PENTAX ESPIO 928
Pentax ESPIO 928 ★★★★ 1994.04/\5.6000
マニア好みの超広角3.2倍ズーム

超広角28mmから中望遠90mmまでをカバー。3倍クラスで広角側が28mmというのは貴重品。しかも、非球面レンズを2枚使い写りにも定評がある。また、視度補正、露出補正、バルブなど機能も多彩。各機能の操作ボタンは上部に集中していて操作性はとても良い。まさに「写真が好きな人」向けのコンパクト。ただし、焦点距離がどこにも表示されない点は減点。

不細工で重いので商業的には芳しくなかったようだが、中古市場では意外に人気が高い。マニア向けの隠れた名機という定評がある。今でこそ、このズームレンジは珍しくないが、当時としてはかなり画期的だった。しかも、今と違って無理な小型化をしていないため、ズーム比のわりにレンズが明るい。このあたりが人気の秘密だろう。ただ、実際に使ってみると多少首をかしげたくなる点もある。

■描写はシャープなはずなんだが…

まず、評判の良いレンズだが、取り立てて褒めるほどではないなあ…というのが実感。超広角では周辺部の流れとかけっこうわかる。発色もちょっと物足りない。抜けるような青空を撮っても、なんか薄曇りみたいに写るし…。あと、露出との兼合いね。今回の試写は比較的コントラストが強いものが多かったのと、ラボの問題があるから決め付けるのは危険だが、なんか納得できない。梢の末端の明るい部分なんかが飛ぶんだよ(これは完全にラボのせいだろう。全部1オーバーで焼く550円ぽっきりラボだから)。

あとね、AFで測距してんだから、ストロボが届かない距離だとわかったら、ストロボの発光は止めてほしいなあ。秋のピーカンで20mほど先の薄暗い木立を写したら、発光したもんなあ。何のことやら。

■操作性も良いのだが…

操作性はこのクラスとしては総じてよい。ホールディングは良好、各モードの設定も楽。ただし、このクラス共通の欠点として、どうしても速写性に劣る。スイッチ入れっぱなしだとストロボチャージのために電池が消費され続けるので、どうしてもオン/オフを頻繁に行うのだが、オンにしてから実際に撮影に入るまでの時間がけっこうもどかしい。同じ欠点のあるAutoboy Sでは気にならなかったのに、それが気になってしまったというのが問題だよな。こういうのって、僅か0.何秒の違いとか、動作音だとか、スイッチの位置だとか言った、些細なことが大きな違いに感じられるからねえ。つまり、Autoboy Sに比べてESPIO 928は生理的に快適ではなかったということだろう。

ボディサイズと重量はけっこうある。実際の数字以上にでかくて重く感じる。この当時の技術力とスペックを勘案すれば、けっこう健闘はしているのだが、携帯に便利とは言いがたい。目的を持って使うカメラだな。そう割り切ると、このくらいの大きさの方が安心感はあるが。

■便利かもしれないスリープ機能

こいつは一定時間(3分くらい)操作しないと、自動的にスリープ状態に入る。これはけっこう珍しい機能。で、スリープというのはオフではなく、設定が保持された状態のままなのね。つまり、ストロボオフにしておけば、スリープから回復した状態でもオフ。90mmでスリープに入れば、回復状態でも90mmに戻る。今回の試写ではこの機能は使わなかったが、これは便利かもしれない。ちょいと発想を切り替えて、こいつに慣れれば速写性の問題なんかも克服できるかも。ま、一回使って決め付けることのできるモノではないな。

■AFコンパクトじゃマクロは無理?

あと、マクロ撮影は問題。全部ピンぼけ。近接しすぎかピントの抜けかわからない。近接しすぎなら近接警告がるはずなんだが、気がつかなったなあ。それに、90mmで最短58cmだから、この程度の大きさなら正常に写るはずだし。なお、当然パララックスも大きい。やはり、AFコンパクトでマクロ撮影は無理なんだねえ。

■後に続くのは…

1999年に製造中止。地味だが意外に息の長い商品だったようだ。同年に後継機のESPIO 928Mが出ている。こちらは大幅な軽量化とシェイプアップを図っているが、レンズが半段ほど暗くなっているのと、露出補正がなくなったのが大きなマイナス点。90mmだとF10.5だもんね〜、ポートレートなんて無理だよね〜。ま、F9ならいいってわけでもないが。

■故障しやすい!

現在、手許に4台あるがすべて故障品だ。流石に一番機だけは修理に出して直したが、1万2000円くらい取られた。元々個人売買で入手しているのだからリスクがあるのは当然だが、故障率が高すぎる。しかも、取扱説明書にはエラーメッセージが出たときの対処法が書いてあり、それでもダメなら修理に出せと書いてある。これって、おかしいんじゃないの? 一口に故障と言っても、落下や水没、破損、経年変化によるものではない。なぜか突然エラーメッセージで出て動作不能になる。ほとんど不可避的に起きる回路上の不具合を承知しながら放置しているとしか思えない。

Pentaxは不器用だが良心的なメーカーというイメージが強かったが、この現実を前にすると、考え方を改める必要があるかもしれないとも思う。

主要諸元
レンズ 28〜90mm/F3.5〜9 、7群9枚 、非球面レンズ2枚使用
ピント調節 マルチAF(3点、1点)、パンフォーカス/遠景可
ピント確認 不可
AFロック シャッター半押し(AEロック兼用)
近接撮影 58cm 近接警告あり
シャッター 1/400〜1/5、B(1/5〜10分?)
露出制御 プログラムAE
露出補正 ±3EV(0.5EV step)、AEロック
フラッシュ GN?、手動制御可、赤目防止、スローシンクロ可
ファインダー
外観 126.5×73×57.5mm、315g
その他 多重露出、リモコン付き


■試用レポート

2001.08.08/オークションで黒を落札。5800円。動作未チェックということだったが、明らかな不動品。久しぶりにやられたって感じ。まあ、文句は言えんがねえ…。

2001.08.31/ペンタックス・フォーラム(新宿)で修理依頼。1万〜1万5000円くらい掛かりそう。馬鹿馬鹿しいが、ここで止めたら男が廃る。

2001.09.12/オークションで白を落札。4900円。こちらは完動品…と思いきや、空シャッターを2、3度切っただけで壊れた! あのなぁ〜〜。どうもこの機種は電子系に問題があるのでは?と疑いたくなる。

2001.09.18/黒の修理上がりを受け取る。税込みで1万2000円ちょい。まあ、こんなもんか。なんだかんだで、この一台に2万円近く掛けたことになる。ついでに白の具合も見てもらうが、やはり電子系がイカれていて1万以上掛かるとのこと。とりありず修理依頼は見合わせる。

2001.11.02/修理上がりの試写。う〜ん、機能的には問題ないが、写りは期待ほどではないなあ。特にマクロはあかん。結局、AFコンパクトでマクロ撮影は不可能だなあ。パララックスがあるから正確にピンの位置を合わせられないし、どこまで寄れるかも正確にはわからないしね。あと、プログラムラインや測光にちょっとクセがあるような気がする。いずれにしろ、今回の試写結果は総じて良くない。ただし、撮影条件とラボを変えてもう一度試す価値はありそうだ。

2002.02.08/3台目黒ジャンクをゲット。1100円。こいつはエラーメッセージすら出さない。逆に言うと単純な接触不良かと思って入手したが、どうもそんなに生易しくはなさそうだ。とりあえずペンディング。

一号機を嫁さんがシンガポール旅行に持って行った。

2002.02.20/シンガポール旅行のプリント上がる。う〜ん、嫁さんは「一眼レフ並み」とか言って喜んでいるが、ラボがタコすぎても一つよくわからん。ともかく、全部1オーバーくらいで焼くラボなんで、色が浅くてみっともない。結果を出すのは、まともなラボで焼き増ししてからだなあ。

2002.03.06/ジャンク30台の中に1台あったが、やはり不動。しかも、二番機とほぼ同じ症状。

2003.05.02/もう一台入手。五番機になるのかな? 黒で動作品。なかなかお値打ちな買い物だった。しかし、どうしよう?