タッチ 〜Miss Lonely Yesterday〜 論 ver.1.2



 全世界のあだちファンが待ちに待っていたタッチの続編が、ついに1998年12月11日に放送された。 ネット上では、すでに夏頃から新作についての意見や想像が飛びかっていたが、全般的に不安の意見が多めだったことが特徴的だった。 もとより、なにもないよりは新作があったほうがいいのは当然であり、視聴後、様々な感想が現れたのは周知の通り。 私も掲示板上にごく簡単に自分の感想を書いたが、そのような公共の場所に長々と書くのもよろしくないので、自分のHPに長々と書くことにする(笑)。
 例によって、全くの私見なので、御意見、御批判は承ります。 なお、私は昔からの(と言ってもまだ3年くらい)なので、じんべえ論の時のよう に、先入観がないとは言いません。あらかじめ、お含み置きを・・・。
 また、今後内容に追加・変更がなされると思われます。



1,やってくれてよかった

 ま、これは当たり前である。私は連載当時のタッチを知らないが、単行本のラストからどれだけ思いを馳せたことだろう。結果が判ってしまうよりも想像しているほうが楽しい、などという考え方は、私にはまったく当てはまらない。私は、たとえばドラクエなどのRPGをやる時でも、発売後間を置き、攻略本が出そろい、裏技も発見された頃になって、入念な下準備をしてからようやく始める。ストーリーが判ってしまっていても、完全クリアのほうが楽しいのである。そんな性分なので、先が判ってしまうことはなんら問題はない。たとえ判っていても、そこにたどり着くまでの過程で充分楽しめる。おそらく、多くの視聴者は新しい登場人物と自分の予想とは別の方向に変わっていた者たちにとまどいを感じつつも、それをあだちワールドとして受け入れたのではないだろうか。



2,不満点:短い時間に話を詰め込みすぎ

 2時間という時間はあっという間だった。見た人は、皆そう感じたと思う。やっぱ、登場人物の表情だけでいくらでも効果的に引っ張れるあだちワールドには、たかが2時間程度で満足のいく後日譚をつくるほうが無理なのかもしれない。登場人物がたとえ達也と南及びその家族だけだったとしても、2時間くらいは優にかかるのがあだちワールドだと私は思っている。その引っ張り方に成功したのがアニメの「みゆき」と「タッチ」で、意識しつつ失敗したのが「H2」と劇場版の「タッチ」3作だったと思う。時間的制約はわかるが…。
 さて、そんな短い時間に、懐かしの登場人物を脇役も含めて総登場させた結果どうなったか。まったくまとまりがついていない。まるで大河ドラマの総集編を見ているような感じだ。しかも、そんななか達也以上に結果を出してしまったのが西村だった。一足先にプロ入りして大活躍、古傷を悪化させてボロボロになり、ようやく素直になれた。正直、大リーグを目指した達也よりも、野球人としてははるかに上をいき、目立っている。達也の後日譚を見たかった人には、満足いかない思いが残ったのではないだろうか。西村の浮沈が達也の決意のきっかけの一因になったことは否定しないが、それにしても西村と鈴子は余計だったと私は思う。



3,人物論1 −弱い南−

 今回の南に関しては、戸惑いを抑えきれない。私にとっては、他のどのキャラの変化よりも、水野香織よりもインパクトが強かった。ホント、まいった。最後の逆告白シーンには感動したけどね。
 このタッチスペシャルは、劇場版3作の続編だと思われる。たしかに劇場版は達也にスポットがあてられすぎているため、南は原作にくらべて目立たないし強さも見受けられない。なにより、あだち作品にとってもっとも重要な感情表現が、コミックの南に比べて人形のように少ない。しかしそれも程度の問題であるはずだ。和也の死に際してもあれだけの確固たる意志で泣いた(私なりの表現)南が、ちょっとしたことで深く悩み、クヨクヨし過ぎる。最後には反省しているものの、達也に直接確かめようともしないで、ただ非難をぶつけて出ていくのも、以前の南なら考えられないことだ。挙げ句の果てに家出? 話に決着をつけるためとはいえ、いくら何でも強引すぎた。まったく、「3年たって、なにが変わったのかな」である。
 ところで、家出した南は、新田と花火を見た時まで、どこにいたんだろう? 謎だ…。
 >南は単に合宿所に行っただけだ、との指摘あり。なるほど。



4,人物論2 −元に戻った達也−

 今回の達也の変わりようも大きかった。まるでアニメの第一部を見ているようだった。「いいよ、もう。疲れるから。」と言ったコミック版の続きだというのならまだ(なんとかひょっとして或いはもしかして万が一)想像できなくもないが、仮にも劇場版の続編である。タッチ2で新田に打たれて吹っ切れ、タッチ3でヒーローの王道を行った達也はどこに行ったのか。達也の中に、逃げたり戯けたりする部分が無くなっていないことは否定しないが、野球というものを通じておそらくは自分を発見したと思われる達也が、たかが1年のドクターストップ位で中学生の精神に戻りますかねぇ?
 もう1つ、今回の達也は徹底的に受け身だった。大リーグ行きは別だが、ほかは最後まで香織と南に振り回されっぱなしだった。最後の新体操会場に駆けつけるシーンなんかは期待したのだけど、そのあとの河原ではまた南に主導権を握られてしまった(笑)。そのような態度が西村を一層引き立たせてしまった結果にもなったのだろう。私は、コミックの「こんなところでまずいコーヒー」のシーンが大好きで、あれに達也の変化を感じ取れたのだが、スペシャルでは…。



5,人物論3 −しつこい新田−

 まさか、新田がまだ諦めていなかったとはねぇ(笑)。確かに、劇場版では時間の都合か新田の話は少ないが、それでも、ちゃんと諦めたんじゃなかったっけ? 多くのファンにとっては、「その後、南ちゃんともどもおかわりは?」「…ねえよ。」「それは残念…」の彼の印象が強いだろう。そんな世界をぶち壊しにしてしまった。しかもちゃんとプロ野球にまでいっていたとは(笑)。一応新田は、西村が達也の変化を促したように、南の心を固めさせる要因にはなったが、私としては、彼みたいないい人間は、イメージを崩さずに脇役程度で登場させてほしかったであります。



6,イヤな女 −水野香織(香代子)−

 事前段階では、スペシャルの一番の目玉が新キャラの彼女だったことは疑う余地がない。しかしてその実態は…。正直な話、見終わって香織に好印象をおぼえた人がいただろうか。少なくとも、私は、その逆だった。やっぱ、時間が短すぎたせいもあろう、彼女の善の部分が顕れるのがあまりにも遅きに失した。まさか、夜の公園で告げたことが嘘だったとはね。あれで、彼女は謀略家というイメージがくっついてしまった。そこまでで香織の話には決着がついて、その先は新田と南と達也の話が中心になるのかと予想したのだが、さすがは期待の新キャラ、そんなに甘くはなく、もうひとひねりあった。
 あだち作品には、根っからの悪人というのは極めて少なく(城山監督とか)、彼女もまた悪人たり得なかったのだが、しかし…。なんか、すっきりしないっスよ。



7,その他の登場人物 −多すぎ−

 なにが楽しくて、脇役総登場などという愚行をやらかしたのだろう。時間がないことははじめからわかっていたのだろうから、せめて話の中とか背景ぐらいにとどめておけばいいのに、よりによってすべてのキャラのその後を描こうとしたものだから、一人一人の中身が非常に薄くなってしまった。孝太郎や由加や佐々木なんかはまだいいとして、どうしようもなかったのは原田であった。私は、あだち作品の男性キャラのなかでは彼が一番好きなのだが、チベット帰りの彼がいきなりあんな直接的なことを言ってしまっては…。彼のキャラクターは、長くじっくり観察した上で、それでも決して直接的には言わないことだと私は思っている。「和也と関係ねえ野球を探しゃあいいじゃねえか。」では、既に言い過ぎなのである。


8,歌サイコー

 あだち作品の歌にこだわりを持つ私としては、スペシャルの主題歌や挿入歌にも大きな期待を寄せていた。そして、実にうれしいことに、その期待はまったく裏切られなかったのである!
 まず、サブタイトルにもなった「あれから、君は…」は、本当にあだち作品の歌の中でも屈指の出来である。まい らんきんぐでも、上位にはいった。さすが芹澤廣明さん、もう言うことなしです。
 つぎに、エンディングテーマの「Hi Hi High」。これも聴けば聴くほど味の出てくる名歌だ。なお、「Hi Hi High」のシングルCDには、この歌のロングバージョン(俗称"Bye Bye Bye")及びサントラ未収録の挿入歌「Song For You」が入っていて、これもなかなかいい歌なので、サントラを持ってる人もぜひ入手することをおすすめします。
 そして、賛否両論?なのがオープニングテーマの「タッチ フライデーナイト・バージョン」である。原曲であるアニメ版主題歌の「タッチ」は大ヒットしたそうで、そのイメージを壊されたくない、という人もいるらしい。しかし、リアルタイムで見ていないせいか、「タッチ」はそれほど名曲ではない、と感じている私は、新しい曲がひとつ増えてうれしい、という感覚である。「タッチ」と「タッチ ver.FN」は、何とも甲乙つけ難い。
 結局、劇場版の歌はどれも名曲揃いという伝統を守ったので、とてもよかったと言えるだろう。




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        くち書きすぎ…。

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