GODZILLA (Durham Bulls) vs DICE-K (Pawtucket Redsox)



 2012年5月17日 現地ノースカロライナ州ダーラムのダーラム・ブルズ・アスレチック・パークで、トリプルA、インターナショナル・リーグの公式戦、ポータケット・レッドソックス対ダーラム・ブルズの試合が行われた。
ポータケットの先発は松坂大輔、ダーラムの4番バッターは松井秀喜。日本では誰もが知ってる両スーパースターだが、アメリカの野球ファンの間でも、両者共にとても有名な選手だ。
松井と松坂の対戦は、ヤンキース対レッドソックスでも十数度あるし、松井のエンジェルズ時代にもある。今後も両者がメジャーに昇格した際は、同リーグ同地区と言う事で、そうなる可能性は低くはないだろう。
しかし、マイナーリーグでの対戦となると、かなりレアなケース。これが最初で最後かもしれない。しかも、両者が所属するのが単なるマイナーチームと言うだけではなく、伝統と人気を兼ね備えたマイナーリーグの見本のようなチーム同士なのだから、マイナーリーグファンの私としては書かずにはいられない。

 ダーラム・ブルズが日本でも知られる名前になったのは、ケビン・コスナー、ティム・ロビンス、スーザン・サランドンが主演した映画 "Bull Durham"(1988年公開、邦題:さよならゲーム)の舞台になった事だろう。ケビン・コスナーの野球選手として全く違和感の無い動きを見て「ホントに上手いんだなぁ」と感心したのも憶えているが、それとは別に、映画の中で描かれるダーラム球団の様子は、とても新鮮で「こんなプロ野球の世界観があったのか!」と私に思わせた。
と言うのも、当時の日本の野球ファンから見たアメリカの野球と言えば、ほぼ“大リーグ”を指すものであって、マイナーリーグと言ったら、日本のプロ野球に入ってくる助っ人外人の前所属が、「3A」だの「2A」だったりの認識でしかなく、実際のチーム名もどんな環境でどんな試合が行われているのかも全く分からないのが実情だった。まあ、野茂がメジャー挑戦するより数年も昔の事だし、インターネットが登場するのもまだ先の話なので、当然と言えば当然なのだが。

 日本で「プロの下部組織」を指す場合「西武の2軍」「ヤクルトの2軍」と言うようなのでしかないものが、マイナーリーグでは「ダーラム(都市名)・ブルズ(母体とは違うニックネーム)」と表記もユニホームも独自の存在である事や、大リーグよりは小規模であるものの、ちゃんとした観覧設備の整ったスタジアムで行われる試合に、そのチームを応援する為に訪れる地元ファン。上に上がろうとする選手らの直向さもありながら、そこの場所には勝敗だけではなく、随所に大らかさが感じられる。今まで見てきた野球とは違った感覚に驚かされ心を奪われた。

 実際のダーラム・ブルズは100年以上も前に設立された歴史のあるチームで、幾つかのメジャー傘下を転々として、現在はタンパベイ・レイズのAAA球団として活動している。 

 20年以上前の話になるが、友人の友人がダーラム近郊に留学していた為、頼み込んでダーラム・ブルズのTシャツを買って来てもらった。100人中100人が「なんのTシャツ?」「シカゴ・ブルズの偽物だろ」それ以前に全く興味無しってのが普通だったが、極極々々たまに、何年かに一度(つーか、通算でも1度だと思う)に「これって“さよならゲーム“の?よく手に入ったね」って言われた時は嬉しかったなぁ…



 一方、ポータケット・レッドソックスは、ロードアイランド州ポータケットにあるボストン・レッドソックス傘下のAAAチームで、名前の通り創設の1970年代からレッドソックスの下部組織にあるが、地元では「ポーソックス“Pawsox”」と呼ばれ独自の人気も大きい。野球史上最長の試合や大家友和(前横浜ベイスターズ)の完全試合など、本拠地マッコイスタジアムも様々な歴史を作ってきた。
私が観戦した2001年も、長閑な田舎町なのに球場にはとても活気があった。



 両チームの華やかな歴史は、ここでは紹介しきれないが、とにかく全米にある200以上(独立リーグ含む)のマイナー球団の中でも、歴史、知名度、存在感、格好良さ…あらゆる面でマイナーリーグの代表格と言っても良い両チームだと思う。

 そんなチームでの、今回の松井、松坂の対戦は、とても感慨深いもので、出来る事なら現地まで飛んでいって観戦したいくらいだった。
「マイナーだから…」「レベルが下だから…」と思わないで、野球本来の大らかさが分かるファンなら、歴史的な対戦にぜひ注目して欲しいところだ。
 自分なんて、レイズの松井のレプリカよりも、ダーラムの55番のレプリカの方が遥かに欲しい気持ちだ。
2001年に、新庄剛志がブルックリン・サイクロンズで調整の為に出場した時も同じように思ったが、今回は両チームで二人揃ってと言う事なので尚一層の想いだ。



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