金魚が卵を産んだ

金魚が卵を産んだ

最近、どうも金魚がおっかけっこばかりしていて変だなあ……と、ある日水槽を覗いてみると、1〜2ミリほどの白い丸い物体があちこちに……ありゃ?卵を産んじゃった! さあ大変だ!

ブリーダーさんは適切な時期にオスとメスを産卵槽へ入れて計画的に産卵させるのですが、われわれアマチュアの場合は、予期せぬときに勝手に生まれてしまうことが多いでしょう。そもそも、オス・メスの区別もよくわかりませんからね〜。そんな時には−−

●金魚と卵は別水槽に

 金魚の飼育水槽で勝手に卵を産まれてしまった場合、非常に困るのは、卵だけを取り出して別水槽に移すのはほとんど不可能だということです。かと言って、放っておけば他の金魚に全部食われてしまいます。親でも食います。こうなると、卵をそのままにして、金魚たちに引っ越してもらうほかありません。

注:セオリーでは、卵を産み付けた水草を別水槽に移すのですが、それでは水草以外の場所に生み付けられた卵は全部食べられてしまいますから、ウチでは親に引っ越してもらう方法を取っています。
水槽をもう一つ用意して、ポンプもヒーターも買ってきて……いやいや、それ以前に新しい水槽をどこに置こう? それに、もし引っ越し先でまた親魚が産卵したら……困ってしまいますが、もうしようがないですね。ハラを括って、稚魚の孵化に挑戦です。

●すぐに濾過器を止める

 通常、家庭で使用している濾過器は「水作くん」のようなポンプ兼用型のものか、水を汲みあげて濾過する上部濾過式のものだと思いますが、どちらも卵を吸い込んでしまいますので、すぐに止めてください。そして、福沢さんか新渡戸さんを1枚握って金魚屋さんに走りましょう。

●金魚屋さんで買うもの

稚魚用エサ
ブラインシュリンプ(プランクトンの一種)の卵黄のみを取り出した、稚魚専用エサです。かなり高価ですが消費量は少ないのでそれほど大きな負担ではありません。最もよいのは、ブラインシュリンプの卵を孵化させて幼生を生餌として与えることだそうですが、手間が掛かる上ひどく残酷な感じがします。
稚魚用濾過器
濾過器は稚魚や卵を吸い込まないものを用意します。専門店に行けば売っています。
スポイド
これは水槽からカビを取り除くためのものです。無精卵やエサの食べ残しをはじめ、いろんなものにカビが生えてきますから、必ず用意してください。稚魚用の濾過器は濾過能力が低いので必須です。
ヒーターと温度計
まだ持っていなかったら必ず買いましょう。特に冬に向かう場合は、温度管理が非常に重要になってきます。通常、稚魚は春に生まれて夏の間に体力を付けて冬を越すわけですが、季節外れに生まれてしまった場合は、体力のないまま冬を迎えることになるので、ヒーターなしだと全滅してしまいます。

●孵化は1日〜1週間後

 通常、卵が孵化する日数は5〜7日と言われていますが、これは水温に大きく左右されます。5〜7日というのは春先の水温が20℃前後の季節の場合でしょう。我が家で8月に生まれた卵は翌日の夜には孵化してしまいました。実質36時間程度です。最初は「5日あるからゆっくり必要なものを買い揃えればいい」なんてタカを括っていたのですが、もう、パニック状態になってしまいました。11月産卵の卵は8日で孵化(ヒーターなし)、12月産卵の卵は5日で孵化(ヒーターあり)でした。稚魚はほとんど同じ日に孵化します。
 金魚は一度に数百個の卵を産むと言われていますが、これも環境によって大きく異なるようです。ウチで孵化したのは一度にせいぜい100匹でした。ただし、肉眼で確認できる卵の数よりはずっとたくさんの稚魚が産まれました。肉眼で30個見つけられたら、100匹くらい生まれると思った方がよいでしょう。
 ところで、卵には有精卵と無精卵がありますが、無精卵は1〜2日で白濁し、カビが生えてきます。カビは稚魚の大敵なのですぐにスポイドで吸い取りましょう。
 こうして数日経つと、透明な卵の中に黒い目玉が見えるようになり、背骨も判別できるようになります。そして、待望の稚魚の誕生です。稚魚が孵化したかどうか、それは水槽の壁面を注意深く観察しているとわかります。

●“ぺた稚魚”から“ふら稚魚”へ

 孵化直後の稚魚は:−な生き物です。これが何十匹と水槽の壁面にぺたりと吸い付きます。なかなか壮観です。ウチの女房はこの状態の稚魚を「ぺた稚魚」と命名しました。このぺた稚魚は1〜2日で終わり、やがて稚魚たちは水中をふらふら泳ぎ出します。これを「ふら稚魚」と呼ぶことにします。
 ふら稚魚はいかにも儚げな生き物ですが、まだ餌は食べません。餌は孵化3日目くらいから与えます。まず、ブラインシュリンプの卵黄を二振りか三振りくらいやってみます。食べ残しがあると水を汚すので、やりすぎないように注意しましょう。最初は一日3回くらいに分けて少しずつ与えます。餌を食べるときは、ふら稚魚が水面に集まってきて、これまたなかなか壮観です。

●1か月経てば捕まえられる

 こうして、2〜3か月は稚魚餌を与えて育てます。まだ、通常の金魚餌は食べられません。1か月くらい経つとかなり大きくなり、発育の良し悪しがはっきりと出ます。また、奇形も判るようになります。しかし、生存率はかなり高く、我が家の8月稚魚の場合、60匹のうち、孵化1か月間で死んだの1匹だけでした。
 この段階になると、網で掬うこともできるようになるので、必要に応じて別の水槽に移してもよいでしょう。しかし、水温と水質の管理はしっかりしてください。稚魚は病気にとても弱い生物です。なお、このころの稚魚の身体の色はまだ鈍い銀色か緑金色で、少しも金魚らしくありません。金魚らしい色が出てくるのは3か月くらい経ってからです。また、2か月をすぎた頃からはエンゼルなどの大人用のエサも細かく砕いて混ぜてやりましょう。

 そして、3か月過ぎころから、弱い稚魚は淘汰され始めます。悪い遺伝形質が発現するのかもしれません。しかし、ここで弱い子たちを無理に生き延びさせることは止めた方がよいと思います。と言うよりも、適切な温度、きれいな水、十分な餌のある環境で、なおかつ淘汰されていく子たちを、人間の力で生き延びさせるのは至難の業です。何やら酷薄に聞こえるかもしれませんが、もう、これは事実として受け入れる他ありません。

(01.01.04)