真っ白な世界 by ひろさん

 

 その日は朝から雪、午後にはかなりの積雪になるらしい。大雪警報もでてる。でも、せっかくの1人スキー。来たからには、滑らなきゃ男がすたる。ゴンドラでゲレンデに降り立ったら、平日の割にはたくさんのボーダーで賑わっていた。少数だがスキーヤーの姿もある。降雪と風は気にはなるが、コースのコンディションは悪くない。新雪も楽しめる。気合を入れて滑り出した。

 2時間程滑ったが、降雪がひどくなってきたので、下山することにした。このスキー場には下山コースがあるが、スノーボードは滑走禁止なので、みんなゴンドラで下山してる。リフト係員に聞いたら、下山コースもオープンしているとの事。コース入口をチェックしたら、圧雪車の跡がうっすらと残っているだけで、シュプールは1本も無かった。霧と風がちょっと気にはなったが、いつも行ってるスキー場。よく知ってるコース。下山コースを行くことにした。この決断が悪夢の始まりとは思いもしなった。

 途中までは快適な滑りだった。霧が視界を邪魔するが、コースは圧雪車の跡で何とか確認できる。ただ、数分滑った所で異変に気付いた。降雪と霧で回りが全く見えなくなっていた。視界が何メートルあるかも判らない。とにかく、何も全く見えない。しかも、斜面であるにも関わらず、強風で前に進めなくなっていた。斜度が無いところでは、後ろに押し戻される。圧雪車の跡も、降雪で見えなくなっていた。

 引き返すか行くか悩んだが、戻るのも困難な状況であるため、進む事にした。ただ強風であるため、自分の思う方向に進めない。正規のコースは、踵が埋まるくらいの新雪のようだが、コースから外れているようで、腰まで埋まることもしばしば。腰まで埋まったらコースから外れていると考えて、来たコースを戻って滑り直す有様だった。

 どれくらい時間がたったかも判らない。何処にいるかも判らない。勝手知ったコースなのに・・・・ 降雪と風はどんどんひどくなっていく。聞こえるのは風の音だけ。どんどん疲労も増して、不安が大きくなっていく。死ぬかもしれない、と考えるようになったのを覚えている。

 それからしばらく滑ると、幸運にもリフト支柱が発見できた。ここで自分がコースから外れていると確信できた。でも行くしかない。やっと見つけたリフト支柱、これを見逃したらもう終わり。リフト下は滑走禁止だが(元々コースから外れてるが)、そんなことも気にせずに、胸まで雪に埋まりながら、滑った?歩いた?降りて行きました。なんとかリフト乗り場まで辿り着き、九死に一生を得ました。

 やっとの思いで下山して時間を見たら、下山を始めてから、なんと1時間30分も経っていました。いつもなら5分くらいで滑るコースなのに・・・・・・・・

 本当にホワイトアウトは恐ろしいものと感じた体験でした。

 こうして生きて帰ってきてるから良いようなものの、今思うと下山コースを選択したことや、リフト下を滑ったのは自殺行為です。崖とか沢とかあったら、どうなってたんでしょうか、考えただけでもゾッとします。やはり引き返す勇気、止める勇気を持ちたいものです。

 話とは外れますが、昨シーズンもコース外を滑って亡くなった方がいましたよね。コース外滑走は、やっぱり自殺行為だと思います。ルールを守るのも、スキーヤー・ボーダーの努めだと感じます。

 

僕はこれを読んで、リフトの下をたどれば下にたどり着くと、そう思っていたら、
崖や沢があるかもしれない危険性を見逃していました。。。

普通のゲレンデでも、大雪の場合はこういうことが起こるという経験談です。
ひろさん、原稿依頼にこたえてくださって、大変ありがとうございました
by Snowman-Yukio

 

1999/11/10アップ