エリザベス
 ネーミングはきれいな女性の名前ですが、内容は空手のお話です(笑) でも、きちんと関連はあります

 

 以前エッセイの中で、もともと僕は運動音痴だったと書きました。昔は、体を動かすことが楽しいという人を、異質な人間でも見るかのように思っていた記憶があります。よく公園で走っている人を見ると、「しんどい思いをして、なぜ走るのだろう。不思議な人たちだ」と思い続けていました。そんな僕も、スキーをはじめてからオフトレをするようになり、それが日常的になると、毎日体を動かさないと、なぜか罪悪感を感じるようになってしまいました。もちろん、マラソンにも一時期ハマってしまい、毎日10kmくらい走ったりすることもありました。マラソン大会にも出たりして、一時はマラソンの大会で30kmも走ったというのは、我ながら「不思議な人」になってしまったという思いがあります(笑)

 スキーのために体を動かして、冬のための体力づくり(オフトレ)をはじめたのは、スキーの楽しさをおぼえて間もない頃でした。いちばんお金のかからないというマラソンを始め、あちこちのマラソン大会に出たりしていました。でも、足の故障があちこち出だして、少し走ることに飽きてきた頃、少し気合いを入れようと空手を習いに行ったことがあります。(黄帯までしかいかなかったのですが。。。)4、5年くらい前になるのですが、今回はその話を書いてみようと思います。

 この空手には、とても思い出深い経験があります。僕が習いに行った空手は、極真ではないが、寸止めではない、ほんとうに素手でもろに戦いあう空手道場でした。

 練習の時はもちろん、すねだけに、プロテクターを着けるのです。僕が新人で入った頃のプロテクターは、結構性能もよく、とてもクッションが効いていて、とても安心できるものでした。でも、上級者の人は、昔買ったプロテクターをずっと着けていて、ほとんどがペラペラのプロテクターで、クッションなんてあったものじゃなかったのです。 ふつうは、新しいプロテクターを着けるほうが絶対いいと思うのが普通だと思います。。

が!!

 プロテクターとは、相手へのダメージをやわらげるためのものなんです。拳につけて相手にパンチを浴びせても、拳を守るのはもちろんのこと、相手へのダメージもやわらげるのです。これは別に悪いことではないのです。

でも!!

 上級者が使っているペラペラのプロテクターは、パンチがこちらに炸裂すると、めちゃめちゃ痛いのです!!ペラペラのプロテクターを着けた相手は、殴るほうなのでダメージも何もないのですが、こちらは顔面や腹や脇腹にペラペラのプロテクターをつけた拳で殴られるのです (+_+) それも上級者になればなるほど、クッションもなく、すり切れたプロテクターを使っているのです。こうなるとプロテクターではなく、テーピングです。だから、上級者相手にスパーリングをすると、一発でも決まればたまりません。顔を殴られたら腫れてあざができるし、腹を殴られたらのたうち回ったり、モロにみぞおちにはいった場合は、吐いたりもします。つらいのなんの!顔を殴られたら、ショックでひっくり返りますが、腹の場合は苦しくて、ひっくり返るどころじゃありません。ころげまわって、のたうちまわってしまうのです。それを考えるとダウンするときは、顔面を殴られる方がはるかに楽なのです。顔は天国行き、腹は地獄行きです。(でも顔を殴られたら、顔のかたちが変わるけれど)


顔を殴られると天使が見えるような気が・・・

 また、練習中にするスパーリングも、ふだんはみなおとなしく戦いあっています。お互いに怪我をしないように、お互いに少し手加減をしながら。。。

 でも、館長が来たり、極真会館などが相手の試合前になると、空気が一変します。そりゃもう、真剣です。手加減してくれる人も多いのですが、中には黒帯の人が、白帯である僕らをサンドバックがわりにすることもあります。同じ色の帯同士では、よく打ち合いになります。そして、はげしい戦いが始まると、必ず誰かが怪我をします。意識を失う人も出ます。試合前は、実戦を想定してスパーリングでプロテクターを着けないため、誰かが怪我をするのは当然と言えば当然です。

 いちばん僕が経験した中で印象に残ることは、誰かが怪我をして、たとえば鼻血が出たとします。こうなると道場内には殺気が漂いはじめます。まず、全員の目つきが変わってきます。ふだんはやさしい目をした人でも、人が変わったかのように、とても厳しく恐ろしい目に変わってしまうのです。男は、を見ると闘争本能が本能的にわいてくるものです。だから、一人が血を流すと、次から次へと血を流す人が出てきます。

 僕の場合も、入ったばっかりの時は、何度も顔面を蹴られて、気がつけば転がっていたりしました。もともと、体の固いどんくさい男が空手をするのですから、どうしようもありません。体が固いためケリが相手の顔面に届かない(勝手に自分でひっくり返る^^;)、目が悪いため、ケリが飛んできてもほとんど見えない。そんなヤツがふつうにやって勝てるわけありません。

 仕方がないので、先手必勝です。目が見えないため、ふところに飛び込んで相手の腹を殴ります。相手は、いきなり間合いを詰められるため、下がろうとします。その瞬間にケリやパンチを入れるのです。決まれば一発です! でも、これが失敗するともうだめです(笑)。見えないため、ケリが飛んでくると、見事に相手のケリが炸裂します。こまったもんです。うまい人は、目が悪くても、メガネは関係ないようですが、僕の場合はメガネを外すと、かなりつらいものがありました。パンチをよけるのに必死になった瞬間、カカト落としで、何度頭のてっぺんをやられたことか(相手にとっては痛快だったらしいけど^^;)


カカト落としで、また天使が見えることも。。。(笑)

 館長とスパーリングをするときもあります。館長相手のスパーリングは黒帯も白帯も関係ありませんが、もちろん白帯の人へは手加減をしてくれます。僕も館長と戦ったとき、僕はプロテクター無しでおもっきり腹を殴ったのですが、館長は痛くもかゆくもない顔をしていました。どこもかしこも筋肉で覆われているため、何のダメージもなかったようです(笑)。 最後は僕がローキックをした瞬間に、足払いをかけられ終わりでした。立ち上がったら、もう館長の背中しか見えませんでした(笑)。 でも、次の人は、たまたま館長がその人にローキックをしたのが見事に決まってしまい、次の瞬間は転がっていました(笑→自分じゃないから笑える)。彼はその後丸二日間、まともに歩ける状態ではなくなったそうです。館長いわく「わるいわるい、ちょっときまってしまったわ」。。。おそろしいものです。


クマのような館長でした(笑)

 ところである日、二人組の女の子が体験入門をしてきたがあります。その頃は僕も入門したてだったので、後ろの方に並んでケリの練習やパンチの練習をしていたのです。前に立っている先生のする動作をまねて、同じ動作をするのです。パンチ、そしてケリ。ずっと練習をし続けていたのですが、どうやら、体験入門をしてきたうちの一人の女の子が、僕の真後ろで練習をしているようでした。もう一人は僕の斜め後ろにいて、どうやら二人仲良く並んで、体験練習をしているようでした。

 それは別にいいのですが、どうやら、二人のうちの一人が、どうも落ち着きのない足音をしています。よく聞いてみると、どうも僕の真後ろの方から、足音がして、妙に落ち着きのない足音ばかりが聞こえるのです。一歩踏み込むだけのところを、なぜか2歩3歩と踏み込んでいる様子なのである。どうも、こういった動きに関して、まったくの初心者のようでした。ケリを決めたときやパンチを出したときに気合いで「やー!!」って声を出すときも、どうもワンテンポ遅れるのである。それが妙に道場内で目立っていて、前で聞いている僕にとっては、とても気合いが抜けてしまうものでした。また道場内でも、妙に緊張感の糸が切れたような雰囲気が漂っていました。

 気がつけば、僕らを教えている先生(館長ではない)も何か言いたげな顔をしているが、普通は体験入門生は練習生ではないから相手をしないことが規則になっているため、何か言いたげでありながら、ぐっとこらえているようでした。ほかの練習生も、興ざめの顔をしながら、練習をしているみたいなのです。僕も、後ろで足音はしているし、声もワンテンポ遅れた「やー!!」って声を出しているので、気になって気になって仕方がなかったのです。


OH MY GOD !!

 でも、僕もみんなも、練習時間中は絶対に真剣に練習をしなければいけないために、振り返ったりすると、先生からおこられるというか大変な目に遭うこともあるので、なるだけ真剣に練習をし続けていた。でも、気が散るというか、うっとしいというか、ほんとうにまん前で練習をしている僕にとって、背後から聞こえてくるという足音や、ワンテンポ遅れた「やー!!」っていう気合いの声は、たいへん耳障りでした。迷惑千万とはこのことをいうのでしょう。

 もう一人の女の子は、同じようによろよろどたどたしたりはするものの、声を出さないため、あまり気になりませんでした。でも、同じようにどんくさい様子で、その練習している雰囲気からすると、私はここにいたくないっ!!という、声にならない思いで練習をしているかのようでした。おそらく、僕の後ろの迷惑な女の子に、むりやりつきあわされたのでしょう。

 で、ついに事件が起こってしまいました。ローキックの練習のあと、腹を蹴る前げりの練習の時に、思いもかけないことがおこりました。その女の子は、前げりの練習の時に、なんと、僕のお尻をおもっきり蹴ったのです。もう、びっくり仰天である!! こちとらはいきなり後ろから蹴られて痛いと言うより、おもっきり腹が立ってしまった!! さんざん、人の気を散らしておいて、それも、なんで前げりの時に前の人に向かってケリをいれるのか、ちょっとはかんがえろ!!と思い、その後ろの女の子の方に振り返ると。。。なんとそれは、山田花子でした・・・

 

 

 


左は藤井隆 真ん中が山田花子 右の石田靖を僕の妹は会社近くで見たことがあるそうです
画像は不許可使用なので、内緒にしておいて下さいm(_ _)m

 これには本当に驚きました!! なぜ、山田花子がここにいるんだ!?ってびっくりです。その時、あまりの驚きに、僕はもう目が点になってしまいましたが(笑) ちなみに山田花子は、僕が振り返ると、僕の顔を見てアセった顔をしてぺこりと頭を下げていました。僕はもう、ボーゼンとしてしまいました(笑)

 なんと僕は、山田花子に蹴られたことのある、ぜんぜん何の自慢にもならない経験があるのです。彼女はもともと、女子プロレスに入ったけれども、それが続かず、吉本入りしたそうな。僕が蹴られたのは、まだ大阪の「吉本新喜劇」にデビューして間もない頃でした。

 練習が終わって、帰り際に山田花子に名前を聞いたら、「エリザベスですぅ〜!!」って言っていました。(うそです^^;)

 もう一人の女性は、どうやらマネージャーのようでした。なぜ、空手道場に体験入門したのかはわかりません。が、ちなみに体験入門で僕のおしりを蹴って以来、山田花子は二度と道場に来ませんでした。。。

1999/9/17 up !