Book Review

■もういちど宙へ■ 岩貞 るみこ 著

 

これは「本」のレビューとはなっていないことを、はじめにお断りしておきます。

イルカのフジ(以下、フジ)に人工尾びれを作る話を、私も(多くの方と同じように)テレビで知りました。

私がもっとも興味深く見入ったところは、病気で尾びれの大半を失い思うように泳ぐことができなくなったフジが、

ほとんど泳ぐことをあきらめ、ただプカプカ浮いているだけの無気力に陥っていた状態から、

人工尾びれをつけ、(完全にもとの通りとはいかなくても)泳げるようになっていくあいだに、

見違えるように生き生きと、かつ工夫しながら泳ぐ姿によみがえった映像でした。

「これは・・・、人間の心理とまったく同じじゃないか。」

いや、むしろ体の構造や生活環境の異なるイルカの、落ち込む姿や希望を見出し心身ともに生き返る姿は

かえって異種ゆえに、自分の姿に置き換え易く感じられました。

 

私は以前、バイクの事故で左足を複雑骨折してしまい、半年ほどまともに歩けませんでした。

半年ほど使わなかったことで、あっという間に筋肉が落ちてしまったことや、間節が以前の機能を

完全には取り戻せなかったことも、もちろんフジの姿と重なりました。

しかし、私が今回再認識し、声を高く強調したいのは、“やはり重要なのは《希望》を持つこと”なんです。

それが他の生き物にも共通すると知ることで、《希望》は“生きる”ということの本質と直結している言葉だと

実感したのです。

たとえ現状がどんなに厳しいものであっても、もし《希望》があれば、それに向かって歩む力は沸いてきます。

そうして歩んでいるうちに、自分や周囲のさまざまな物や人も(動いてくれたり)回り始め、

自分にもバランスのよい力がついてきて、物事はさらに良いほうへ転がりだす可能性が高くなるように思います。

 

それでも、“希望なんて錯覚にすぎない”としか思えない時が、しばしば(残念ながら)心の中に戻ってきますが、

人工尾びれをつけたフジが生き生きと泳ぎだす姿をみると、

「結果が完全かどうかなんて問題じゃない、希望へ向かって生き生きと進むこと自体が素晴らしい」ことを

私に教えてくれた気がしました。

 

ああ、やっぱり本のレビューにはなっていませんね。

 

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