2002年年頭ご挨拶

あけましておめでとうございます。

いよいよ2002年の幕開けです。

昨年1年間を振り返りますと、様々なできごと、様々な関心の中をさまよい歩いた1年でありました。

仕事の関係では、8月に恵比寿の職場に異動になり、IT関係の調査プロジェクトに携わることになりました。

IT関係の書籍をそれこそ手当たり次第読みまくった感じですが、ITを切り口にしてみると、世の中の様々なことがらに関係していくなあという感想を抱いております。

中でももっとも印象的だった本を挙げろといわれますれば、いわゆるオープン・ソースの教科書ともいえる「伽藍と聖堂」の参考文献に挙げられておりましたアルフィー・コーンの「報酬主義を超えて」「競争社会を超えて」の2冊が該当致します。どちらかというと前者の方がより印象的でした。内容的には心理学の書籍であり、馬をにんじんで釣るようにして報酬を与える条件で作業をさせると作業そのものの本質的な面白さが失われ、報酬によらなかった場合にくらべてクリエイティブな仕事が生まれにくいことを指摘しております。いわば常識の嘘のような話であります。世の中にはストック・オプションであるとか、歩合性であるとか、報酬を目的として人々のインセンティブを高めようとする手段が多数ありますが、実はそれは無効であり、あるいは有害であるという主張につながります。これはある意味とても衝撃的な結論であります。東京海上の研究所でボランタリー・エコノミーに関する研究がなされていること、イギリスで第三の道が模索されていることとも関連し、これからの日本の目指すべき社会についての重要なヒントになるのではないかと考えております。

また、9月11日事件は文字どおり世界をゆるがせましたが、私にとっては、イスラムに目を向けさせる事件でありました。これまで全く考えたことも無いイスラムとの共生について、様々考えさせられた結論は、人は色も匂いもあるのであって、容易には異文化に適合できない、ということでした。特に日本人は異文化経験が少ないことから、外国人を労働者として受け入れればよいではないかとナイーブに考えがちでありますが、実は思想信条を持った異なる文化を持つ人々を分け隔てなく受け入れることは大変な努力が必要なことであります。なおかつ、受け入れる側が寛容であったとしても、受け入れられる側がどの程度寛容かという点も難しい課題であります。頭の中で考える抽象的な労働力ではなく、現実に存在するヒトとしてイメージしてみると、共通の文化的背景を持った人々が集住する国民国家は「一理ある」存在として見えてきます。安易に「国際化」を叫ぶことはできない・・・と感じはじめたところです。

生活面ではようやくADSLが開通し、常時接続族の一員となりました。おそらくこの一年で100万回線近くがADSL接続したことでしょう。写メールが1年で240万だそうですから、情報化の進展は恐るべきスピードで進んでいるのかもしれません。

1月1日の新聞では、小泉内閣がオープン・ソース方式で国民を政策議論に引き込む形での政策形成を進めていくという構想が発表されました。国民の政治への関心を高めなければならないという問題意識、情報公開を進めオープンな政策形成を進めなければならないという問題意識の上では、多いに頑張って欲しい構想と言えますが、一方、インターネット・ガバナンスに関するような仕組みとは条件が異なる点が多く、本当にうまく行くだろうか、との疑念を抱かざるをえません。現時点では、お手並み拝見というところですが、この試みが仮に失敗したとしても、オープン・ソース方式の政策形成が失敗だったとくれぐれも短略的に考えないで欲しいな、という思いでおります。インターネット・ガバナンスに関しては、進歩することが皆にとってプラスに成るのに対して、政策形成においては、プラスになる人とマイナスになる人が必ず存在し、痛みを受ける人々が総合的にはプラスになるような形の決着が可能であろうか、という点が非常に心配です。ともあれ、この試みが各政党を活性化させ、本当の意味での民主主義が日本に根づくことを期待しております。

最後に、今年1年皆様のご健勝をお祈り致しております。

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