〜印象に残っている文章〜

■転向研究■  鶴見俊輔 著

「転向の共同研究について」から抜粋

もともと転向問題に直面しない思想というのは、子供の思想、親がかりの学生の思想なのであって

いわばタタミの上でする水泳にすぎない。就職・結婚・地位の変化にともなう様々な圧力にたえて

なんらかの転向をなしつつ、思想を行動化していくことこそ成人の思想であるといえよう。

 

「後期新人会員」から抜粋

資本主義の社会では資本主義の根についているほうが、

社会主義の社会では社会主義の根についているほうが

芸術にとっても学問にとっても、よりよい仕事の条件があたえられることは確かだ。

学問でも芸術でも、いちおうの仕事の成功にはそのほうがよいに決まっている。

だが、いちおう以上の仕方で、学問でも芸術でもが成立するには、

その時代その社会の構造に対立する姿勢が必要であり、

実はこのことが、重大な仕方で学問や芸術を成立させるために必要な

最小限の政治性なのである。

 

林房雄は、その大部分の同時代の芸術家、学者たちとともに、この最小限の政治性を見失って、

まず純粋に芸術化し、学問化することによって、やがて完全に大社会の政治的動向におしながされ、

いや、かえってそれを推進する役割になった。

 

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