一級の思い出 by TAKEさん



知ってる人が検定を受ける話を聞くたびに、思い出すことがある。
あれは、1級を受ける寸前に、いつものナイタースキー場に行った時のこと・・・

検定が数日後に迫ってるにもかかわらず、ショートターンに爆弾を抱えていた僕は、四苦八苦しながら練習していた。何本か滑ってると、ある地元のおじさんとリフトで一緒になった。当時の僕の履いてた板メーカーの最新モデルを履いてたその人に、乗った感じを聞いたりしてたんだけど、そのうちに僕の検定受験の話になり、「それなら、今日は友達がパトロールしてるはずだから、教えてもらえるように言ってやろうか?ちなみにそいつは1級をトップで合格したあと、ここのパトロールになったんだよ」と、神様のようなお言葉。

ありがたいことに、さっそくレッスン開始!
時々暴走していた僕に、「ショートターンのスタート直後なんか検定員もよく見えてないんだから、最初の2〜3ターンはプルークウェーデルンでリズムを整えてから、徐々に足をそろえていってごらん」と教えてくれました。やってみると、確かにリズムが取りやすい。「これはかなり使える!」そう思いながら、パトロールの人が地元のおじさんにレッスンしているのを邪魔しないように、ひとりで試行錯誤していました。



そうしているうちにパトロールの人と一緒にいるところを見ていた別の人が、僕と同じリフトに乗り込んで来て、「地元の人間か?」って聞いてくるから、いきさつを説明すると、その人は「1級なんか金で取れるじゃないか、何なら紹介しようか?」と言った。その瞬間、僕の頭の中で”ブチン!”という音がした。と同時に、「そんな1級は欲しくありません!」と大声で口走っていた。人が一生懸命やってることに水を差すこの人は何者だ?!と怒り爆発だった。

リフトを降りてから、その人を振り切って滑り降りてリフト待ちしてると、また横にやってきて、「速いじゃないか」ってまた話し掛けてくる。それからもしつこく僕と同じリフトに乗ろうと待ち構えていたが、わざと斜面途中で止まったりして、絶対に同じリフトには乗らなかった。それから何とかその人をまいて練習してるうちに、また地元のおじさんとコースで出会ったので、丁寧にお礼を言って別れました。

そしてアドバイスのおかげで、検定本番では当時の僕にとってパーフェクトなショートターンが出来ました。あれからだいぶんたつけど、今でも「あの時、あの地元のおじさんと出会って、パトロールの人に教えてもらってなかったら落ちてたな」って思います。
人の出会いって不思議。時には悪いのもあるけど・・・

 

僕は実を言うと、2級受験するまでは1級の事なんかこれっぽっちも考えてませんでした。2級さえ持ってればいいやっ、て思ってました。でも、2級の合格発表の時、僕が合格して喜んでるうちに1級の合格発表が始まって、合格した人の中に、おそろいのウェアを着たカップルがいたんだけど、「カップルで合格か〜、すごいな〜」って見てたら、女の人が感極まって泣いてるんですよ。それを見た時、なんかジーンときて、俺もいつか取ろう、と決めたのでした。

それから2年後、1級合格した時にはもちろん、僕も感激で手がジーンとしびれて少し泣きました。帰りの車の中でも、「この合格はまさか人違いじゃないだろうな」って、何度も何度も賞状の名前を確かめたのでした。そんな大袈裟なって思うかもしれないけど、いくら関西のちっぽけなスキー場の1級とはいえ、何事にもあきっぽい僕が、生まれて初めて真剣に努力して勝ち取った勲章ですから・・・

 

1級を目指す人に向けてのメッセージ

1級はあこがれの上級者への登竜門ですが、真剣に滑り込めば滑り込むほど手に入りやすいです。しかし滑り込めば滑り込むほどさらにスキーから離れられなくなります。(笑)

  

 

2000年4月30日アップ