10/26 CC大阪あわせで発行予定の 朝霧 紫月(windmill+:Comic)&綺阿(Gravity Free:Novel)のコンビでお届けする初の合同誌です!
常識でははかりしれない難事件を解決するため、刑事のキラが訪れたのは名門帝都大学。最年少で准教授の地位に就任した、ちょっと一風変わったガリレオ先生ことアスラン・ザラに不可解な事件を科学的に証明してもらうよう依頼したのだ。
そんなこんなで、仕事を共にするうちに、彼に抱いている想いは恋心に発展。しかし、いかんせん、彼は自分の研究以外にはてんで興味がない。
どうしても『好き』だとは言えないキラは、ある日、10月29日がアスランの誕生日だということを知る。
誕生日にかこつけて、何かプレゼントを贈ろう!そう決意したまではよかったがなかなかいいものを思いつかない。本人に聞いたところで、てんで的はずれな答えが返ってきただけだった。
結局、キラが選んだプレゼントはディナー。
でも、もし、彼が…わざわざ誕生日に食事に誘ったことに気付いてくれたら…。
当日の朝、キラはひとつの提案をアスランにもちかける。
『…賭けをしよう。今日が何の日か分かったら・・・
もうひとつ、おまけをあげるよ』
10月29日は何の日?
自分の誕生日だとうことを完全に失念しているアスランは、必死でその解答を探しはじめた。
注:現在、映画公開中ガリレオの設定をお借りしたWパロです。
ただし、本当に設定だけで、全然謎解きはありませんのでご注意を。
2007年の冬コミでGravity Freeが無料配布した『ガリレオ』と話的には続いておりますが、こちらだけでもまったく大丈夫です。
『覚醒モーメント』
10/26 CC大阪新刊
A5/FC/P60/\600/R-18
Comic
朝 霧 紫 月 (windmill+)
Novel
綺 阿 (Gravity Free)
【販 売】
1 イベント
10/26 Comic City大阪 (インテックス大阪)
windmill+ 4号館 G-13b
Gravity Free 4号館 G-15b
以降、両サークルが参加のイベントにて販売いたします。
イベント参加予定などの詳細は各サイトをごらんくださいませ。
2 書店委託
現在、申請中です。決まり次第、両サイトにてご報告させていただきます。
3 自家通販
両サイトにて、自家通販予定。
詳細は、各サイトのOff Lineもしくは日記をごらんくださいね!
>>朝霧 紫月(windmill+)
URL
Mail shiz★md.moo.jp
>>綺 阿 (Gravity Free)
URL
Mail shiny-g★est.hi-ho.ne.jp
※メールアドレスは、★を@に変えてください。
Comic>> SAMPLE
NOVEL>>
「……」
帝都大学理工学部、木造のレトロな赴きがある研究棟の一室。愛用の黒い琺瑯のマグカップには、なみなみとつがれたブラック・コーヒー。しかし…それに口をつけようとはせず、ひとりの青年が眉間に皺を寄せていた。
肩にかかった宵闇色の髪。銀縁メガネの奥にある怜悧な光を湛えた宝石のようなエメラルドの瞳が美しい。
彼の名は、アスラン・ザラ。この名門帝都大学で最年少にて准教授となった青年だ。
眉目秀麗、頭脳明晰。頭でっかちな研究者の多いこの業界では珍しく、スポーツ万能でもある彼はスカッシュやロック・クライミングもお手の物。まさに文武両道の名に相応しい存在だった。
そんな彼は物理学界では期待の星といわれる若き学者だ。
彼の書く論文は、非常に簡潔かつ独創的で斬新なものだ。本人も、論文の内容は勿論のこと、常にその表現方法の美しさに心を砕いている拘りよう。
そんな彼は、これまでの学説を覆すような論文をいくつも学会に発表していた。
それは、その昔、世界中の人々が正しいと信じていた『世界の中心は大地であり、その上にある天こそが動いている』とした『天動説』に異を唱え、『実際に動いているのは大地の方であり、世界は太陽を中心に廻っている』という『地動説』を提唱した十六世紀の天才科学者、ガリレオ・ガリレイのようだった。彼にちなみ、生徒たちはアスランを『ガリレオ先生』と呼んだ。
現在…その天才の脳裏を占めているのは…とても難解な事象の解明だった。
誰もが解けないと思われる事象を論理的に推察し、それを実験することによって裏づけを取って実証する。それが彼のやり方だ。しかし、今、彼を悩ませているのは…少し種類の異なるものだった。
「……」
さきほどから、神経質そうな指先がくるり、くるりと手にしたシャープペンシルを回している。その行動を繰り返す人の銀縁眼鏡の奥にあるエメラルドの瞳は…どこか遠くを見つめていた。
そこに映し出されているのは…ある人物の顔だった。
むすりと唇をへの字に曲げ、物言いたげなのに…絶対にそれを口にしようとしない。じっと上目遣いに見る瞳の色はアメジスト。その瞳は、夕暮れのような憂鬱を湛えていた。
「…キラ」
休む暇もなくパソコンのキーボードを叩いていたアスランは…モニターから視線を外すことなく言った。
「コーヒーが冷めるぞ」
その言葉に、キラは両手で包み込むように持っていた紫色の琺瑯のマグカップのコーヒーからすっかり湯気が消えてしまっていることに気付く。ドリップ式のそう高くもないコーヒーだが、此処を訪れるたびにアスランが淹れてくれるこのコーヒーの味をキラは気に入っていた。
「…君が意地悪を言うからじゃないか」
コトリという音をさせてキラはマグカップをテーブルに置く。
「別に俺は意地悪を言ったつもりはまったくない。自分の気持ちに正直に答えただけだ。捜査の協力をするつもりはない、と」
きっぱりと再び返された否の返事に、キラはさらに眉を吊り上げた。
キラがこの部屋を訪れてから既に三十分以上が経過している。
二週間前に起こったある事件。犯行現場に残された遺留品にはいくつか不審な点があったが容疑者のアリバイは完璧。
捜査にすっかり行き詰まってしまったキラは…智恵を貸してくれないか、と、このガリレオ先生に泣きついた。
最初はその謎に興味を示したアスランだったが…しばらくするとふと我に返ったのか『興味はあるが、事件の解明に協力するつもりはない』とあっさり態度をひるがえしてしまった。そのにべない返事にキラはさきほどからむっとしているのだった。
「意地悪だよ!って……あ…!」
アスランの言葉にばん、と実験室のテーブルを叩いたキラの手が傍らに置いていたマグカップにひっかかったらしい。
紫色の琺瑯のそれが倒れる。まだ随分と中身が残っていたコーヒーをキラは勢いよく机にぶちまけた。
「ご…ごめんっ…!」
キラは慌てて机の上に散乱している文献やレポートが浸水しないようにと退避させる。しかし、当のアスランはといえば、それをのんびりと眺めているだけだった。
「ごめんなさい!雑巾どこ?」
「キラ」
机の上に転がるマグカップを慌てて拾い上げるキラの手をアスランは掴む。
「…な…に…?」
手首を拘束されたキラは、うろたえたような瞳でアスランを見上げる。
ぽたぽたと…机の端から伝い落ちるコーヒーが床に雫を落とす音が沈黙に響く。
「…あのな…」
じっとキラの瞳を見つめる翠の瞳。
それは…悪魔の瞳の色だという御伽話をキラは思い出す。
確かに、アスランの瞳にはとんでもなく目力がある。それは、有無を言わせることなく時にキラを従わせてしまう。
「……」
アスランが何かを告げようと薄い唇を開いた瞬間。
ばん、という音と共に研究室の扉が開き、授業が終わった生徒たちがどやどやと入ってくる。
その音と気配にふたりはびくりと躯を震わせ、ぱっと離れると瞬間的にそっぽを向いた。
「あれ?キラさん!来てたんだ〜!」
生徒たちのうちのひとりがキラに歩み寄る。大学院の二回生に在籍しているシン・アスカ。短い黒髪にくるくると表情を変える紅の瞳。
短気なのが玉に瑕で実験でぽかをするところもあるが、なかなかに独創的なセンスの持ち主で、アスランが目をかけている生徒のひとりだった。
そんな彼は、何故だかこの研究室に事件のたびに出入りしていたキラとウマが合うのかとても仲がよい。最近は、個人的にCDやDVDの貸し借りまでしているようだった。
「う…うん。こんにちは、シンくん」
慌てて雑巾で机を拭くキラにシンは眉を顰める。
「…キラさん、何やってんの?」
「いやぁ。ちょっと…」
「どんくさいなぁ。コーヒー零したの?」
「…煩いよ」
机をごしごしやっているキラの手からシンは雑巾を奪う。
「…あっ!」
「アーサーさん、モップもってきてよ!」
「え?」
「モップだよ、モップ!あるでしょう!」
ぽややん、としているアーサーに、シンはびしっと言った。
「あぁ・・・はぃ!」
万年ザラゼミ研究助手のアーサー・トラインにそう命じる。シンよりも随分年上のアーサーだが、生来のおっとりしたところが彼を実年齢よりも随分若く見せている。
シンの方が十歳ばかり年下なのだが、何時の間にか立場はすっかり逆転していた。(要は、アーサーはシンに顎で使われている)
キラの手から雑巾をひったくったシンは、しっし、と彼をテーブルから追いやる。
「ほら、貸して。ネクタイにコーヒーつくよ?」
見れば、キラがしめているネクタイが机の上に出来ているコーヒーの海の上、すれすれで揺れている。
「あっ!」
慌てて仰け反るキラを見てシンはくすりと笑う。
「キラさんってば、時々すごいドジだよなー」
「…煩いよ。シンくん」
五つほど年下のシンに子供扱いされ、キラはむっとしたようだった。
「後でコーヒー淹れてあげるから、おとなしく座ってなよ」
「…分かったよ」
ふう、とひとつ溜息をついて傍らのパイプ椅子に座ったキラは…一瞬だけちらりとアスランを振り返る。
「……キ……」
その、もの言いたげな視線に口をひらきかけたアスランの腕がすごい力でひっぱられる。
「ザラ准教授!この前のレポート、ちょっと手直ししたんです!見てください!」
ゼミ生のひとり、ルナマリアがアスランの左腕に抱きついていた。
「…ルナマリア」
彼女のCカップの胸がアスランの腕にばっちりと当っている。ショートカットの髪に、膝までのハーフパンツとロングブーツを組み合わせたボーイッシュなスタイルのルナマリアは男子も顔負けの快活な少女だ。
同い年のシンも彼女にはまるで弟のようにあしらわれている。
勘がよく、ちょっとヒントを与えれば自分なりにいろいろと考え、時にアスランが思いもつかなかったレポートを書いてくることもある。
確かに、彼女には目をかけているがそれはあくまでも生徒としてであって、女性としてではない。思わず焦って教え子から自分の手を奪い返そうとするが…今度はその反対側の腕を誰かががしっと掴む。
「あ、おねーちゃん、ずるーい!准教授、あたしの実験レポートも見てください!」
それは…ルナマリアとおそろいのストロベリー・ブロンドをツインテールに結った彼女の妹、メイリン・ホークだった。
姉とは対照的なウェーヴのかかった長い髪に、スカート主体の格好。メイリンは女の子らしいフェミニンなスタイルを旨としていた。
「あたしが先よ!おねーちゃんに譲りなさいっ!」
「あらぁ、年齢は関係ないわ!ここはやっぱり熱意よ!」
左にルナマリア、右にメイリン。ほとんど両手に花状態だがアスラン本人にとってはまったく嬉しい事態ではなかった。
「…メイリン。ルナマリア…」
その時…誰かの携帯の着信音が鳴り響く。
流行のメロディではない、無機質なデジタル音。
「わ…わわ!ごめん!僕だ!」
キラがスーツの内ポケットを探る。
「あ、はい。もしもし!キラ・ヤマトです」
慌てて通話ボタンを押したキラは、電話の相手が誰だか分かった瞬間、マッハの速度で携帯電話をばっと耳から遠ざける。
「キーラー!!!おまえ、何処で油うってんだぁ!?とっとと署に戻ってこないか!あぁん?」
腕一杯伸ばして耳から遠ざけたキラの携帯電話から飛び出した叫び声に誰もがぎょっとした。
「…ご…ごめんなさい。すぐ戻ります」
声の主は桜坂南警察署の先輩刑事、ムウ・ラ・フラガだ。
いつも陽気な気のいい先輩なのだが…難事件に遭遇すると、時々、どかーんと雷を落とされる。そういえば、先日から難航している捜査が本格的に行き詰ってきたようだった。
「あ…僕、そろそろ帰るね」
ひとつ溜息をついて、キラは携帯電話をぱくん、と閉じると、お邪魔さまでした、とぺこりと礼をする。
「えー。キラさん帰っちゃうの?シェ・コパンのケーキ買ってきたのに」
「え、ほんと?」
キラの瞳が一瞬きらりと輝く。そう、彼は甘いものが大好きなのだ。
ルナマリアやメイリンたちとお気に入りのお店の話で盛り上がることもしばしばで。彼らは新しいお店や新商品の噂を聞きつけるとすぐに味見と称してスウィーツを買ってきては研究室の机をケーキ・バイキングの会場と変えてしまうのだった。言葉どおり、ルナマリアの手には白い紙箱がある。
「でも…残念だけど、また今度」
そう言って、キラはひらひらと手を振って研究室を出て行った。
ルナマリアがちらりと紙箱に視線を落とす。
「ケーキ…余っちゃった。…そうだ、ザラ准教授、召し上がりません?」
満面の笑みに躊躇いながらもアスランはその申し出を断った。
「いや…俺はいいよ」
社交辞令ではなく本心だ。キラとは違い、アスランは甘いものが非常に苦手だったのだ。
...To be Continuedv
*Web用に改行しています。