「地域でふつうに暮らせる」ことを目標に
育ててきました
 
土山 由巳 さん


自閉症のある息子さんをもつ親

優しい気持ち風にのって飛んでいけ悲しい人や淋しい人の心にそっと届くよう風にのって飛んでいけ
裕真くんの書道作品。訓練会で指導する習字の先生が、一人ひとりオリジナルの手本を用意して創作します。独創的な筆運びに先生は驚きの連続だそうです。
 息子の裕真は障害独特の行動で、まわりにいつも自己アピールをしてきたと思います。それと同時に私もまわりに伝えてきました。マンションの2階に住んでいるので、小さい頃は跳びはねては階下の方に迷惑をかけていました。跳びはねることが止むと「最近は(音が)しないけど、変わったことがあるの」と階下の方が気づかってくれました。近所の方を見かけると「気をつけ、礼、おはようございます」と一方的に挨拶して去っていきます。鉄道マニアの息子につきあう父親が、混雑したホームではぐれてしまい、そのとき息子は「お父さんが迷子です」と駅長室に訴えました。
 家族支援の福祉が充実してきたからでしょうか、以前に比べて自閉症のお子さんをあずかる場が増えましたが、本人が混乱なく楽しめる場であってほしいと思います。世の中の関心も高まっている印象を受けますが、自閉症と地域とのつながりは永遠の課題という気がします。「冷たい関心」より「あたたかな無関心」(積極的なかかわりではなく、理解と見守り)が広まることで、本人の自立が促されると思います。