Book Review
日本人よ。成功の原点に戻れ / マハティール・モハメド著
この本を1〜2ページ読めば、マハティール氏がいかに人間的に豊かな人物かわかる。
率直な感想は、“こうしたリーダーを得たマレーシアをうらやましい”と思った。(他力本願な感想ではあるが)
この本は多くの人に読んでいただきたい。
狭くなった世界、アメリカが勝手に振舞う地球上において、人と人が競い合い、いがみあわずに
どうすれば共存できるのか、というグローバリズム時代についての明晰な考察を読む事ができる。
明らかにマハティール氏は理想主義者だ。このような人物が22年間も一国のリーダーでありえた事実が
私を驚かす。
恥ずかしながら私には、国のリーダーになる人物とは、世渡りのうまいだけの人物、という観念があった。
それほどに近年の日本の首相は薄っぺらい。
マハティール氏はただの理想主義者ではない。現実可能にするための具体的方策を練ることにも長けている。
もともと医者であった考え方を生かして、国家を具体的に治療する方法論に応用する発想が素晴らしい。
日本では理想を捨て去り、現状にうまく乗ることのできる人物が優秀とされる。
しかし、マハティール氏はそのことが日本を迷子にしている、と指摘する。
幸か不幸か、日本は歴史的に流れるままに流れ着いてなんとかなってしまった国に思えてならない。
だから、流れに身を任せる以外、自分の頭で考える、という力がおろそかにされている。
だが、国際社会がいよいよ一つの社会となる時代の、最後の帝国アメリカに無批判で擦り寄っていくのは
人の道に反することである。お金のために人として失くしてはならないものを失いかねない。
自分に自信を持ち、自らの利点と欠点を客観的に見つめて、自分にぴったりしたシステムを歩むべきだという
マハティール氏の指摘を謙虚に受け止め、一人でも多くの人が、これからの自分や国際社会の
あるべき方向について意見を言えるようになってほしいし、私もそうならねばと思った。