1998年の想い出

 

 HPを公開してからは、たくさんの思いもかけない不思議な出逢いが待っていました。スキーというものが、僕を、今までと違った世界に連れていってくれたのでしょうか。スキーのプロショップをHPで紹介したことがおおきかったのかもしれません。ここから、たくさんの出逢いがはじまったと思います。


乗鞍岳(野麦峠より)

 エッセイなどと重複する話ですが、ショップの方にいろいろと話をするうちに、とんでもなく専門的かつ技術的な本当のプロショップということがわかり、店の方たちのスキー技術の話のレベルの高さには、本当に驚かされました。いろいろと話を聞くだけでも、スキーの上達にものすごくプラスになりました。用品や練習方法、技術論などは聞くだけで上達するといってもいいくらい、すばらしいものがあります。スクールで聞く説明を、さらにわかりやすく説明をしてくれるみたいだから、これほどラッキーなことはありません。また、さっぱりわからないスキーの道具を、本当に自分にあったものを出してくれるショップでした。店においてある板やブーツなど、すべてのマテリアルのことを、きちんと性能から癖から素材から特徴など説明できて、間違いなく自分のレベルにあった商品を出してくれるショップはあまり見当たらないでしょう。

 また、このショップの縁でなぜか、大阪府スキー連盟の顧問と知り合いになって、一緒にスキーに行ったりするようになったりもしています。この方は、僕が敬意を表して先生と呼ばせてもらっている藤井さんです。この方から、JOCの委員長(古橋さん)や副委員長(八木さん)の話を聞いたり、数々のオリンピックに役員として行ってきた話や、海外との交流などいろいろな話を聞いたりもしたし、コクド・プリンスホテルなどの西武グループ総帥、堤義明(全日本スキー連盟の会長としても有名)さんや、大阪府商工会議所や松下・三洋や富士フィルムの話なども聞いたりして、自分の精神的な住んでいる世界が、ぐっと広がることができたものです。この方の話は、たくさんメモを取っています。いつかエッセイ化してゆこうと考えています。でも、まだまだ現役で大変重要な役職についておられるし、プライバシーを守ることも考えなければいけないと思うので、書くとしても慎重にしなければいけないと思っています。 (1999年3月、古橋さんが日本オリンピック委員会会長を辞任され、八木さんが会長になられました)

 さらに、スキーに目一杯はまりこんでいる人たちとのたくさんの出逢いも、ものすごく自分にとってはうれしいことでした。年から年中スキーの話ができるなんて、ほんとうに幸せなことですから。また、指導員クラスの方からまったくの初心者の方まで、たくさんHPに来た感想のメールをいただいたりもして(ショップのレポートも)、ほんとになにかとてもうれしいものです。

 スキーは不思議な魅力がある、と僕の先生が僕に言ったのを覚えています。その時、その言葉に、僕も思わずうなずいていました。スキーは本当に不思議ですね。何がおもしろいんでしょうね。さるのように酸欠になりながらも滑り続けても、幸せな気分になれるのですから。そして、いつしか夢中になって、気がつけば自然にとけ込むような不思議な気分で滑っているような気がするのです。心がなにからも束縛されずに、解放されているのでしょう。

 スキーは、すばらしい自然に出会えるのもとてもいいですねー。僕の先生は、スキーは自然といちばん調和したスポーツだ、と話しておられていました。本当にその通りですね。どこのスキー場に行っても、心を奪ってしまうくらいのすばらしい景色が見つかりますね。リフトにのっていてふと気づけば、きれいな青空にきらきらと輝く本物のダイアモンドダストが降っているのに思わず感動したり、本物のリスに出逢ったり・・・ほんとにいいですねー!

 また、夕暮れが近づいてきて、リフトから振り返ったときに見る、夕焼けのすばらしさ。はるか遠くまで広がった空に、せつなく心を温めてくれるような夕陽のすばらしさ。一日の終わりを感じさせ、謙虚な気持ちにさせてくれる、物静かな自然の姿。雪の暖かさ、心を洗ってくれる風のきらめき。たくさんの表情を見せてくれる自然の姿も、これまたすばらしいですね。やっぱり、スキーというスポーツに、ほんとうに出会えてよかったと思います。スキーを通して、自分にたくさんの想いをあたえてくれたから・・・

 今、これを書いているのは、野麦峠の深夜の駐車場。一人で書いているので、どうしても詩的な文章になってしまいますね。いま、車のサンルーフをあけて夜空を眺めてみると、さすような冷気の中、数万ものきらめく星の姿が見えています。こういう自然の姿というものは、どれだけたくさんの言葉を使っても、表現するには無理がありますねー。この素晴らしさは、やっぱり自分の心にしまっておくものなのでしょう。そして、このすばらしい一瞬は、永遠に自分の心に残ってくれるのでしょう。煩雑な生活をおくる毎日の日常生活の中で、こういう一瞬というものは、ほんとうに何にもかえられないぜいたくな一瞬です。

 休みが終われば、また雑多な仕事に追われて過ごす毎日が始まります。日常の生活は、いつ見上げても狭い空で、狭い価値観ですごしてゆくことになります。でも、時に一瞬でも自然と心を通わせることができれば、仕事も遊びもすべて同じような気分になれるような気がします。変な表現かもしれませんが、僕もむかしはよく、自然と会話をしていました。言葉で会話をするのではなくって、何かのエネルギーを感じるといっていいのかもしれません。(誰もがふとしたことで感じることですね。)でも、大人になるにつれて自然との会話が減ってきました。これは心の感性が鈍ったのかもしれません。心がいつしかよごされてしまっていたのでしょう。でも、スキーを初めてからは、また時々、自然が語りかけてくれることを感じることがあります。心が透き通るひとときです。スキーのおかげでまた、昔の気分に戻ることができたのです。スキーを通して自然が僕に与えてくれたもの、ひょっとしてそれは自分の心かもしれません。スキーが与えてくれたのじゃなく、スキーをさせてくれる自然が、自分の心をきれいにしてくれているのかもしれません。

 想えば、スキーをすることよりも、スキーを通して自分が教えられたことのほうが多いような気がします。1998年の5月くらいから作りはじめたこのHPも、7月の公開以来はや半年。何かが自分の中で大きく変わりました。たくさんの出逢いと大きな別れ、そして、数え切れない想い出のすべてがHPに残っています。このHPを作りはじめたきっかけは、実は母の看病のためでした。僕は母親の残された時間を感じて、できるかぎり母のそばを離れたくなかったからでした。僕と母以外、誰もいない休日の家で、ずっと母のそばでこつこつとHPを作り続けていた、そういう想い出があります。時に、母が病床から起きあがってきて僕の横にやってきたときは、僕はHPを作る手をとめて、ゆったりとした時の流れの中で、二人で談笑していたのを覚えています。窓からは、春の暖かな太陽がさしこんでいて、その太陽の光につつまれてにこやかに笑う母の笑顔は、今でも僕の心の中に残っています。ほんとうにすばらしい母だったです。僕の性格と生き方に、ものすごい影響を与えてくれました。このHPは、ほんとうは母親に捧げたいHPです。伝えられなかった想いと、伝えきれない想いを込めて・・・

 

 

1999年1月1日アップ