の実弟、マイケル・ガルシアパーラ内野手Michael Garciaparraはマリナーズ傘下のサンベルナルディーノInland Empire 66ers所属。私に言わせると、ロレインの風貌は、ガルシアパーラと言うよりも、今話題のピアノマンって感じ。

 時刻は7時前だが、まだまだ日は高い。3塁側のスタンドからは、またもクッキリとレーニアが姿を見せている。「球場からも見えるのか」尚更、ナイスなチーム名だと実感。子供が始球式をして、ママさんコーラスの国歌斉唱。とても、上手くて妻も感動「やっぱり、マイナーの雰囲気はイイね」だそうだ。スタンドは4分の1くらいの入り。外のバーベキュー組の方が断然賑やかだ。入場料は当然違うのだろうが(外は無料?)、チェックが甘く入ってきてしまう人もいるようだ。でも、ずっとはいないようだが。

 対戦相手のサイドワインダーズはアリゾナ・ダイヤモンドバックス傘下のチーム。本拠地のツーソンもアリゾナ州にあり、メキシコ国境から僅か100キロほどの町だ。AAAともなるとチーム分布も広範囲だ。サイドワインダーとは、やはりガラガラヘビの事だが、ダイヤモンドバックス(菱紋ガラガラヘビ)とは別の種類なのか?ロゴマークのヘビにもそれっぽい模様は入ってるが。動物の事はよく分からない。こちらもライテンバーグKerry Ligtenberg、アルマンザArmando Almanza、コプラブMike Koploveなどメジャー実績のある選手がいた。

 2回裏、タコマは7番にはいるオリーボのタイムリーなどで2点を取る。先制のホームを踏んだのは、これもメジャー実績のある捕手ウィキ・ゴンザレスWiki Gonzalez。今日はDHで5番を打っていた。私達はネット裏の上の方で見ていたが、内側から見ても、柱も梁もとても古く、屋根が落ちないか心配になる。バックネットは客席の上にもネットがあり、四角くネット裏を覆ってる。まるで鳥小屋のようだ。扇の中心も長すぎるような気がする。野球場的に見ると、バランスが少し変。

 ローレインは快調に回を重ねて、5回までヒット2本に抑える好投を見せていた。一方打線はランナーは出るが、その後無得点。レーニアは益々クッキリと見えるようになってきた。シアトルや5号から見た時よりも、場所的に近いのだろうが、それよりも天気が良くなってる感じがする。とは言っても陽が傾いてきて少し寒くなってきた。移動疲れで、眠いし、体もダルい。妻がプリッツェルPretzelと言う食物を買ってきた。ナチョスのチーズが入った温かいベーグルだ。ピリッとして、とても美味い。

 座席にはかなり余裕があるので、風の来ないネット裏中央に移動する。この辺の一部(100席くらいはあったか?)の座席は、木製のとても古い椅子だ。座るとちょっとベトベトする。これらの椅子席は建設時に、サンフランシスコ・シールズSan Francisco Sealsの本拠地だったシールズ・スタジアムSeals Stadiumから持ってきた物だそうだ。そして、その最前列(ネット裏最前列ではなく、通路を挟んだ一番前)には、球場建設と連盟加盟に大きく貢献したベン・チェイニーBen Cheney氏の銅像が腰掛けている。近くに行くまで銅像だと気付かずにいた私は、目の前で見て「ギョッ!」としてしまった。その隣には2人の老婦人が座っていて、時おり像の手を触ったりしていたが、氏との関係は不明。

 近くに座っていた初老のオジサンが、私の被ってるBWの帽子を見て話しかけてきた。「よく知ってるねぇ」と、トレーナーも脱いでイチローTも見せてやると、「知ってるぞ、俺はブルーウェーブを知ってるよ」と、何度も言っていた。7thイニング・ストレッチが終わってからグッズを見に行く。7回表終了、2-0でタコマがリード。

 ショップは3塁側の側面にくっついてるのと、正面入口横にある小屋の2箇所。本店だと思われる3塁側の店で、Tシャツなどを見ていたが、ジャンバーを買うかで悩む。選手が着ているのと同じもので値段は180ドル。胸にRainiers、肩にマリナーズのマーク、全刺繍で、とてもカッコ良い。来る前に気温なども調べていたので、ナイターは絶対寒いと思っていた。最初のうちに観戦するタコマやヤキマでは、ジャンバーを買う事も十分考えにあった。決して衝動買いのような思いではないのだが・・・妻は「日本で着るの?」「2万だよ」と牽制する。相当悩んだが購入を見送る。まあ、寒さは少し心配だが、9時過ぎまで明るい事もあり、トレーナーだけでも大丈夫そうだ。結局、買ったのはペナントとキャップとTシャツ。Tシャツはロゴのあるものが良かったが、サイズが無かったので、ニキビ顔の女性店員が、外の小屋まで見に行ってくれた。もし、無かったら「ジャンバーを買おう」としつこく思っていたが、彼女は紺とグレー両方持って戻って来た。サイズもあったようだ。グレーを購入。

 それにしても、正面入口付近はスタンド以上の賑やかさだ。10代と思われる白人娘は、寒いので毛布を纏っているのだが、中は信じられないような薄着。どう見ても男を引っ掛けに来ている感じ。似たような娘は何人か見かけた。それから、フード店の横で、さっきの歴史的な木製椅子が、1個単位で売りに出されていた。

 スタンドに戻ると、もう9回でロレインがまだ投げている。さっきまで、ブルペンで椅子に座っていた木田が投球練習をしていた。彼は最年長の貫禄で若手を纏めているようにも見えたが、私の「頑張れー!」にも、気取って手を上げて応えていた。

 結局、ロレインは最後まで投げ切り、レイニアーズの勝利となった。タコマ3−0ツーソン 勝ち投手ロレイン 負けミチャラクChris Michalak スピージオ3打数1安打、オリーボ3打数1安打、サンチアゴRamon Santiago4打数1安打、ニュネスAbraham Nunez3打数ノーヒット(以上タコマ)、ケイタMatt Kata4打数ノーヒット、ブリトーJuan Brito3打数ノーヒット(以上ツーソン)

 帰りになり、やっと暗くなってきた。行きと同じ道で帰る。ユニオン通りの立体交差も、分かってれば問題ない。来る時は気が付かなかったが、タコマ通りは信じられないくらい自動車屋が多い。ディーラーに中古車屋、レンタカー会社も集中してる。これだけの通りなら1軒くらいスーパーがあってもよさそうだが、見事に車屋だけだ。タコマ・モールの裏手も通るが、食料品があるか分からないのでパス。84th通りとの角にあるタコベルTaco bellに寄る。流石にもう真っ暗、さっきまで明るかったとは言え、もうすぐ10時だ。

 ドライブスルーもあったが、間違えても嫌なので店内に。カウンターの店員は、一見不真面目そうな青年だが、応対は丁寧だった。よく説明してくれ10個入りタコスを買った。9ドルとお買得で、明日山に持っていくのに丁度良い。タコベルからホテルへは、初めて私が運転した。時間が時間なので道はガラガラだったが、駐車場は夕方よりも混んでいて、表通りに面した方しか開いてなかった。ホテルの自販機でジュースを買って部屋へ。風呂に入り、タコス、ドーナツを食べて、12時に寝る。嬉しい事にここのシャワーはホース式だった。たぶんアメリカで初めて。


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