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あとがき – 3D簿記システムの歩み

3D簿記システムは、1987年、Lotus1-2-3ではじめて税理士・公認会計士としてクライアントのために会計を行ってからずっと、実務の中で鍛えられながら、その成果を血とし肉としてきました。その経緯を簡単に振返ってみたいと思います。

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概要

3D簿記システムは、先ず、Lotus1-2-3システム上の会計システムとして、1987年5月に産声をあげました。我国でのLotus1-2-3日本語版の発売は1986年9月のことでしたから、この発売から9ヶ月後の誕生ということになります。この3D簿記システムはLotus1-2-3のバージョンアップの成果を取り入れながら1994年まで改良が続けられました。MS-Excel上に移植したのは1994年で、OSはWindows3.1、Excelはバージョン4でした。Excel上の簿記システムとしてLotusバージョンの殻を破り大きく成長を遂げたのはExcelバージョン5でのことです。Excel4からExcel5に変わったとき、ExcelマクロがVisual Basicを備えプログラミングの自由度が大きく広がったからです。Office97以後のバージョンのExcelではユーザー・インターフェイスが洗練されましたが、3D簿記システムも多くの改良を加えられながら成熟しつつありました。

ところで、著者がOpenOffice.orgを使い始めたのは2004年です。すぐにはOOo上で動く3D簿記システムの開発に踏み切ることはできませんでしたが、OOoBasicのマニュアルを読み。その語彙の豊富さに気づいてからいくつか試してみてこれはかえってExcel VBAよりきめ細かいことができそうだと思うようになってからです。いろいろ試す際にhttp://hermione.s41.xrea.com/pukiwiki/index.php?FrontPageのサイトは本当に役立ちました。特にOOo掲示板で質問に答えて頂いたことは問題解決を早めました。感謝にたえません。そのような経緯で、まず、会計システムを移植し、次いで、減価償却システムを2006年から2008年にかけて開発しました。その後、Excel VBAとOOoBasicマクロの対照表を作成する作業のなかで、プログラムの全面的見直しを行い、ときには格段にプログラムのステップ数を減らすことできたこともありました。Adobe AcrobatのFormとJavascriptを用いる法人税申告書システムは2002年にかたちをなし実用に供していましたが、Excel VBA、OOoBasicと似た形の関数ライブラリをJavascriptでもつようにして、書き換えたのは2010年頃だったと思います。

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Lotus1-2-3版の3D簿記システム

その最大の特徴は、BS,PLにDSUM()関数を埋め込んだ会計システムであったことです。精算表形式の会計システムとしての3D簿記システムは、この草創バージョンから踏襲されています。また、仕訳帳に記入するとそのまま財務諸表が作成されるという構成もこの時に確立されました。

このシステムが会計レポート作成の任務を果たした代表的な会社には以下のものがあります。

  • 外資系半導体輸入販売会社で1987年5月の従業員数11人時代から、1992年の約50人時代までほぼ6年間
  • 外資系印刷会社で1988年の従業員数10人未満時代から、1993年の従業員数80人程度時代にわたり約6年間
  • 日本資本半導体輸入販売会社で1990年5月の従業員数13人時代から、1994年の従業員数70人程度時代にわたり約5年間
いずれも、従業員数が50人を超える頃に、DOS上のLotus1-2-3版の3D簿記システムの使い勝手に問題が現れてきて、市販の価格60万円から4百万円程度の会計システムに移行していきました。その限界は次の点にあったと考えられます。
  1. 月次決算を月毎に別のファイルで行わざるを得ず、月次繰越が厄介であり、また、先行入力(月次決算が完了する前に新しい月の取引を入力していくこと)をすると月初残高を転記しなおすための余分の作業が必要であったこと。
  2. BS,PLにDSUM()関数を埋め込んだ方式のため、勘定科目の設定が不便であり、また、取引量が増すにつれて財務諸表作成のための処理時間が5分程度までかかるようになったこと。
  3. DSUM()関数の埋込方式によると部門別会計への対応が複雑になること。
  4. Lotus1-2-3のマクロではRange Nameを多用せざるをえないので、プログラムのメンテナンスが不便であり、また、ユーザーが表から行や列を削除するときRange Nameが壊れ、マクロが働くなくなる危険があったこと。
勿論、会計レポート作成者のLotus1-2-3習熟への要求度が次第に高まっていったことや、WindowsベースのExcelに対して見栄えの点で見劣りしたことも見逃せません。このような点の反省が現在の3D簿記システムに込められています。

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Excel Ver4.2版の3D簿記システム

Excelのバージョン4.2を使い始めたのは1994年のことです。このExcel4.2上の3D簿記システムでもDSUM()関数の埋込方式を踏襲しましたが、DSUM()関数の条件を仕訳月と勘定科目の両者とすることにより、一つのファイルで1年間続けて経理を行うことができるようになりました。また、勘定科目の設定をできるようマクロを組みました(96年1月)。この間のパソコンハードウエアの進歩は著しく、処理スピードも快適なものになりました。したがって、上の1と2の問題はかなり改善されました。このExcel4.2での3D簿記システムは97年6月頃まで使いました。

DSUM()関数の埋込方式によるExcel4.2上の3D簿記システムが会計レポート作成の任務を果たしてきた代表的な会社には以下のものがあります。なお、いずれも現在では最新バージョンの3D簿記システムを使用中です。()内の数字は2001年8月現在の従業員数を表わします。

  • 外資系半導体設計会社で1994年9月の従業員数4人時代から(23人)。
  • 外資系第2種VAN事業会社で1997年1月の従業員数2人時代から(11人)。
  • 日本資本のソフトウエア開発会社で1997年6月の従業員数31人時代から(46人)。
  • 外資系のWEBビジネスを行う会社で2000年7月の従業員数3人時代から(8人)。

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Excel Ver5版以後の3D簿記システム

Excel4.2を使い始めてまもなくExcelバージョン5が発売されました。Office97のExcelは1997年3月から使い始めました。Excel5になってからマクロによる勘定集計方式に変えましたが、これは97年5月頃のことです。これにより、Lotus1-2-3バージョン時代からの弱点が克服されました。勘定科目の設定がさらに容易になり、取引データ量の処理スピードに与える影響が格段に小さくなり、部門別会計への移行がパラメータの設定変更により容易に行えるようになったのです。

その後の使い勝手向上は主に次の点を優先して続けてきました。

  • 勘定コードと勘定科目の表示フォーム(98年3月)。
  • 印刷・移動マクロ(98年8月)。これを一つのフォームに統合し、また、ユーザーが設定した方がよい点はマクロ設定から除くようにしています。
  • 勘定明細の表示マクロを最適化し、また、
    消費税ありとなしのオプションを設定(98年8月、99年3月)。
  • 行計算マクロ。特に銀行勘定取引明細(BK)(97年8月、99年3月)。
  • 並替マクロ。これは3D簿記システムの命の一つ(97年8月、99年3月)。
  • 財表作成マクロの洗練(99年3月)。
  • エラーメッセージの整理(99年3月)。
  • 部門別計算の洗練(99年7月)。
  • Project別に売上高と直接原価を対応表示する機能の付加(2000年7月)。

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OOoの3D簿記システム

OpenOffice.orgのVer1.1.1を使い始めたのが、2006年6月でした。2007年の冬にOOo2.3.1をインストールしたと記録があります。現在、著者が使用するOOoのバージョンは3.3.0です。この間、どのようなバージョンアップがされてきたのかについて著者は何も認識がありません。最初から、OOoBasicは折り目正しいプログラミング言語だなという印象があるのみです。この間、PCハードウエアの処理スピードはさらにあがり、メモリーも4GBなどというものが当たり前になってきました。表計算ソフトのハードウエアからの制約は殆ど感じられません。ハードウエアもソフトウエアもとても能力一杯に働かせることができないほどです。いやいや贅沢な時代に突入したものです。
  • Excel VBAからOOoBasicへ移植(2004年6月-12月)。
  • 消込ツールをAP用に作成(2005年)。
  • BKシートに源泉所得税列を導入、これにより支払金額と源泉税を対比した勘定分析を実現(2006年4月)。
    消込ツールをAR用にも使えるように変更し、APとAR共用化(2006年4月)。
    Turbo Linux上のOOoでの3D簿記システムの動作確認成功(2006年5月)。
  • MsgBox関数に渡すメッセージをUniCode化(2006年12月-2007年1月)。
    ダブルクリック勘定分析成功(2007年4月)。しかし、動作しないこともある。悲しい。
    減価償却計算システムの償却資産税申告データ作成プログラム(2007年12月)。
  • 減価償却計算システムの資産振替プログラム(2008年1月)。
    減価償却計算システムの即時償却プログラム(2008年12月)。
  • 減価償却計算システムからFormデータの書き出し(2009年1月)。
    Debian Linuxインストール(2009年5月)。
  • Ubuntu Linuxインストール(2010年3月)。
  • 3D簿記会計システムで伝票形式ダイアログを不使用とするプログラム変更(2011年12月)。
  • OOoBasicからExcelVBAに再移植及び全面的にプログラム整理(2012年1月)。
    推移表上での複数セル選択による勘定分析(2012年1月)。
これらのプログラミングの原点は使いやすいソフトの追求です。このため自分自身で使い続けるようにしています。また、会計情報は整合性を要求しますから、不整合があれば直ちに指摘してくれるよう、エラーメッセージを充実するように努力しています。現在、3D簿記システムは7社で使用されています。実際に使用されている担当者の声を大切にしながら改良を続けていきたいと思っています。

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