ところが、この優等生に対するプロや玄人の評価は思いのほか低い。たまに褒め言葉を聞く事はあっても、せいぜい「実用的」とか「深度優先モードがユニーク」という実にお座なりなものに過ぎない。それを反映してか、中古価格も1万円を割る物があるほどだ。プロや玄人がどういう基準でこのカメラを判断しているのか、私などにはとうてい知る由もないが、予見を捨てて素直に考えると、やはりこの評価は低すぎる。
たとえば、中古で同価格帯のEOS 1000などと比べて見るとはっきりわかる。造りが全然違うのだ。グリップのホールディングもよいし、仕上げもしっくりとしていて、プラカメラの安っぽさがない。重さは660gとやや重くサイズも少し大きめだが、バランスがよく、シャッターを切ったときの安定感もよい。ミラーショックを云々するなら、このくらいの重さはないとダメってことね。ダイヤル操作も非常に扱いやすく、露出補正も簡単だ。ちなみに、マニュアル時の絞り調整はレンズ横のボタンで行う−−ここだけが直感的に操作できない所。
また、スペック的にも露出はフルモード(プログラム、絞り優先AE、速度優先AE、深度優先AE、マニュアル)だし、AFの合焦速度・精度も十分実用レベル。連写もできるし、スポット測光も備えている。TTLオートストロボにも対応。シャッター速度1/2000は少々物足りないが、問題になるレベルではない。もちろん、現在のEFレンズも使えるから写りも問題なし。
無論、欠点がないわけではない。たとえば…
私が買った最初の一眼レフはニコンのF-301だった。これは仕事の都合上無理矢理買わされたものだ。その代わり、ニコンのプロスト貰えた。しかし、F-301はとても使い難く(と言っても今思えば要するに私の技量不足だったんだが)、その仕事を辞めたあとに売り払ってしまった。ボディは二束三文だったけど、一緒に買ったNikkorの28-80mmのレンズはけっこう高く売れた。そのお金で買ったのが、このEOS 650。言わば自発的に買った最初の一眼レフだ。以来、10年以上の付き合いだが、こいつの性能に不満を憶えたことはない。むしろ、あまりによく写るんでつまらないくらい。その後、私はメカニカル機に鞍替えしたが、今でも失敗できない仕事では、必ずこいつを使う事にしている。
ただし、キャノン製品は耐久性に不安が残る。別項でも述べたシャッター幕の油汚れは致命的だし、ストロボの故障も経験した。サービスセンターの対応は良心的だったが、2セット持ってないと恐いかな〜というのが実感だ。
(2000.06.22)
(2003.05.08)
しかし、これで、湯島天神の仕上がりがよくなかったのは、ラボの問題だと断定してよいだろう。フィルムもレンズもボディも快調だった。