張りのある美しい漆黒の馬体、気性の荒さを表面に出し、彼は父と同じ勝負服、 鞍上は父に騎乗した主戦・杉浦騎手以外の唯一の騎手、岡部幸雄を迎えていた。 そこに、父の面影をだぶらせる事ができた。 唯一違うのは、鼻面につけた青いシャドーロールだけ。 500キロに近かった父と同じく、馬体重は470キロ代。それでも雄大に見せる馬体。 パドックを周回するその姿に釘付けになる。 本馬場入場、そしてゲートイン。 ゲートが開いた。スタートはまずまず。どの辺につけるのか、父と同じ、差し、 あるいは先行差しか? と、岡部騎手の手が動き、先頭へ。 あっさり先頭を奪うと、あとは気分良く逃げるだけ。道中折り合いもついて、 軽快に走る。そして他馬に先頭を一度も奪われる事無く、4コーナーから直線。 どんな形で決着が付くのか、そういう考えをよそに、ほとんど手綱を動かすこと なく、後続を突き離し始める。 その伸びは止まる事無く、ゴール板を通過した時には後続に10馬身もの大差を つけていた。快勝。仕上がり途上との声をあざ笑うかのような出来事だった。 |
1998年5月10日 東京 第8R4歳500万条件1400mダート |
スタートしてから、前に一頭置いての競馬。押さえきれない手応えで4コーナー 回って先頭へ。すっと抜け出すも、後方から一気に詰め寄られる。 ゴール前、交わされ、2分の1馬身差の2着。敗戦も、収穫の多い一戦だった。 1400では短い、という印象を持たせるものだった。 |
1998年5月24日 東京 第6R4歳500万条件1600m芝 |
スタート後ハナへ。レオリュウホウとハナを争う形になる。 初の芝に戸惑いを見せるかと思われたが、それもなく、いい状態で最終コーナー へ向かう。軽快な足取りも、直線交わされ、沈む。初の芝を思えば及第点といっ たところか。父の血統からも、距離伸びて不安はないはずで、終いの粘りが課題 と思われた。 岡部騎手から「芝よりダート?」というようなコメントも。ただ、藤沢師は、芝 問題なしと見ているようだが。 |
パドックではいつものように焦れ込む。石川厩務員が必死になって押さえる。 そんな折に、ガレアスの後方で、3階のパドックスタンド席(福島のパドックは 2階)から、ふわりとビニール袋が舞い降りる。 それが目の前に落ちた馬は、驚き暴れた。観客としては、最低限注意したい事象 だと、痛感する出来事だった。 「あれがガレアスの前だったら大変だったなぁ」後方から声が聞こえた。確かに あれだけ焦れ込んでいるガレアスの前に落ちたら、と思うと背筋が寒くなった。 「これで勝ったら900万は素通りだろう」そんな声も聞こえてきた。 騎乗命令で、岡部騎手が跨る。焦れ込むガレアスをなだめるでもなく、いつもの 事、と言わんばかりの落ち着きぶり。 そして本馬場入場。岡部騎手は観客席側を周る他馬とは逆の方向へ走らせ、歓声 を避けた。 そしてスタート。 いつも通りの軽快な逃げ。道中他馬に絡まれるも、4コーナーまで脚色は衰えず、 絡んできた方が、後退気味。 4コーナーから一気に後方との差を広げにかかる。直線の短い福島でのセーフテ ィーリードを確保しようという考えか。他も遅れないようにと、追いすがる。 が、相手はガレアスただ一頭と言わんばかりに、柴田未崎騎乗のステージマック スが追いすがる。 直線は両馬の叩き合い。が、結局一度も前に行かせる事無く、ガレアスは4分の 3馬身差でステージマックスを退ける。2頭で後続を2秒も突き放すという完全 なマッチレースだった。ファンでなくても見応えのある一戦だったと言えよう。 が、ガレアスはレース中に骨折していたことが判明。 幸い軽度なものだったが、放牧へ。 |
1998年11月8日東京 第8R4歳900万条件1600mダート |
再びターフに戻ってきたガレアス。いつものように焦れ込む姿があるが、どうも 精彩に欠ける。10sの馬体増。成長分か? そんな心配をよそにスタート。 いつものように先手を取るというレースではないようだ。ガレアスのスピードで は、ついて行けないという事はない。岡部騎手なりの優等生への教育か? と、 考えるうちに直線へ。先団へとりつき鞭を1、2度入れるも伸びはない。 馬群へ沈む。13着。どうかしたのか、そんな不安がよぎった。 |
1999年8月7日札幌 第7R4歳上500万条件1700mダート ![]() |
ガレアスの復帰第1戦。 今回は、今までとは違う黒いシャドーロールでの登場となった。 パドックではいつも通りの焦込み。そのせいか発汗もあり、馬体は輝やいて見え る。 休み明けとは言え、増減は無し。仕上がりはそれなりに良く見えた。が、一時期 のような充実ぶりと比べると少々物足りない印象を受ける。 レース。 少々アオり気味のスタート。そのままヨレて、他馬より1馬身ほど遅れる。 岡部騎手は遅れを取り戻すように手綱をしごき、すぐさま2番手につけた。 逃げてこそ持ち味が生きるガレアスにとって、この位置取りはどうか。と、不案 になるところだ。 大きな変化もなく4コーナーから直線へ。粘り込みを図りたい所だが・・・・・ 直線バテて前々につけていた2頭に交わされたものの、その他の後続の追撃を 辛くも押さえて、4着入線。逃げていた馬が残って勝ったという点を考えると、 ガレアスの速いペースで、単騎で逃げることができたなら、結果は違っていたかも しれない。 かえすがえすもスタートで後手を踏んでしまった事が悔まれる。 ただ、休み明け初戦という事を考えれば、悲観したものでもないのかもしれない。 次走に期待、と思える内容だった。 |