< 第4話 夢幻の心臓U >

 

国産本格派RPGの決定版)

 

海外のRPGといえば「Wizardry」シリーズ、「Ultima
シリーズの2つが特に代表作として挙げられますが、この後者に当時
非常に類似した作品といわれたのが夢幻の心臓U(XTALSOFT)
です。特に上空見下ろし型のプレイ画面、
自分の視界から遮られている
所が影になって見えない所
なんかは「UltimaV」にとても似てい
ます。その他パーティ制や職業の概念など
「Ultima」シリーズの
システムを継承した部分もいくつかあります。ところがこのゲームはた
だのいわゆる
「モノマネ」ゲームであり得なかったことはプレイヤーの
誰もが感じていたことでしょう。何故このオーソドックスなゲームが非
常に高い評価を得ていたのかという部分にスポットを当ててみたいと思
います。尚、全然この辺のゲームがわからないという方は
「ドラクエ」
シリーズや
「FF」シリーズを想像してもらえれば割と近いです。

 

夢幻の心臓UXTALSOFTよりその名の示す通り夢幻の心臓シリ
ーズの第2弾として発売されました。前作はメインプログラムが
BAS
IC
で作成されておりいわゆる「LINE」文(線を引く命令)と「P
AINT」文(囲われた枠を塗りつぶす命令)でグラフィックを使って
描画するという結構凄いことをやっていました。(但し描画命令は一般
BASICではなく専用のマシン語プログラムに飛ぶように作られて
いたようです)
時は流れUでは何とオール
マシン語、超高速ディスクアクセス、超高速
描画などプレイヤーに機能的な
ストレスを与えない徹底的な開発が行わ
れたようです。そして更に特記すべきは、その操作性の簡便さです。テ
ンキーのみでプレイできてしまう点も魅力的でした。快適すぎてプレイ
中に寝そうになったことも何度かあります…。またメッセージが
ひらが
な、カタカナ
混じりで少し読みやすくなりました。いろいろなところに
作者である
富一成氏のプレイヤーへの配慮が感じられる作品でした。

 

そして肝心の内容になるとこれがまた非常にバランスのとれたゲームで
あったと思います。常に行ってみたい世界、欲しいアイテムがありまた
「ドラクエ」シリーズと決定的に違う点が「敵がMAP上に見えている
点です。このゲームの経験者であれば
「まじんのせかい」ドラゴン
「エルフのせかい」トロール「あかきとう」デュラハンなどに追
われた恐怖を憶えているのではないでしょうか。そして
「アーケディア
じょう」
サイクロップスが守っている宝箱の中身が気になってしょう
がなかった思い出もあるでしょう。上手くやれば敵に全く遭遇せずに切
り抜けられるようになっています。そしてこのゲームの非常に素晴らし
いと個人的に感じている点が「戦闘中非常に敵から逃げやすい」点です
。これについては賛否両論あるかと思いますが、やたらと難しくするこ
とよりも、できるだけのプレイ中のストレスを感じさせないというコン
セプトがある部分からも非常に評価できる部分であると思います。具体
的にはパーティが逃げることに成功(パーティ中1人が逃げれば全員が
逃げたことになります)すると位置が少し変わります。したがって周り
が空いていれば空いているほど逃げやすくなります。また逃げるのに失
敗しても敵からの直接攻撃は非常にかわしやすくかなり強い敵に遭遇し
てもいきなり死ぬことはまずありません。ちょっとリアルさには欠けま
すがこのゲームの基本コンセプトから考えると妥当なんではないでしょ
うか。

 

それでは私が個人的にこのゲームで印象に残っている点をいくつか挙げ
てみます。

1.愉快な仲間達
アーケディアじょうの地下にいるドワーフ「ユーギン」、彼は序盤
戦の戦士の仲間として非常に役に立ちます。そして一度パーティの
人数都合で別れなくてはならなくなりました。ある時ふと寄った

ルフのせかい
「ドワーフのむら」で「ひさしぶりだな」と声を掛け
てくれた彼はまさに
「ユーギン」だったのです。彼らパーティは懐
かしさを語りあう間もなくまた仲間として迎え入れるのでありまし
た。また
「まほうとしエクセリオ」にいる人間の魔法使い「カナイ
は、はじめから多くの呪文を修得していてしかも賃金なしという
とても使える人材でした。(確か当時金井氏は
ASCIIの発行し
ていた
LOGINという雑誌のライターさんだったと記憶していま
す)いずれにしてもこのゲームでは賃金のかかる仲間は初めから却
下の世界だったのは言うまでもありません。

2.街の外にいる人
開始直後に行ける街
「じゆうとしナガッセ」の川を渡って外側(
ラクエT
の太陽の石のある場所に行けるのと同じようなトリック)
にこのゲーム中でも非常に重要な謎である幽霊船についての重要な
情報を教えてくれる人がいます。しかも森の中なので普段は見えな
いうえに仲間になる人間が森の外にいてこれだけなのかと思いがち
です。意外と引っかかり易いトリックでした。

 

3.さまよえるとう
伝説の剣があると言われている
「さまよえるとう」。この塔はなん
と塔のくせに移動します。
エルフのせかいでモンスターと同じよう
に常に動き回っています。これを探し当てるためには
「シーのコン
パス」
なるアイテムが重要な役割を果たします。シーのコンパス
さまよえる塔の在処を教えてくれます。

4.3重構造の世界
夢幻の心臓Uの舞台となる世界
「エルダーアイン」「にんげんの
せかい」
「エルフのせかい」「まじんのせかい」の3重構造で
できていてそれぞれワープゾーンを使って行き来することができま
す。
にんげんのせかいは「ガーゴイルにきをつけろ」で有名なガー
ゴイル
エルフのせかいトロールまじんのせかいドラゴン
やたらたくさんいます。いずれもやっかいな敵でした。

 

プレイヤーへの細かい配慮、バランスの良い難易度、完成度の高い世界
観、これらが一体となったときに生まれたのがこの国産本格派RPGの
決定版とも言える作品
「夢幻の心臓U」だったのではないでしょうか。
そして
XTALSOFT社からは「ファンタジアン」「クリムゾン」
ジハード」
等の多くのファンタジーRPGが世に送り出されていったの
です。

                        by Syuu

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