〜印象に残っている文章〜
■日本の悪霊■ 高橋和巳 著
「人間の行為は、どんなに強制されたものであっても、
最後の一点で自発性がなければなにごともできない。
そうじゃないかね。
その自発性の基礎はむろん個々人の生命力や価値観にあるんだろうが、
しかし、まったく孤立しては生きられず、
人間相互の関係性が作り出す状況というものの中にある。
ある一つの決断は、
だから必ずある状況の中から発せられる。そうだろ。
として、しかし、与えられる情報が完全に間違っていたり、
何も知ることができなかったりして、
しかも、かきたてられた自発性が
ごきぶりのように方向も定めず噴出したとして、
いや、
その個人には、それしかないものとして決断したとして、
その行為には、どういう意味があると思うかね。」