心の病

はじめに
鍼灸院を訪れる患者さんには、うつ病やパニック障害、自律神経失調症など心の病で、来院される方があります。心の病には(うつ病 不安神経症、自律神経失調症、パニック障害、恐怖症)など様々の病名があります。
原因と症状
「心の病」の原因としては、心的ストレス、手術や投薬の影響、病気による随伴症状などがある。
鍼灸治療では、心的ストレスが原因の「心の病」が主に治療対象となる。ストレスの原因が特定できるものは、その原因を取り除くことが大切なのだが、現実の社会生活では、原因が分かっていても、排除することが難しい事の方が多く、その為に、長期にわたるストレス状態が、日常生生活に支障を来たすほどの心の病となる。
「心の病」の症状としては、精神症状と身体症状の2つがある。精神症状としては、全身倦怠感、ゆううつ感、無気力感、不安感、イライラ感など。身体症状としては、睡眠障害、食欲の減退、性欲減退、自律神経症状(頭痛,動悸、めまい感、呼吸減弱、振るえ、肩首の凝り)などがある。
東洋医学的アプローチ
心の病は、概ね、気の停滞、五臓のそれぞれの七情(思・怒・喜・憂・恐・驚・悲)の感情の偏りが、精気を消耗し、不足を起こすことが原因と考える。
例えば、肝で説明すると、東洋医学では、肝は血を蔵すると考えられている。「志にありては、怒となす。怒は肝を傷る」と古書にある。怒るという感情は、肝の生理的な感情であり、怒るという感情のエネルギーは肝の蔵してる血を必要とする。行き過ぎた場合に、血は消耗されて、体内に陽熱が停滞することで、不眠、イライラ感、倦怠感などの症状として現れる。
これが続くと、血の消耗がますます激しくなり、怒るから恐れるに変わってくる。過剰な陽熱が上実下虚を引き起こし、腰から下の安定を失わせることが一因であり、これにより、腎の精気も影響を受けるのでさらに消極的になって、人と会うのが嫌になったり、外出を嫌うようになり引きこもりがちになる。
心の病と鍼灸治療
症状の軽減には、陽熱を発散させて、疎通を改善すること、そして、気の消耗を補う目的で鍼灸治療をおこなう。全体療法として、自律神経の働きを調整し、気血水の流れを整える治療を行う。治療後には、足先が暖まり、大きなゆったりとした呼吸ができるようになれば、効果が上がってくる。
また、顔面にある表情筋への鍼治療で、気分が和らぐこともある。表情筋は感情と結びつきが深い筋肉群である。口角を持ち上げて、笑顔を作ると、脳の緊張が和らぐことが脳科学で知られているから、鍼治療でも表情筋の緊張を緩め、血液循環を良くすることで、症状が緩和されるのではないかと推測される。
多くの場合、心の病は、心身共に疲労し切っている場合が多いので、治療の刺激は軽く行い、体調をよく見極めて、治療を進めることが大切になる。定期的に治療を続けることで、症状が軽減される。
適度な運動を行うことが、陽熱の発散を助けることになるので、軽症の場合は、効果がある。
心の病では、人と接することがかなりつらい時もあるが、少しでも人と関わり会話することで、共感を持ち、主体性の回復につながるので、信頼できる人と何気ない日常の会話から始めれば良いと思う。
心の病によく用いるツボ
百会 下関 頬車 星状神経節 攅竹 神道 身柱 関元 気海 壇中 涌泉 心兪 大陵 大鐘