ゆうひがおかの総理大臣

 

これは、僕が卒業した高校の先生から、僕が卒業生として、高校2年生の後輩に針路を考える上でのアドバイスのようなものを話してくれと、言われてメモという形で作成したものです。
何となく気が向いたので、アップしてみました。

まぁ、教育現場にいないから言えることで、理想論的なものですが、理想でもいいと思って書きました。
実際には、教壇に立って、そのクラスの生徒たちに話をするという形なんですが、僕は、緊張するタイプなので、メモを見るということではしのげないと思い、これをまるまる読み上げるという形にしました。

思いきり早く読み上げても,10分弱はかかります。
だから、常時接続じゃない方は、オフラインで読むことをおすすめします。
その時の原稿に、少し加筆訂正を加えてあります。

 

 

こんにちは
卒業生として、後輩への進路のアドバイスということでお願いされましたが、僕でいいんでしょうかという気がします

僕が、この高校にいたのは10年前で、この高校では、とてもたくさんの思い出を作りました
いい思い出、悪い思い出、たくさんありますけど、高校1年の時に、僕が言い出したクラスコンパで、急性アル中になったヤツがいて、救急車を呼んだこともありますし、遅刻をして時々正門を通らず、塀を乗り越えて通学していて、見つかったこともありますし、ちよっと校長と担任と警察に迷惑かけたこともありますし、そんな僕が、進路について語ってもいいのか、不思議な気がします

 

僕が、高校2年の時に進路を考えたことがあるかと記憶をたどれば、全くないと思います
僕は、この高校に入れたことで有頂天になり、勉強はそっちのけで、楽しいことをこの高校で片っ端からやってゆきました

おかげで成績は下がる一方、高校3年になると、0点やヒトケタの成績ばかりで、学年400人くらいいて、下から10番くらいでした
僕の親も、勉強しろという方でしたので、成績表を見せることができなくなり、最後は、
「成績表を見せないことが、今自分にできる精一杯の親孝行だ」
と思い、高校3年では、成績表を親に見せることはありませんでした

 

大学には行きました もちろんひとコケしました。一浪です。
予備校でも遊び癖が直らず、友人ばかりふえてしまい、地方出身の人が大阪のノリを気に入ってしまい、いつも僕は、予備校で馬鹿話をしていました

そのために、全く成績が上がらず、困り果てて9月になって予備校をさぼり、図書館の自習室に朝9時から夜の9時まで、3ヶ月間必死にやりました
けど、もともとやる気がないので、成績が上がるわけないんですね

最後は、大学の夜の部に入りました
けど、自分で満足できなかったので大学の授業をまじめに受け、よい成績をとれたので、一年後に昼の部にかわらせてもらい、普通通り4年で卒業できました

 

けど、昼の部にかわってからは、勉強なんてほとんどすることなく、限りなく遊びました
夏休みの半分は海で遊んで暮らし、本州の最南端最北端など、旅行に行きまくったり、バイトも、塾の教師家庭教師から火力発電所やパチンコ屋のバイトまで、いろいろやりました

大学時代に手がけたサークルは4つあり、4回生の時の学祭では、スポンサーから協賛金10万円を得て、客が全く通らないいちばん最悪と言われた場所で、日本の学祭はじまって以来のメニューで店を出し、学祭出店の中でも、いちばん最高の数を売りさばき、真っ先に黒字倒産させ(売る物がなくなった)、まわりの店はみんなは、あ然としていました

もちろん、大学は4年で卒業しましたが、留年寸前で、卒業論文も、何の研究もせず、いろんな本の丸写しで論文をまとめ、それに気がついた教授が、発狂しながら卒業のハンコを押してくれたということもあります

 


大学の学祭(4回の時)
はじけまくって、最後はもう遊ぶのにアホらしくなり、はやく就職したくて仕方がなかった

 

そんな僕が、進路を考えて勉強に力を今から入れとかないと、なんて言える資格はありません
そして、今ここで進路の話をしても、みんなにとっても、ちょっとはやすぎるのかもしれません
おそらく、今みんなが興味を持っているのは、クラブや恋や遊ぶことでしょう
それでいいんだと思います

一生懸命遊びまくってください
心の底から楽しいと思えることに、時間を忘れ夢中になってください
すてきな恋もしてください
恋が破れても、それは生きていく上で、大切な心の財産になります
自分の思いだけでは、恋愛は成り立たないことも学ぶでしょう
ただ、失恋しても自分を悪く変えないでください
うまくいく恋だけじゃ、もっと大切なものには気がつかないから
人を好きになる心は、いちばん大切で暖かな心のエネルギーなので、忘れないでください

そして、いろいろなクラブ活動にも力を入れてください
スポーツで体を鍛えることは、心を鍛えることにもなります
そして、どんなクラブでも、そこで少しでも社会性を身につけることができます
何をするにしても、社会に出て、また、いろんな人生の場面で自分にきっとプラスになります
そのほかにも、興味のあることがたくさんあるとは思いますが、どんどんチャレンジしてください

いろいろなことを経験し、壁にぶつかり、ひっくり返ってはくじけて、そして、いつかは立ち上がって、また歩き始める
生きてゆくことは、いつでも同じようなものです
高校にいるときも、社会に出てからも、いつでも、いくつになっても悩みはつきないものです
たくさん経験し、たくさん壁にぶつかって、たくさんひっくり返って、たくさん新しい自分を見つけてください
そのほうが、きっと素晴らしい人生になると思います

 

僕の考えで悪いんですが、学校は何のためにあるかというと、大学にゆくためでもなく、学歴を得るためでもなく、落ちこぼれや中退をつくるためでもないとおもいます
学校は人の可能性を引き出すところ、可能性を育てるところ、夢を与えて、希望を授けるところじゃないかと思っています

そして、間違った方向へ進んでゆくことのないようにするのが進路指導で、正しい方向へ進んでゆけるように、精神的なアドバイスをしてあげるのも、進路指導だと思います
大学や勉強だけでは、学校は成り立たないものだと思います

 

今の時代は、これからの日本の未来の姿に、夢も希望もないような表現に満ちあふれています
政治家は、まともな政治を見せてくれず、行政は腐敗し続けて、経済はバブルのせいでめちゃくちゃ
いまの社会は、病的な犯罪や気の滅入るニュースであふれかえっています

みんな、これからどう生きてゆけばいいのかさっぱりわからず、教育の現場でさえも、混乱してしまうこともあるようです
そんな、うんざりするような社会を見ていては、近い将来、社会人になる高校生や大学生、ひいては、義務教育の年齢の子供たちまでが、夢を持てず、社会に出ることにゆううつを覚えてしまいます

けれど、そんなひどいように思える時代でも、歴史をみれば、何度もこんな時代はあります
そして、歴史的な流れからいって、基本的なことがわかっていれば、今の時代は、そんなに悲惨な時代でも何でもないことがわかるとおもいます

基本は何だろうかと思いますか
基本は人間です  人です  自分です 
いずれ、肩書きだけや学歴だけでは、社会はわたってゆけなくなります
そして、資格だけでも生きてゆけなくなります
肩書きや学歴、資格に頼って生きていこうとしても、必ず将来的に破綻してしまいます

インターネットに代表される情報化社会、電子社会は、資本主義・社会主義の壁を取り払うばかりではなく、生活習慣や、世代、国籍、言語の壁、性別、社会環境、田舎や都会、すべての壁を取り払ってゆきます
最後に残るものは何でしょうか
やっぱり、人が最後にあります
これだけ世の中が混乱している時代に、時代は何を求めるのかといえば、人です
磨かれた個性を持つ人です

教えられたことだけしかできない人は、時代についてゆくことができません
教えられたことだけじゃなく、それを発展させた考え方を持つ人、突拍子もない考え方をできる人、人にはない光る個性を持つ人、どうも言葉で表すのは難しいですが、そういう生き方は、授業で教えてもらえるものではないでしょう
自分で模索してゆかないとだめなんでしょう
自分でどうすれば模索してゆけるのか
その話はつまり、自分の生き方という話に戻ってくるんです

結局は、進路なんて見えない今、大切なのは自分の生き方だと思います
生き方なんて、ほとんどの人が決めているわけはないでしょう
僕たち、大人と呼ばれる世代もそうです。
ただ、流されて生きている人も多いのです
高校時代は、自分は子供だと認識しながら、大人へ背伸びをしてゆく世代でしょうから、ほとんどの人は、自分の生き方をまだ決めて生きてはいないと思います

だから、とりあえずは自分の興味を感じることは、何でも一生懸命にやってください
本当に一生懸命になることは、自分にとって、とても大切なことです
一生懸命になれる自分、それを見つけてください
寝食を忘れて、倒れるほどがんばるのもいいと思います

ただ、一生懸命にやっていることだけが、すべてだとは思わないでください
もっとすごいこと、もっともっと素晴らしいことが世の中にはあふれていることに気がつかない人生では、もったいないでしょう
好奇心あふれる心を持ち、異性だけでなく、すべてものに愛情をもてる広い心を持ち、いろいろなことを吸収できる心を持ち、これからを歩いてゆけばいいと思います

 

最後になりましたが、すでに自分の進路を真剣に考えて歩いてゆける人はがんばってください
たった一人になってでも、がんばってゆける強烈な意志を持って歩いてください
くじけてもこけてもかまわないと思います
また立ち上がって歩いてゆける自分をつかんでください

そして、まだ自分の進路が見えない人は、何でもいいから一生懸命にやってみるといいと思います
そして、何かを一生懸命にやって壁にぶつかってください
たくさんの壁にぶつかってください
思い悩むことは誰だってあることです
遠慮なく、くじけて悩んでください
すべては自分の歴史に刻まれて、きっと将来に自分の道しるべとなることもあります

一生懸命になれる自分が見つからなくても、あせることはありません
ただ、自分を見つめ続けることは忘れないでください
生きてく方法なんて、星の数ほどあるんですから

「かぞえきれない ゆめをかかえて ドキドキしている」というフレーズの歌があります
そんな時代をいつまでも過ごしてほしいと思います

 

 

HP公開前の1998年6月28日 ゆうひがおかの総理大臣 アップ