〜印象に残っている文章〜
■後藤田正晴〜二十世紀の総括〜■ 21世紀へのメッセージ刊行委員会 著
日本は「ちょっと待て」ということが言えない社会なのだ。
「ちょっと待て」が言えないから、いったん流れ出したら止まらなくなって、壁に額をぶつけて、
目から火が出るようなことにならないと、事態を変えることができない。
(略)
結局、それは、日本では個というものが確立していなくて、
何についても衆を頼む社会だから、そうなるのだと思う。
やはりこの日本列島という離れ島で、異国の侵略にさらされることもほとんどなく、
何千年も生きてきた日本人の特殊性だと思わざるを得ない。
(略)
小さな島国の中で、聖徳太子の「和をもって貴しとなす」のままに、常に衆を頼み、
個人の意見をはっきり言わないという精神性が身についてしまっているのである。
しかし、「和をもって貴し」としてはいけないときと場合もある。
周りが間違った方向に進んでいると思ったときには、たとえそれが少数意見として退けられることになっても、
自分の考えや判断をきちんと言えるようでなければならない。
それが言えない社会だったというところに、日本があの戦争に進み、そしてああいう悲惨な負け方をしたという
大きな原因があるのではないか。私は本当にそう思う。