OLYMPUS μ-10 DIGITAL 2003年02月発売/定価5万0000円
★★★☆ 実用性はともかくも…

デジタルμ初号機。それまで、カプセルタイプのコンデジを何種類も出してきたオリンパスが、満を持してμの称号を与えた記念すべきモデル。その秀逸なデザインと質感でセールス的にも大成功した。特に、それまでデジカメとは馴染みの薄かった若い女性に受けたようだ。反面、機能的には特筆すべき点はなく、スペックはむしろ廉価機に近い。せいぜい、生活防水仕様というのが目に付く程度。また、操作性はかなり悪い。デザインと防水仕様の犠牲になった印象。本格的に使い込みたいユーザーには物足りない内容となっている。光学3倍ズーム(35-105mm)、320万画素、専用Li-ion充電池、メディアはxD。(2013.09.09)

●基本スペック

320万画素 1/2.5" CCD、35-105mm/F3.1-F5.2相当、1/2〜1/1000"、ISO AUTO 80〜320(*1)、最短撮影距離50cm/マクロで20cm(*2)。液晶は1.5"TFT/13.4万画素、小さいが比較的鮮明。光学ファインダー付き、視野率76%(実測値)。USBは汎用のmini-Bで、ストレージクラスとして認識される。電源は専用Li-ion電池LI-10Bで約150枚(CIPA基準)。メディアはxDで16MB〜256MB(*3)。内蔵メモリはなし。ボディサイズは成人男性の手で握ると隠れるくらい。重量は165g(電池・メディア別)。実重量のわりにずっしり感がある。生活防水仕様(JIS4等級)。ちなみに、CCDサイズは公表していないが(チキン!!)、レンズの実焦点距離(5.8mm-17.4mm)から逆算した。

(*1) 実際にはISO 160が上限。それ以上の感度はスロー限界を超えた場合やストロボが届かない場合のみ。
(*2) 実際には広角端で10cm弱まで寄れた。実用性はかなり高い。
(*3) 実際は2GBまで使用可能のようだが、大容量メディアを装着すると、起動時に非常に長い時間が掛かる。

数字的には凡庸。焦点距離も感度もマクロ性能も突出した部分はない。広角端が38mmではなく35mmなのが偉いかな、という程度。むしろ、感度固定ができない点などは廉価機を思わせる。また、電池が専用のLi-ion充電池なのは気に入らないが、ボディサイズと電池寿命を考えると、やむを得ないところ。メディアがxDなのは、もうしょうがない。メディアと電池のスロットが別になっているのは良心的だとは思うが、いちいちxDリーダーを出すのは面倒なのでUSBでPCに吸い上げている。こちらは汎用のmini-Bのストレージクラスなので実に便利。しかも、接続するだけ即使える。電源も含めて操作は一切不要。μ-10自体がxDリーダーになっている。

●操作性

このカメラの最大の問題点は操作性の悪さ。基本スペックの低さは、製品コンセプトから仕方ないかと諦められるけれど、操作性が悪いのは全く納得できない。もっとも、従来のオリンパスのコンデジは総じて操作性に優れており、このμ-10も機能の割り付け方などは基本的にそれらを踏襲している。重要項目は1ボタン=1機能の路線を守っている。メニュー構成については、いろいろ言いたいこともあるけれど、通常使用に関してはボタン操作だけで事足りる。

だが、問題はそのボタンの品質。これが非常に悪い。小さくて、軽く押しただけでは力が伝わらず、クリック感も乏しい。どうしたって、爪先で操作するしかない。それでも無駄な力が掛かり、スライドカバーが動いて電源が落ちてしまうことが多々ある。特に、|□|(再生)ボタンのダブルクリックはほとんど不可能。押し心地の悪さはC-2Z以下。もしこれが、防水性能を維持するための対価だとしたら、極めて愚かな選択と言わざるをえない。

一方、スライドバリアの動きは非常にスムーズで高級感もある。しかし、先に述べたように、このスムーズさが裏目に出て勝手に電源が落ちてしまうわけで、つくづくスライドバリアは難しい。しかも、構造的にも弱くて故障しやすい。今日び、ジャンクワゴンに眠っているμ-10の大半は、このスライドバリアの電源スイッチが故障している。

なお、ストロボ設定をはじめ、ほとんどの設定がホールド可能。恐らく、メモリカードに書き込まれるのだと思う。長期間電池を抜いても保持されているようだ。ただし、時計の方は相変わらずダメ。キャパシタがすぐにパンクするので、電池の交換の度に設定し直しが必要になるだろう。尤も、メディアスロットが電池スロットとは別なので、メディアの挿抜の度にクリアされることはない(Li-ion電池機に関しては、電池抑えを付ければ、メディアと同一スロットでも実害はなくなるが)。

●感度とストロボについて

このμ-10はやたらとストロボが発光するカメラらしい。夜や室内はもちろん、ちょっと曇ったくらいでも発光するらしい。「らしい」と言うのは、私個人は必ずストロボをオフにして使用しているので、そんな実感が湧かないのである。しかし、恐らくそうなんだろう。この時期のオリンパスは、増感を極端に恐れていた。こいつも、スペック上はISO 80〜320だが、実質的には160までしか上がらない。それ以上の感度は、スロー限界を超えたときや、ストロボの光が届かないときにしか出ない。おそらく、手ぶれ限界で増感するのは基本感度(この場合はISO 80)の2倍まで、と決めているのだろう。したがって、少し暗くなると、容赦なく発光する。屋外で遠景を撮っていても発光する。バカである。ピント距離は判別できるんだから、被写体が遠かったら素直に感度を上げろよな。どこまで増感が恐いんだか…まあ、このクラスのCCDで2段増感となると、確かに厳しいだろうが。

ちなみに、増感恐怖性ストロボ多発症の原因を、レンズの開放F値の問題だと思っているユーザーもいるようだが、たぶん、それは見当違い。一般的な開放F値がF2.8程度なのに対して、μ-10はF3.1(広角端)なので、1/3段しか違っていない。仮に、F3.1-ISO 160で1/f"が手ぶれ限界の目安だとしたら、広角端ではLV7〜8くらいが閾値になるので、曇りでも滅多に発光しないはず。あくまでも感度を上げず、手ぶれ限界をかなり速く設定しているとしか思えない。このプログラムラインが元凶だろう。

●作業用メモ撮り機としての適性

作業用メモ撮り機とは、カメラやラジオの分解作業の際に、状態を記録しておくためのコンデジ。小型で使い勝手が良く、手持ちノンストロボのマクロ撮影が可能で、なおかつ誤って半田ごてを当ててしまっても惜しくない、というのが要件。逆に、画質はあまり重要ではなく(限界はあるが)、電池や光学ファインダーにこだわる必要もない。で、このμ-10だが、価格的にはほぼ捨て値で、躊躇なく使い潰せるのが最大のメリットだが、性能も操作性もこの用途には適していない。 こうして項目別に検討してみると、良い面が多々あるのだが、操作性の悪さが全てを台無しにしている。いっそ、スライドバリアを外して使用するという選択肢もあるが…

●その他のこと

画質や電池寿命に関しては、ここでは述べない。語れるほどきちんとチェックしていないので。だが、画質は、まあ、奇麗かな、という感じ。もちろんローエンド機との比較の話だが。

●スライドバリアの修理

スライドバリアは、下部を止めている2本のネジを外せば簡単に取り外せる。バリアを外すと左の写真のようになる。この真ん中の黒い回転スイッチが電源スイッチ。これを回して、きちんと電源のオン/オフができるようなら、修理は簡単。まず、埃やゴミが挟まっていたら奇麗に清掃すること。

なお、スライドバリアのガイドレール(特に下部)が破損している場合は、修理が困難になる。ボロボロに欠けてしまっているような場合は、このままバリアなしで使うと言う選択肢もアリかも。みっともないが、実用上の問題はないと思う。

さて、スイッチが正常で、ガイドレールにも問題がないのに、電源のオン/オフができないとしたら、問題はカバーの方にある。カバーを裏返したのが左の写真。中央に2本のミゾが走っているが、下の方がスイッチを動かすガイドレール。まずは、このレールを奇麗に清掃する。物理的な破損がないのに動作が不安定になったのあら、ゴミや埃が原因である可能性が高い。

なお、ここでは、ガイドレールの左端にアルミホイルを小さく折り畳んだものを詰めている。なぜこんなことをするのか、やった本人にも皆目わからないのだが、ともかくこれで安定性が大幅に増した。

主要諸元
発売年月2003年2月/5万0000円(希望小売価格)
撮像素子320万画素 1/2.5"CCD ※原色フィルターだったかな?
光学系35-105mm/F3.1-5.2(実焦点距離:5.8-17.5mm)
最短撮影距離通常50cm/マクロ20cm(広角端で10cm弱) ※スーパーマクロなし
ISO感度ISO 80〜320/オートのみ  ※実質的にはISO 160が上限
ファインダー光学実像式/視野率76%(広角端実測値)
液晶モニタ1.5" TFTカラー液晶/13.4万画素
プログラムモード6種 ※高感度系プログラムはなし
設定保持全保持/全初期化 ※おそらくxDカードに書き込まれる
USB端子mini-Bタイプ/ストレージクラス ※一発接続方式
防水性能生活防水/JIS 保護等級 4相当
電池専用Li-ion充電池 LI-10B/LI-12B
外形99×56×33.5mm/165g(本体のみ)

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