思いを馳せる

 それは海辺に行ったときのことでした.ツートーンカラーのテニスボールを投げて「持っておいで」をしていました.いつもは上手にできるのですが,その日はもひとつでした.投げたボールを追いかけ口にくわえる所まではOKでした.私の近くまで戻ってきたときにボールを口から離しました.「もう少し手前まで持っておいで」という意味で「ボール(我が家ではこのように声をかけています)」と声をかけた時のことです.チョコは一生懸命探すのですが,なかなか見つけられませんでした.目の前にあるのに「見えない」ようです.「クンクン」とにおいを嗅いで探し当てました.もう一度試してみましたが,近くで落としたボールは見つけにくいようです.

 どうしたのかなと思いましたが,すぐに閃きました.その海岸には,直径10cmくらいのまるい石がごろごろころがっていました.そうです,「犬の視覚はカラーでなく白黒」ということを思い出しました.チョコの目にはカラーボールも石も同じように見えたのでしょう.人間には簡単に見分けられるボールと石とが,犬には大変区別しにくいということを実感しました.
 人と犬とが同じように暮らしていても,見ている世界がこんなにも違うということに認識を新たにしました.いわんや「犬の感覚を人間の言葉に置き換えることの難しさ」に思いを馳せました.