〜印象に残っている文章〜
■映像のポエジア■ アンドレイ タルコフスキー 著
「芸術家の責任」より抜粋
私にとっては、この「精神的危機」を通過することで、つねに健全な状態が生まれてくるのだ。
精神的危機、これは自らを発見し、新しく〈信仰〉を獲得しようという試みである。
精神的危機の状態は、精神的問題を考えようとするものすべての宿命である。
魂は調和を渇望しているが、人生は不調和に満ちている。
この不一致のなかに運動への刺激と、われわれの痛みと希望の両方の源泉が存在する。
われわれの深みと、精神的な可能性を裏づけるものがあるのである
「終章」より抜粋
芸術はつねに、人間の霊を飲み尽くそうとする物質的なものに対する人間の戦いの道具であった。
キリスト教が成立して以来ほとんど2000年になるが、その間、非常に長い期間にわたって、
芸術が宗教的理念と宗教的課題の水路のなかで発展してきたというのは偶然ではない。
芸術はその存在によって、調和のとれていない人間の内部で、調和の理念を支えてきた。
芸術は理想を具体化してきた。芸術は精神的原理と物質的原理の完全な均衡を示す具体例であり、
その存在によって、このような均衡が、神話やイデオロギーではなく、われわれの次元のなかに
存在することのできる、ある種の現実だということを証明してきた。
芸術は、人間の調和にたいする要求と、物質的なものと精神的なものの
望ましい均衡の獲得をめざして、自分自身と自分の個性の内部で戦う覚悟とを表現してきた。