印象に残った言葉

孤立無援の思想 / 高橋 和己 旺文社文庫(絶版)

 

一体暴力とは何か。

私見によれば、この人間世界の価値の一切は、人間の精神と肉体との生産的な労働によって

築かれる。そして当然のことながら、その価値形成には人間の存在が前提とされる。

個々の人間存在は、あるというだけではまだ価値ではないが、すべては価値可能性である。

暴力とは、その価値可能体を殺傷し損傷し、あるいはその人の可能的価値を

開花させないような過酷な労働条件や生活環境に投げ込むこと、

および自由な精神の活動を圧迫することである。

そしてこれを犯すようなことが行われれば、何処で誰がそれを行おうと、

それは人間の価値に対する反逆としての悪である。

そういう悪に加担しつつあるものに反省をうながし悔悟をせまろうとした青年たちの行為を、

もし「悪」として罰しようという法律があるなら、そういう法律こそ、人間性に対する反逆を

もくろむものと言わねばならぬ。

 

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